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神前 暁が斎藤滋&山内真治と振り返る、『ハルヒ』『らき☆すた』『〈物語〉シリーズ』の音楽

リアルサウンド

19/12/6(金) 12:00

 『涼宮ハルヒの憂鬱』や『らき☆すた』、『〈物語〉シリーズ』、『かんなぎ』などの楽曲を制作し、アニメ・ゲーム業界だけではなく、J-POPシーンにも影響を与えてきた音楽家・神前 暁が、2020年3月18日に作曲家デビュー20周年を記念した作品集『神前 暁 20th Anniversary Selected Works “DAWN”』をリリースする。

 20年の間に生み出されてきた珠玉のアニメソング・劇伴・ ゲームソング・提供楽曲の中から、 神前自らがセレクションを行った楽曲たちを収録した同作のリリースを記念し、リアルサウンドでは全3回に渡る神前 暁への取材記事を掲載。第1回目は神前に加え、株式会社ランティス(現在は株式会社バンダイナムコアーツに社名変更)の音楽プロデューサーとして、『ハルヒ』『らき☆すた』などを手がけてきた斎藤滋氏と、『〈物語〉シリーズ』などで音楽プロデュースを務める株式会社アニプレックスの山内真治氏を交えた鼎談形式で、神前のキャリアを振り返ってもらった。(編集部)

プロ音楽作家・神前を作り上げた『ハルヒ』『らき☆すた』制作秘話

ーーまずは斎藤さんと神前さんの出会いから振り返りましょうか。斎藤さんがアニメの音楽プロデューサーとして、神前さんがTVアニメ劇伴担当として、それぞれ初めの一歩を踏み出したのがアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』(以下、ハルヒ)でした。

斎藤:2005年後半に、当時の京都アニメーションさんの東京オフィスでお会いした記憶があります。当時のランティス社長(井上俊次氏)・副社長(伊藤善之氏)や、KADOKAWAの伊藤(敦)さんに紹介されました。僕が関わり始めた時点ですでに『ハルヒ』は進行していて。「God knows…」と「恋のミクル伝説」はもう出来上がっていたと思います。

神前:挿入歌は早めに作っていましたから。

斎藤:初めて会った時の神前さんは、ゲーム音楽出身の方だなという印象が強くて。僕もサイトロン(・デジタルコンテンツ株式会社)というゲーム会社出身なんですけど、ゲーム音楽って基本的にループするように作られていて。神前さんはTVアニメ劇伴が初めてだったこともあり、最初の劇伴デモはループする形で上がってきたんですけど、一緒に作品を担当していた副社長が「ループしているじゃないか、これじゃダメだよ!」と注意していて、「そうなんだ……」と思いながら見ていた記憶があります。

神前:「アニメの劇伴はイントロの掴みと終わり方が大事」とよく言われていました。

ーー同じ畑だった人が、同じアニメで同時に世に出た作品でもあったと。ともに制作するなかで、お互いの印象が変わった瞬間は?

斎藤:『ハルヒ』1期~『らき☆すた』と続けてお仕事をしていたのですが、『ハルヒ』2期で久しぶりにお会いしたんですよ。その時には、楽曲も洗練されていて“売れっ子”の道を歩み始めているなと感じました。そういえば、2期のときも無茶振りが多かったですよね。「エンドレスエイト」とか……。

神前:ああー!(笑)

斎藤:同じ時間を繰り返すことで意識が変になっていく描写のなかで、ノイジーな劇伴をいっぱいオーダーして。

神前:CDの音飛びみたいな音も入れてましたよね。

斎藤:テレビで流したらクレームがくるくらいのものでした(笑)。

ーー『らき☆すた』に関してはどうでしょう?

斎藤:今では考えられないくらいの仕事量をお願いしていましたね。

神前:劇伴が80曲で、歌ものが20曲くらいでした。

斎藤:当時は「神前暁が全部作るのが面白いんだ!」となっていたし、それも一つのネタという部分があって、演歌やファンク、戦隊モノ的な楽曲もお願いしていたのですが、ことごとく打ち返してくださって。その引き出しの多さに驚きつつ、「何を頼んでもやってくれる人」という認識になって甘えたところもありました(笑)。

神前:スタイルを模倣して作るということは得意だったので、『らき☆すた』ではそのスキルが活きました。とはいえ、制作のスピード感含め、プロの洗礼を浴びて、一皮剥けて大人になった作品でしたね。

斎藤:「もってけ!セーラーふく」に関しては、監督からのオーダーに副社長が燃え上がって「これをやろう、あれをやろう、歌詞もこういうテンションがいいだろう」と盛り上がった結果の曲ですね。いろんなところで僕があの曲の中心人物みたいに書かれていますが、当時はまだ新米プロデューサーだったので、あくまで色んな人を頑張ってまとめる人でしかありませんでした。

神前:Bメロの〈BON-BON おーえん団~〉というところで、最初は裏のシンセだったラインを、副社長が「ここを歌メロにしよう」と提案してくださって。「そういうことまでするんだ」と思ったのをはっきり覚えています。

 神前&斎藤&山内の“意外な繋がり”

ーー山内さんは当時、これらの斎藤さん・神前さんによるお仕事をどう見ていましたか?

山内:当時はソニーのレーベルでアニメタイアップものをやっていたので、深夜アニメからオリコンの上位にガンガン曲が入っていく現象を、いち視聴者として「すげーな!」と思いつつ、一抹の苦々しさをもって見ていました(笑)。

斎藤:良いものを作っている自覚はありましたが、受ける受けないは世の流れですから。ただ、当時のランティス社内では「アニソンはいつ売れるかわからないから、いつ売れてもいいように必ず良いものを作りなさい」と言われていたので、それを守り続けてよかった、と思いました。それに、もともと自分は音楽家ではないので、音楽プロデューサーと言いながら、音楽を作るクリエイターが存分に力を発揮できるようにするために動く、“環境づくり屋さん”なんですよ。

ーー収録曲で紐解いていくと、ここからアニプレックスの案件が多くなってきます。斎藤さんと山内さんは元々親交があったんですか?

斎藤:現場でお会いすることはありましたが、2010年に恵比寿の料理屋さんで初めてしっかりお話しました。たしか、社長と僕と、山内さんと……。

山内:当時の上司で、のちにミュージックレインの代表になった瀬尾(勝)ですね。当時はアニプレックスがランティスのレーベルである〈GloryHeaven〉ーー茅原実里さんやGRANRODEOさんがいたレーベルの商品をディストリビューションしていて。同業他社だけど仲間という関係だったので、ご挨拶も兼ねて食事させていただいたんです。

ーー山内さんと神前さんのファーストコンタクトは?

山内:『STAR DRIVER 輝きのタクト』ですね。制作前の2010年に、当時のプロデューサーと一緒にMONACAさんへ行って、神前さんを紹介されました。J-POP系のレーベルでやっていると、アニメ系の音楽家さんとのつながりなんてなくて、字面は知っていても、当時は「こうさき さとる」って読むことすら知りませんでした。

ーー神前さんとアニプレックスの繋がりでいうと、その前に『セキレイ』と『かんなぎ』があったわけですよね。

神前:『かんなぎ』で岩上(敦宏)さんとご一緒して、その縁で『化物語』のお話をいただいたんですよ。『らき☆すた』の次の年にはもう『かんなぎ』をやってたんだ……。

神前&山内が語る『〈物語〉シリーズ』 楽曲の裏側

ーーリレーのバトンをつなぐように、それぞれの縁が繋がっていったわけと。山内さんが『〈物語〉シリーズ』に関わるようになったのは『偽物語』からでした。

山内:『化物語』の5曲(「staple stable」「帰り道」「恋愛サーキュレーション」「ambivalent world」「sugar sweet nightmare」)は全てがアンセムでしたし、自分自身も衝撃を受けて、続編を作るとなったときに「やりたいです」と手を挙げて、『偽物語』から関わるようになりました。徐々に慣れていくなかで、岩上から「じゃ、あとよろしく」と音楽に関しては一任されるようになったんです。

ーー山内さんが最初に手がけた楽曲は?

山内:「二言目」です。監督の新房(昭之)さんから「『staple stable』へのアンサーソング」としてオーダーを受けて。

神前:「アンサーソングって、そもそもどういうことだ?」みたいなところから始まりましたね。

山内:基本的には歌詞のことを指すと思うんですけど、それを曲でやるということで、「staple stable」とコードは同じだけどメロディは乗せ替えるっていうやり方をして。「marshmallow justice」では「ambivalent world」とのキャラ被りを無くすために、「ブラスロックにしましょうか」という話などをしていましたね。「白金ディスコ」では“和風ディスコ”というテーマでお願いしたんですけど、そもそも伝えてる本人は「和風ディスコってなんだ?」って思ってるという(笑)。

神前:ブレストみたいな感じでポンっと出てきたような。作る前は結構悩みましたけど、取り掛かってからはスルッとできた気はします。

斎藤:僕も最近、神前さんに“チープ・ポップス”という発注をして、なんとかなりました(笑)。

神前:コンセプトはすごく大事ですよね。

山内:それぞれ、大体どの辺の音を鳴らすかというのがパッと浮かぶような言葉であることも大きいですね。その言葉が音楽的であるかないかの差も大きいんですけど。

ーーキャッチコピーを決めるのに近いですし、ニュアンス+音楽ジャンルだからこそ発想のベースになりやすいのかもしれません。

斎藤:神前さんはすごく引き出しが多いので、「ストライクゾーンはここですよ」って決めさえすれば、どんどんボールを投げてくれるんです。逆に「自由です、お任せします」っていう方が困っちゃうと思う。

後編へ続く】

(取材・文=中村拓海/撮影=はぎひさこ) 

■リリース情報
『神前 暁 20th Anniversary Selected Works “DAWN”』
2020年3月18日(水)発売
完全生産限定盤:7,000円+税(ディスク5枚、歌唱DISC3枚+劇伴DISC2枚)
通常盤:3,900円+税(ディスク3枚、歌唱のみ)

<限定盤BOX仕様>
○三方背BOX
○CD 5枚組
○特製ブックレット:約70ページ(仮)
○ブックレット(歌詞掲載ほか)

<通常盤>
○マルチケース
○ブックレット(歌詞掲載ほか)

<収録予定楽曲>
※作品名50音順
※収録予定楽曲のため、 今後内容が変更になる可能性あり
【歌唱DISC】
・アラタなるセカイ / 河野マリナ 『アラタなるセカイ』
・Morning Arch / 河野マリナ『Aチャンネル』
・ハミングガール / るん(CV:福原香織)、 トオル(CV:悠木 碧)、 ナギ(CV:内山夕実)、 ユー子(CV:寿美菜子)  『Aチャンネル』
・もうそう♥えくすぷれす / 千石撫子(CV:花澤香菜) 『囮物語』
・ただいま。 / 高坂桐乃(CV:竹達彩奈) 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
・めてお☆いんぱくと / メルル(CV:田村ゆかり)『 俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
・terminal terminaⅼ / 八九寺真宵(CV:加藤英美里) 『終物語』
・dreamy date drive / 戦場ヶ原ひたぎ(CV:斎藤千和)  『終物語』
・happy bite / 八九寺真宵(CV:加藤英美里) 『傾物語』
・motto☆派手にね! / 戸松 遥 『かんなぎ』
・最後のラブレター / ナギ(CV:戸松 遥) 『かんなぎ』
・étoile et toi [édition le blanc] / Clementine & Ainhoa 『傷物語 〈III冷血篇〉』
・夢幻の華 / 夢塔ハナ(CV:茅野愛衣)  『キャプテン・アース』
・木枯らしセンティメント / “戦場ヶ原ひたぎ(CV:斎藤千和)、 貝木泥舟(CV:三木眞一郎) “『恋物語』
・お後がよろしくって…よ! /”極 落女会 蕪羅亭魔梨威(CV:佐倉綾音)、 波浪浮亭木胡桃(CV:小・岩井ことり)、 防波亭手寅(CV:山本希望)、 空琉美遊亭丸京(CV:南條愛乃)、 暗落亭苦来(CV:後藤沙緒里)” 『じょしらく』
・God knows… / 涼宮ハルヒ(CV:平野 綾) 『涼宮ハルヒの憂鬱』
・Lost my music / 涼宮ハルヒ(CV:平野 綾)  『涼宮ハルヒの憂鬱』
・Super Driver / 平野 綾  『涼宮ハルヒの憂鬱 2期』
・モノクローム ~ version de l’apprivoiser / 気多の巫女(CV:戸松 遥) 『STAR DRIVER 輝きのタクト』
・光のオクターブ / アゲマキ・ワコ(CV:早見沙織) 『STAR DRIVER 輝きのタクト』
・セキレイ /”結(CV:早見沙織)、 月海(CV:井上麻里奈)、 草野(CV:花澤香菜)、 松(CV:遠藤 綾)”『セキレイ』
・雨上がりのミライ / “シャーロック・シェリンフォード(CV:三森すずこ)、 譲崎ネロ(CV:徳井青空)、 エルキュール・バートン(CV:佐々木未来)、 コーデリア・グラウカ(CV:橘田いずみ)” 『探偵オペラ ミルキィホームズ』
・たからもの / 河野マリナ『夏目友人帳』
・七つの海よりキミの海 / 上坂すみれ 『波打ち際のむろみさん』
・二言目 / 戦場ヶ原ひたぎ(CV:斎藤千和) 『偽物語』
・marshmallow justice / 阿良々木火憐(CV:喜多村英梨) 『偽物語』
・白金ディスコ / 阿良々木月火(CV:井口裕香) 『偽物語』
・perfect slumbers / 羽川 翼(CV:堀江由衣) 『猫物語(黒)』
・happy endings / 花澤香菜 (花澤香菜/絶園のテンペスト)
・staple stable / 戦場ヶ原ひたぎ(CV:斎藤千和) 『化物語』
・帰り道 / 八九寺真宵(CV:加藤英美里)  『化物語』
・ambivalent world /神原駿河(CV:沢城みゆき) 『化物語』
・恋愛サーキュレーション /千石撫子(CV:花澤香菜) 『化物語』
・sugar sweet nightmare /羽川 翼(CV:堀江由衣) 『化物語』
・chocolate insomnia / 羽川 翼(CV:堀江由衣) 『猫物語(白)』
・もってけ!セーラーふく / “泉こなた(CV:平野 綾)、 柊かがみ(CV:加藤英美里)、 柊つかさ(CV:福原香織)、 高良みゆき(CV:遠藤 綾)” 『らき☆すた』
・幸せ願う彼方から / 泉かなた(CV:島本須美) 『らき☆すた』
・SOMEONE ELSE / “種島ぽぷら(CV:阿澄佳奈)、 伊波まひる(CV:藤田 咲)、 轟 八千代(CV:喜多村英梨) “『WORKING!!』
・ハートのエッジに挑もう Go to Heart Edge / “小鳥遊宗太(CV:福山 潤)、 佐藤 潤(CV:小野大輔)、 相馬博臣(CV:神谷浩史) ” 『WORKING!!』
ほか

【劇伴Disc】 (完全生産限定盤のみ)
・クチナワ『囮物語』
・竜頭蛇尾『囮物語』
・気まぐれ『鬼物語』
・昔語り 『鬼物語』
・俺の妹が(ry『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
・兄貴の日常『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
・\(^o^)/『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
・アキハバラマーチ 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
・くぁwせdrftgyふじこlp 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
・まがいものそのものの女 『傾物語』
・はじまり 『かんなぎ』
・おほほほ 『かんなぎ』
・こうりん 『かんなぎ』
・かみのき『かんなぎ』
・こもれび 『かんなぎ』
・血 『傷物語 〈I鉄血篇〉』
・鉄血篇 エンドロール『傷物語 〈I鉄血篇〉』
・おっぱい 『傷物語 〈III冷血篇〉』
・地獄の沙汰も金次第 『恋物語』
・いつもの風景から始まる物語 『涼宮ハルヒの消失』
・SOS団再び 『涼宮ハルヒの消失』
・あの日の記憶を追いかけて 『涼宮ハルヒの消失』
・ある雨の日 『涼宮ハルヒの憂鬱』
・いつもの風景 『涼宮ハルヒの憂鬱』
・おいおい 『涼宮ハルヒの憂鬱』
・好調好調『涼宮ハルヒの憂鬱』
・悲劇のヒロイン『涼宮ハルヒの憂鬱』
・着ぐるみカエル隊 『涼宮ハルヒの憂鬱 2期』
・白線マーチ 『涼宮ハルヒの憂鬱 2期』
・活動開始『涼宮ハルヒの憂鬱 2期』
・おふざけマーチ 『涼宮ハルヒの憂鬱 2期』
・絢爛 『STAR DRIVER 輝きのタクト』
・楽園 『STAR DRIVER 輝きのタクト』
・運命 『STAR DRIVER 輝きのタクト』
・銀河美少年 『STAR DRIVER 輝きのタクト』
・偽物 『偽物語』
・怪異の王 『偽物語』
・絆 『偽物語』
・恋 『猫物語』
・私の物語 『猫物語』
・真実からは程遠い存在 『猫物語』
・序章 『化物語』
・街談巷説 『化物語』
・神域 『化物語』
・以下、 回想 『化物語』
・戯言 『化物語』
・天輪聖王 『Fate/EXTRA Last Encore』
・フンフンフン♪だよ、 らき☆すた 『らき☆すた』
・らっきー☆ちゃんねるのテーマ 『らき☆すた』
・ランランラン♪だよ、 らき☆すた 『らき☆すた』
・次回予告だよ、 らき☆すた 『らき☆すた』
・かなたのテーマ 『らき☆すた』
・はじまり 『私の優しくない先輩』
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