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佐々木蔵之介「“今”と通じる作品に」、暴君の孤独と覚悟描く「君子無朋」開幕

ナタリー

左から中村蒼、佐々木蔵之介。

佐々木蔵之介が主宰するTeam 申の本公演「君子無朋(くんしにともなし)~中国史上最も孤独な『暴君』雍正帝~」が、本日7月17日に東京・東京芸術劇場 シアターウエストで開幕。これに先駆け、昨日16日にフォトコールと取材会が行われた。

劇団桟敷童子の東憲司が演出、阿部修英が作劇を手がける「君子無朋~中国史上最も孤独な『暴君』雍正帝~」は、Team 申にとって約11年ぶりとなる本公演。本作では、清の第5代皇帝で、玉座に座ることなく執務室で毎日20時間働き、最期は過労死との仮説が有力視される雍正帝にスポットライトを当てた物語が描かれる。出演者には、佐々木に加え、中村蒼、奥田達士、石原由宇、河内大和が名を連ねている。

フォトコールでは、中村演じる地方官・オルクと、佐々木演じる雍正帝の出会いを描く冒頭部分が公開された。佐々木は泰然とした佇まいや、オルクを冷酷に問い詰める姿で、雍正帝を気位が高く底知れない人物として立ち上げる。また、喀血した雍正帝を気遣うオルクを、鋭い眼光で威圧する場面では、その眼差しで会場全体を凍りつかせ、“皇帝”らしさを強調した。

中村は、意志の強さや誠実さがにじむ演技で、正義感に燃える若者・オルクを体現。また、雍正帝の罵詈雑言に圧倒され、戸惑うシーンでは、観客からの感情移入を誘う。奥田、石原、河内の3人は“影”として、物語の狂言回しの役割を担った。ときに軽妙なセリフ回しで客席を笑いで包みつつ、ときに得体のしれない怪しげな存在感で、シーンの緊張を高めた。

取材会には、佐々木、中村、東、阿部が出席。佐々木は、この作品の発端が、昨年放送されたNHKのドキュメンタリー番組であることに触れ、「雍正帝は、番組で特集された3人の皇帝のうちの1人。僕は番組のプロデューサーだった阿部さんと一緒に、中国へロケに行ったのですが、雍正帝はなんともユニークな独裁政治をしていて。その生き様を作品にできたら面白いなと思ったのですが、そう簡単に企画は通らず(笑)。結局Team 申として、自分でプロデュース公演を行うことにしました」と上演の経緯を語った。

また、雍正帝の魅力について「“たった1人の皇帝がすべてを決める”という独裁政治の中、この雍正帝は、中国の末端の役人たちと毎日手紙のやりとりを続けていた。1日20時間働いて、その結果、13年で過労死するのですが……彼が行っていたのは、ただの独裁じゃないんですね。(ドキュメンタリー番組の取材の中で)『この人すごいことやっているぞ』と思ったのが、この作品を作るきっかけでした」と熱く述べた。

阿部にとって、本作は初めて書いた戯曲となる。阿部は「中国ロケの最後に佐々木さんからオファーをいただいたとき、腰が抜けるぐらい驚いたのを覚えています(笑)」と振り返り、「中国の皇帝だと有名なのが始皇帝とラストエンペラーの溥儀ですが、過去の皇帝の中でも一番エキセントリックで、一番面白くて、一番パワハラをする人で、一番ワーカホリックな皇帝が、おそらく雍正帝なんじゃないかと。その姿を史実に基づいて書いたので、ぜひ観ていただきたい」と言葉に自信をにじませた。

東は、本作について「雍正帝という人物は、独裁者でもあり、本当にひどい男なんですけど、とても魅力的。コロナ禍で、リーダー論が問われている現代の日本にマッチした物語になっていると思います」とコメント。司会から作品の見どころを問われると、「阿部さんの本ってとにかく場面転換が多いんですけど、キャストが少数精鋭なので、人手不足が発生しまして(笑)。そこをうまいこと、音楽や照明、キャストの力を借りながら見せていくので、(工夫した部分を)お客様にも楽しんでいただきたい」とアピールした。

中村は、初日を控えた今の気持ちを「お客様の反応をじかに感じながら、お芝居ができるということにワクワクしています」と瞳を輝かせながら話す。さらに「物語がほぼ史実通りであることに、稽古をしながら毎日驚かされていました。僕が演じるオルクは、そんな雍正帝に真正面からぶつかっていくわけですが……僕も、蔵之介さんの魅力に毎日魅せられていました」と明かすと、隣の佐々木は照れ笑いを浮かべた。

オルク役としての意気込みを聞かれた中村は「ただただ東さんの演出にしがみついて、キャストの皆様に置いていかれないように、夢中で稽古をしてきました。その夢中で必死にもがいている姿が、結果的にオルクの真っ直ぐさにつながればいいなと思います」と述べ、「お客様にはぜひ、オルクと同じ目線で、雍正帝の謎や魅力に迫り、歴史の目撃者になってもらえたら」と来場者に呼びかけた。

最後に佐々木は「雍正帝は、“君子朋無”を掲げていました。兄弟も、父も母もいない。自分は1人だと言っているんですね。その姿勢で、彼は一国の未来を切り開いていくのですが、その覚悟と孤独をぜひご覧いただきたい」と言葉に力を込めつつ、「また本作は、彼の覚悟に着いてきた地方官、つまり現場の人達の物語でもあり、“今”と通じる作品になっています。愉快なお芝居にしますので、お楽しみください」とほほ笑み、会見を締めくくった。

東京公演は7月25日まで。そのあと公演は、28日に宮城・電力ホール、31日・8月1日に石川・北國新聞赤羽ホール、8月3日に広島・JMSアステールプラザ 大ホール、7・8日に福岡・柳川市民文化会館 水都やながわ 白秋ホール、11日に長野・長野市芸術館 メインホール、14・15日に新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場、17日から29日まで京都・京都府立文化芸術会館で実施される。

Team 申 第5回本公演「君子無朋(くんしにともなし)~中国史上最も孤独な『暴君』雍正帝~」

2021年7月17日(土)~25日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターウエスト

2021年7月28日(水)
宮城県 電力ホール

2021年7月31日(土)・8月1日(日)
石川県 北國新聞赤羽ホール

2021年8月3日(火)
広島県 JMSアステールプラザ 大ホール

2021年8月7日(土)・8 日(日・祝)
福岡県 柳川市民文化会館 水都やながわ 白秋ホール

2021年8月11日(水)
長野県 長野市芸術館 メインホール

2021年8月14日(土)・15日(日)
新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場

2021年8月17日(火)~29日(金)
京都府 京都府立文化芸術会館

作:阿部修英
演出:東憲司

キャスト

雍正帝:佐々木蔵之介
オルク:中村蒼
影 / 康熙帝 / 老官僚全 / 第8皇子インシー:奥田達士
影 / 厨師劉 / 第9皇子インタン / 官僚関 / 家令:河内大和
影 / 春琴 / 第13皇子インショウ / 第14皇子インタイ / 武官楊:石原由宇

※初出時より、本文を変更しました。

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