Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

井川遥、『おちょやん』高城百合子がハマり役 スター性と人間味を両立するその魅力

リアルサウンド

21/1/22(金) 6:00

 杉咲花主演のNHK連続テレビ小説『おちょやん』で、ヒロイン・竹井千代の憧れのスター女優・高城百合子を演じている井川遥。朝ドラ3作目の出演となる本作では、高貴な美しくさとは裏腹にどこか天然ボケなところもある、まさに浮世離れしたスター女優を自然体で演じている。そんな井川のキャリアを振り返り、今後への期待について考えてみたい。

 井川といえば長年“癒し系”タレントブームの象徴とも言える女優だが、「角ハイボール」CMでの店主役からは、色気のある素敵な女性というイメージが定着し、昔と変わらぬスタイルと美貌で女性誌の表紙を飾るなど男女双方に愛され続けている。

 そうした“癒し系”からの変化のターニングポイントにもなったのは、2010年代に入ってからだろうか。2011年の『フリーター、家を買う。』(フジテレビ系)では、主人公・武誠治(二宮和也)の頼りになる姉役で、自然体のサバサバした演技が見事にハマったかと思えば、2013年の意外にも初主演となったドラマ『ガラスの家』(NHK)では、義母と息子の禁断の愛を描いた難しい役を熱演。斎藤工を相手に、タブーだと分かっても本能の赴くままに大胆な行動に走らせてしまうヒロインとして、抑えた艶っぽさを際立たせていく。同作での井川の演技が、井川の現在のイメージが定着するきっかけだったようにも思う。2015年の『流星ワゴン』(TBS系)では、平穏の家庭に不満を持ち、浮気に走る妻を演じ、昨年は『半沢直樹』(TBS系)で、居酒屋の女将役が注目を集めるなど、近年もそうしたキャリアを積んだ現在だからこそできる、ミステリアスな演技で話題を呼んでいる。

 そんな井川が『おちょやん』で演じる高城百合子は、千代(杉咲花)が道頓堀の芝居小屋で目撃して以来、憧れ続けるスター女優という役柄。その美貌と情熱的な演技で観客を魅了し、芸術のために自由な人生を突き進む姿に、千代は大きな影響を受ける。

 大正から昭和にかけての映画スターらしい優雅さを醸し出しながらも、千代の記憶を昔飼っていて九官鳥のレイチェルと(わざと?)勘違いする天然な一面もある、いかにも浮世離れしたスター女優の存在感が、物語に新鮮さを与えている。

 デビュー当時と変わらない気品を保ち続け、これまでのキャリアの中では、コミカルでトボけた役も演じてきた井川にとって、百合子はまさに適役だろう。ただこの役のポイントは、決してすでに成功を収めた大女優というわけではなく、今でも壁にぶつかっているということ。そもそも、最初の千代との出会いは、所属事務所に舞台から活動写真女優への転向を求められたことを不服に逃亡中だったときだ。そして千代が大部屋俳優となり撮影所で出会うときには、監督に「さようなら」のセリフを何度もダメ出しされ、「自分ではなくなる」と共演俳優と駆け落ちしてしまうなど、自分の意志を曲げるくらいなら逃亡する厄介な人でもある。

 百合子がスター女優まで登り詰めるには、撮影所システムや、女優という職業観もまだ千代の時代ほど整ってはいなかっただろう。そう考えると、百合子はある意味千代以上の苦労人とも言える。井川自身もキャンペーンガールから20年以上のキャリアを積んで、今こうして女優として活躍しているわけで、百合子役が自然と合うのも不思議ではない。

 1月22日放送の第35話では、千代に「何でも利用するのよ」と極意を伝授し、「私たちは自由なのよ」と大女優らしく立派にアドバイスする百合子。ただ千代に匿われた逃亡中に助言するというコミカルさが、彼女の人間味あふれる魅力につながっている。

 大スターと新人女優という関係は、朝ドラで例えると『あまちゃん』で薬師丸ひろ子が演じた鈴鹿ひろ美と、のんが演じた天野アキにも近いものがある。鈴鹿ひろ美は天然ボケのようで、全てが計算ずく。最後にビシッと決める大物女優ぶりを見せていたが、逃亡中の百合子は今後千代とどのように交わるのだろうか。女優の人生を描くドラマとして、千代と同じように百合子の物語としても実に興味深いドラマである。本作での百合子の大物女優ぶりで、改めて井川遥という女優の面白さと、貫禄ある演技が体感できる。井川は、現実でもスター女優の仲間入りを果たしそうだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む