チューリップが持つ深い意味とは? オスマン帝国の美を探る『トルコ至宝展』開幕
19/3/21(木) 0:00
《ターバン飾り》オスマン帝国 17世紀 金、ダイヤモンド、ルビー、エメラルド、真珠、七宝 トプカプ宮殿博物館
国立新美術館にて開幕した『トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美』。トルコの首都、イスタンブールにあるトプカプ宮殿博物館が所蔵する16世紀〜19世紀の貴重な宝飾品や美術工芸品約170点をとおして、花々の中でもとりわけチューリップを愛したオスマン帝国の芸術や文化が紹介される。
チューリップといえばオランダを思い浮かべる人が多いと思うが、その原産地はトルコ。トルコ語でチューリップは「ラーレ」と言い、そのアラビア文字を組み換えると、イスラム教の神「アッラー」に、またその文字を語末から読むとトルコ国旗のシンボルでもある三日月「ヒラール」という言葉になる。そのため、チューリップは花として愛されただけでなく、宗教的、国家的なシンボルとして崇められてきた。
同展は、そんなチューリップをテーマに、トルコの美術や文化を読み解いていこうとするもの。壮麗なトプカプ宮殿に入り込んだかのような仕掛けが施された会場で、「トプカプ宮殿とスルタン」「オスマン帝国の宮殿とチューリップ」「トルコと日本の交流」と題された3章構成の展示をめぐることができる。
第1章「トプカプ宮殿とスルタン」では、スルタン(皇帝)が権力の象徴とした 豪華絢爛な品々を展示。意匠を凝らした玉座や吊るし飾り、ターバン飾りなど、王朝の威厳を示す調度品には惜しげもなく金銀宝石が用いられ、その輝きはまばゆいばかり。当時最高の技術と造形美が結集された名品の数々を堪能できる。
続く第2章「オスマン帝国の宮殿とチューリップ」では、衣装や書籍、タイル、敷物、食器など、チューリップ文様に彩られた品々とともに華やかな宮廷生活を紹介。
そして第3章「トルコと日本の交流」では、スルタンと日本の皇室との交流を示す品々や、明治期にトルコに渡った日本美術が展示され、今に続くトルコと日本の友好関係にスポットが当てられている。
玉座から日用品、建築物から書籍に至るまで、展示品のほぼすべてにチューリップの文様が多様なデザインで描かれていて、オスマン朝の美術全般、そして生活においていかにチューリップが欠かせない存在であったかがうかがえる。ちょうどチューリップが咲きほころぶこの時季。チューリップをこよなく愛し、それを優美な品々へと昇華させたオスマン帝国の美に触れてみてはいかがだろうか。
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