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BOYSぴあSelection 第42回 杉野遥亮

杉野遥亮 Part2「尊敬する先輩は、誰よりも正直な人でした」

全2回

PART2

正直でいたい。コロナ禍を経て、自分の考え方や生き方を見つめ直したという杉野遥亮さん。そんな中、新たな出会いを重ねていくことで、より仕事への意識も高まっていったと語る。

どこまでも人間臭くて、嘘がない。杉野遥亮、25歳の等身大の言葉は、きっとたくさんの人の胸を打つはずだ。

── Part1では杉野さんの最近の心境の変化を伺いました。Part2ではさらに深掘りしていきたいのですが、自分のことを「俳優」と名乗れるようになったのはいつ頃ですか。

えー、難しいですね。うーん、たぶん『直ちゃんは小学三年生』からかもしれない。

── めちゃめちゃ最近ですね。

ずっとプロってなんだろうって考えていたんです。その中で出会ったのが『教場Ⅱ』という作品で。僕の中で『教場Ⅱ』の撮影期間はすごく濃厚な時間でした。中江(功)監督と一緒にお仕事をして監督のあり方を目の当たりにしたり。主演の木村(拓哉)さんのいろんな姿を見ていく中で自分の指標となるものができた。

これまで参加した作品でもそういう瞬間はたくさんあったのだと思いますが、Part1で話したような、観てくださる方に想いを馳せることだったり、それを作品に乗せていくことだったりを意識するようになったのは『教場Ⅱ』からで。その次に入った作品が『直ちゃん〜』だったこともあって、そう思うのかもしれないです。

── ぜひ詳しく聞かせてください。まず中江監督からはどんな影響を受けましたか。

印象的だったのが、最初の行進のシーン。それまでの間に役づくりで僕たちは行進の訓練を受けていたから、ある程度のレベルには達していたんですね。でも撮影が始まって、ずっと行進を続けていると、暑いし神経を使うから、みんなへばってきちゃって、少しずつ行進がバラバラになったんですよ。

そしたら、その瞬間から監督が「よーいスタート」ってカメラを回しはじめたんです。てっきり僕はその前からずっと撮っていると思っていたからビックリしたんですけど、監督は行進がズレているのを撮るために、わざと僕らの動きがバラバラになるまで待っていたみたいなんです。それを知って、監督はリアルなものを撮ろうとされているんだなって。すごいカッコいいなって思ったんです。

そこからはもう監督がオッケーと言うならオッケーなんだって一気に信頼できたというか。この間もLINEで「俳優としての杉野遥亮と人間としての杉野遥亮は違うよ」というアドバイスをしてもらいました。ちょうど自分が同じことで悩んでいた時期だったので、監督のその言葉が腑に落ち、胸に響きました。

── 木村さんとの共演はいかがでしたか。

こんなことを言うと怒られるかもしれないけど、最初は怖い人なのかなと思っていたんです。だから、撮影に入る前はビビっていたんですけど、実際にお仕事させていただいた木村さんはめちゃくちゃカッコいい方でした。

仕事に対する姿勢もカッコいいんです。キャストにもスタッフにも全力の愛情を注いでくださる。と言っても、それは何でもかんでも大丈夫だよって言うような愛情じゃなくて。時には厳しい言葉もありました。でもそれは決して自分のイライラをぶつけてるんじゃなくて、ちゃんと相手のために言っているのが伝わるんです。

そんな姿を見ながらすごいなと思ったし、これは僕の勝手な考えですけど、あれだけずっと第一線でいられる理由がわかったというか。でもそれと同時に、何十年もの間、ずっとそうやって自分を貫いていくことの怖さもほんの少しだけどわかるからこそ、木村さんの持っている強さって相当だなと思いました。

どんなありかたにせよ、プロとは、真似される人なんだと思う

── 「プロってなんだろうって考えていた」とおっしゃいましたが、杉野さんはどんな人がプロだと思いますか。

真似される人、かな。プロのあり方っていろいろあると思いますけど、どんなありかたにせよ何かしら真似されるのがプロなのかなって。それは本物と偽物もそうだと思うし。

── 「真似される人」というフレーズが出てきたのはどうしてですか。

この間、OKAMOTO'Sのハマ・オカモトさんとラジオで対談をさせてもらったんです。考え方の根幹がすごいしっかりされている方だなと思って、気になってインスタを見たんですよ。そしたら一問一答をやられていて、「本物と偽物とは?」という質問に対して、「真似する側と真似される側」って書いてありまして。

── それで、今真似をしたと(笑)。

真似しました(笑)。ヤバい、僕、真似する側だった(笑)。でも本当にその通りだと思ったし、自分には出せない言葉なので、カッコいいなって思いました。

── じゃあ、カッコいい人はどんな人だと思いますか。

自分に正直に生きている人です。自分にも他人にも嘘をつかない人。自分はそれを目指したいし、そうありたいなとは思っています。

── 今、正直になれていますか。

そうですね。模索しながら、日々戦いながらですけど。

やっぱり難しいですよ。自分が正直に言ったことによって悪い空気になったら嫌われるだろうなとか、陰で悪く言われるんだろうなとか。そういう不安と戦うのは怖いけど、立ち向かっていくことは強さにもつながるなとも思うし。強い人ってカッコいいじゃないですか。逃げないことが強さになると思うから、僕は自分自身に正直でいたいです。

ネットでディスられているのを見て、めちゃくちゃ傷ついたことがあります

── デビューして5年が過ぎましたが、この仕事を選んで良かったと思いますか。

良かったと思います。でもそれも緊急事態宣言前までは良かったなんてあんまり思ってなかったんです。いろんな人と会えるとか、時間に縛られない分、他の仕事よりも精神的に自由だなと思ったときはありましたけど、僕自身、仕事に対してまだ模索していたし、わからないことも多いし、辛いことの方が多いって思っていました。

でも、それが自粛期間を経て変わったというか。そういう意味でも、去年1年は自分自身を見つめ直す時間でした。

── 自粛期間の間にどんなことを考えていたのでしょうか。

すごく覚えているのが、ある番組に出たとき、SNSで結構ディスられちゃったんですよ。そのとき自分もいろいろ模索していて、今思えば確かに言われて仕方ない部分もあったなとは思うんですけど。でも当時は、なんで知らない人にこんなに言われなきゃいけないんだろうって、めちゃくちゃ傷ついちゃって。わかってないくせにって腹を立てる時もありました。

── ネガティブな声ってこたえますよね…。

当時、すごくエゴサをしてしまっていたから。他に褒めてくれる人とか、好きだって言ってくれるポジティブな意見の人もいっぱいいるのに、どうしても悪く言っているほんの少しの人のネガティブな言葉の方が残っちゃうんですね。ダメージ食らっちゃうし、自分の軸がその人の言葉に寄っちゃうところがあって。SNSって怖いなと思いました。

── それでどうしたんですか。

そのときはすごく辛くて。地元の友達とか親と電話したりしてたんですけど。でも解消はちゃんとできなくて。でも、さんざんヘコんだら、もういいやって。自分は自分でいいって、そう思うようにしました。

Part1でも話した通り、ずっと優等生でいようとしてきて、誰にどう思われるのか気にすることが癖づいて生きてきたんで。だからエゴサもやめられなかったんだと思うんですけど。自分は自分でいいって思い直してからは、もうエゴサするのもやめました。

── 有名な方は本当に大変だと思います。これからもお仕事をしていく上で、知らない誰かからいろいろ言われることからは逃げられないじゃないですか。

だから今は友達や家族や僕を応援してくれている方々だったり、自分のほっとできる場所を大事にしています。その人たちが自分を受け止めてくれるなら、知らない人に何を言われても大丈夫と思えます。逆に、その人たちに怒られたときは、あ、自分はよくない方向に行ってるんだと思えばいい。それ以外の声に引っ張られないようにしています。

── 本当の自分を知っている相手だからこそ受け入れられる言葉ってありますよね。

まだそのあり方も模索中なんですけどね。信頼できるからこそ、もっと突きつめていけると思うし。

── と言うのは、どういうことでしょう。

僕はずっと人と喧嘩することが怖く、相手を傷つけるんじゃないかとか、自分も傷つけられるんじゃないかとか、そういうのをすごく考えるんですね。でも、本当に大切な人なら何かビッグバンが起きた方がいいこともあるなって。喧嘩して、仲直りしていくことで、人と人の仲って深まっていくんだと思うし。喧嘩ができるということは、それだけ本音が言えている証拠。だから、本当に大切な人に限りますけど、もっと喧嘩した方がいいなって考えるようになりました。

── そういう意味では、人とぶつかり合うことを恐れなくなった面も?

ありますね。難しいですけど。ぶつかり合うことは大事だよって、ある人と喧嘩したときに言われて。それはすごくハッとしました。

いい俳優になるためにこれからも真っ直ぐに生き続ける

── お話を聞いていて、めちゃくちゃ人間臭い人だなと思いました。こういうインタビューの場で、ちゃんと自分の言葉で話してくれる人なんだなって。

やっぱり本音で喋らなきゃ何も生まれないじゃないですか。仕事もそうだと思います。本音で向かってきてもらわないと何聞かれているんだろうって僕らも思うし。それに答える自分自身も何言ってるんだろうってなる。内容が浅くたって全然いいと思うんですよ。それが、正直なその人自身だから。まずは正直に思っていることを言わなきゃ意味がない。

── 杓子定規な受け答えはつまらないですよね。

そう思います。だからこうやってディスカッションできる取材はすごく楽しいです。

── そうやって正直にっていくことで、お芝居にも変化が出てくると思いますか。

そうですね。特に今年は舞台が控えているので。自分が自分でいないと絶対飲まれるし、揺さぶられるし、何もできなくなると思っていて。どんな準備をしていったらいいんだろうって模索していく中で、今は自分が自分でいることが準備になっているなと思っています。

── では最後に。いい俳優になるためにやらなきゃいけないことってなんだと思いますか。

僕自身に関して言えば、真っ直ぐに生き続けることだと思います。それが自分の魅力にもなっていると思うし。僕、この仕事、正直じゃなきゃ続けられないと思うんです。

勇気のいることだけど、それがハートの強さに関わってくるというか。自分を人間として強くしてくれるので。そう思ったらワクワクはしますよ。

── じゃあ、次にお会いしたとき、嘘ついてると思ったら今日のこの取材音源を聞かせますね(笑)。

「なんか変わりました?」って(笑)。意外と軸からズレたときって自分ではわからなかったりするじゃないですか。周りにいる人や環境によって知らず知らずのうちに変わったりすることってあると思うから。今こうやってお話ししたんで、今度嘘ついているなと思ったら、そのときは怒ってください(笑)。

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撮影/奥田耕平、取材・文/横川良明、企画・構成/藤坂美樹、ヘア・メイク/Emiy、スタイリング/作山直紀、衣装協力/トップス、インナー、パンツ 全て「ネペンテス」、シューズ「オールデン」

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