Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

IDOLiSH7 七瀬陸、“絶対的センター”である理由 音楽面を支えるボーカル力から分析

リアルサウンド

20/3/20(金) 10:00

 今、勢いに乗るアイドルグループ・IDOLiSH7。彼らの音楽的な要は、やはりセンター・七瀬陸のボーカルである。今回は彼の魅力を掘り下げると同時に、アイドルグループにおけるセンターポジションとは何なのか、今一度考えてみたい。

(関連:IDOLiSH7ら誕生日企画『RabbiTube』はなぜ好評? ファンとアイドルの間に生み出す幸福な循環

 様々なアイドルが活躍する現在、そのスタイルも多様性に満ちている。それはセンターという立ち位置にも同じことが言えるだろう。センターを置かずにパフォーマンスをするグループやデュオもいるし、ダブルセンターをおいているグループも存在している。曲によってセンターを変える場合もある。

 このように、グループによってセンターの役割も変わってくる。グループを引っ張るタイプ、他のメンバーがセンターを盛り立てて一致団結するグループ、単純に歌唱という音楽的な面でグループの柱となるセンターなど、はっきり分けられるものではないが傾向は存在している。そのアイドルがセンターとなる性質や要因もいろいろだ。見た目が華やかである、カリスマ性がある、歌唱力がある……など、これも単純にタイプ分けできるものではなく、要因が重なる場合がほとんどだろう。七瀬陸というセンターは、役割においても性質においても(多少割合の差はあれど)その要素をすべて持ち担っているのだから末恐ろしい。

 IDOLiSH7の場合、7人というメンバー構成上センターポジションはフォーメーション的にも欠かせない。彼らの楽曲を細かく聴いていくと、固定のセンターを置きつつも、満遍なくメンバーの個性が出せるような演出になっているのがよくわかる。どの曲もそれぞれの歌声が生かせるようにパートが分けられているし、二階堂大和がセンターを務めた「GOOD NIGHT AWESOME」や、四葉環がリードボーカルを務めている「THE FUNKY UNIVERSE」など、曲によってセンターを変えることもある。それでもやはり、七瀬がグループの象徴として存在感を示しているのも間違いない。

 顕著な例はいくつかある。例えば「Dancing∞BEAT!!」。ライブでは間奏で四葉がソロダンスを披露し、逢坂壮五のソロパートにバトンタッチする。その時間は完全に四葉と逢坂のユニット=MEZZO”のふたりが場を支配するが、七瀬のリードボーカルに切り替わった瞬間、IDOLiSH7という7人の時間に引き戻される。

 「ナナツイロREALiZE」のMVにも、彼のセンターとしての存在感がよくあらわれている。どこか切ないが仲間の絆を感じさせるストーリー仕立てのMVにおいて、七瀬は普段の弾けるような笑顔を封じ影のある演技を披露しているが、場面が変わりIDOLiSH7のセンターとして笑顔で踊る姿を観た瞬間、IDOLiSH7らしい歌詞の真のメッセージ性に気づかされるのだ。

 七瀬個人の魅力ついては、シンプルに語ることができない。ほんわりとしたかわいらしい発言をしたかと思えば、ドキッとするような雄々しい表情を見せることもある。明るく楽しいキャラクターの裏に、どこか達観したような大人な面を感じさせることもある。これはいわゆる“ギャップ”や“二面性”というよりも、“複雑さ”という方が正確かもしれない。七瀬個人のファンの中には、そんな部分に魅力を感じている人も多いのではないだろうか? (このあたりはソロ曲「SEPTET for…」を聴くとわかりやすい。仲間を想う爽やかな歌詞とメロディの中に、彼の深い内面を感じさせる味わい深い一曲だ。グループやユニットでの歌唱曲とは少し趣の違う、彼自身を強く投影した楽曲と言えるだろう。)

 そんな七瀬がセンターたる所以は、明るいキャラクターや優れた見た目、パフォーマンスの華やかさや、歌のうまさだけではない。切実さのようなものを秘めた心に響く繊細な歌声こそ、彼の最大の魅力でありセンターである一番の理由だ。「RESTART POiNTER」で〈キミと笑いあえたなら どんな今日も変えられるさ〉と歌い出す彼の声は、奇妙な説得力を持っている。

 歌詞の内容がそのまま現実になっていく様を実感させ、胸を打つ。「Sakura Message」や「ハツコイリズム」といったバラードは、七瀬のパートに入ると特に、胸を締め付けるようなリアルな切なさを感じさせる。前向きで希望に満ちたIDOLiSH7の楽曲を聴いていると勇気が湧いてくるのは、七瀬のボーカルが中心にあり、そんな彼に並んでもまったく輝きを失わない6人の個性が彩りを鮮やかにしているからに他ならない。

 また、彼らがアイドルながらどこか身近に感じるのは7人の持つ親しみやすさだけではなく、センターである七瀬の歌声が真に迫りリスナーの胸に入り込んでくることも、ひとつの要因なのかもしれない。アイドルの魅力とは、見た目や実力の優劣だけではなく、滲み出る人間性や個性にあらわれるものであり、そういった意味でアイドルグループに“特別なセンター”が必ずしも必要とは限らない。だが今この時点においては、IDOLiSH7がIDOLiSH7らしくあるために、“センター・七瀬陸”はあまりにも絶対的である。

 人気アイドルグループの座を得た彼らは今後、表現の形をどう模索していくのだろうか。彼らが多くの経験を経てさらなる成長を見せた時、七瀬の歌声は我々の心にどのように響き、どんな感情をもたらすのだろう。未知数の可能性を持ったセンター・七瀬陸から、ますます目が離せない。(草野英絵)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む