NUMBER GIRL、東京事変、私立恵比寿中学、尾崎豊……今サブスクで聴きたい、現場の熱量閉じ込めたライブ音源
20/12/13(日) 17:00
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ライブが中止や延期になったり、開催されても従来通りの方法ではできない状況が続く2020年。それまでライブに頻繁に行っていた人も、仕事や家庭の事情で自粛することも多くなっているのではないだろうか。
今回は実際にライブに行くことができなくても、会場の雰囲気やライブにしかない感動が伝わるライブ音源でプレイリストを作成した。ジャンルも様々な9組のアーティストだが、どれも「ライブだからこそ」の魅力が詰まった音源ばかりだ。少しでもライブへ行った気持ちになって楽しんでもらえたらと思う。
NUMBER GIRL「OMOIDE IN MY HEAD(LAST LIVE AT SAPPORO サッポロ OMOIDE IN MY HEAD状態)」
2019年に再結成したNUMBER GIRL。数ある名曲の中でも特にライブ人気が高い「OMOIDE IN MY HEAD」(『サッポロOMOIDE IN MY HEAD状態』収録)を選んでみた。向井秀徳の「ドラムス、アヒトイナザワ」の台詞からバンドの演奏が始まる瞬間がたまらなく痺れる。「オイ!」と叫ぶ観客の熱気も最高。彼らがライブバンドとして評価され続けている理由が必ず伝わるはずだ。
東京事変「OSCA(ウルトラCより)」
東京事変のライブベストアルバム『東京コレクション』より「OSCA」のライブ音源。始まった瞬間に巻き起こる観客の歓声は興奮が伝わってくる。後半でアップテンポになる展開は、バンドが持つ高い技術を感じられる演奏だ。椎名林檎の荒々しくもクールな歌声が魅力的で、中盤のコール&レスポンスも完璧。またこうやって東京事変のライブを叫んで楽しみたい。
私立恵比寿中学「放課後ゲタ箱ロッケンロールMX(Live)」
アイドルのライブでは特に「ファンと一緒にライブを作り上げている」ということを実感する。観客の熱気と愛に満ちた声援やコールは凄まじいものがある。私立恵比寿中学『FAMIEN’18 IN YAMANAKAKO DAY2』収録の「放課後ゲタ箱ロッケンロールMX」ライブ音源からは、ファンの熱気によってメンバーも歌声が覚醒していることがわかる。ライブだからこその魂を振り絞るように叫ぶ歌声と、それに興奮して叫ぶ観客。想いをぶつけ合うような凄みを感じる音源だ。
フジファブリック「LIFE(Live at 日本武道館)」
フジファブリックのライブはいつも温かい雰囲気で満たされている。ロックでカッコイイのに優しい空気になる不思議なバンドなのだ。そんな雰囲気が日本武道館で収録された『Live at 日本武道館』収録の「LIFE」ライブ音源からは特に感じる。何度も「ありがとう」と言うボーカルの山内総一郎と、リズムに合わせて楽しそうに手拍子する観客。曲終わりの長めの拍手も印象的で優しさに満ちている。
キュウソネコカミ「ハッピーポンコツ(LIVE)」
キュウソネコカミのライブも、フジファブリックと同じぐらいに温かい雰囲気で満たされている。『キュウソネコカミ THE LIVE-DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016/2017 ボロボロ バキバキ クルットゥー/なんばHatch(2017/01/31)』収録の「ハッピーポンコツ」ライブ音源を聴けばその空気感が伝わると思う。笑顔で楽しそうに踊っているファンの姿が頭にハッキリと浮かんでくる。メンバーの楽しそうにしている顔も想像できる。
あいみょん「猫(2018.10.7 Live at 上野恩賜公園 野外ステージ)」
あいみょんは、DISH//に提供した「猫」をライブで弾き語りによるセルフカバーを行った。『今夜このまま』収録のライブ音源には観客の歓声や手拍子はない。繊細な表現の演奏を真剣に聴いている客席の集中した空気感までも音源からは伝わってくる。そして曲が終わった瞬間に緊張の糸が切れて、感動を表現するように拍手が贈られる空気感もたまらない。音だけでなく空気まで録音されているような気がする。
尾崎豊「15の夜(ライブ)」
尾崎豊『13/71-THE BEST SELECTION』収録の「15の夜」ライブ音源は、弾き語りだが観客の熱気が伝わってくる。むしろシンプルな弾き語りだからこそ、ファンの歓声や手拍子が楽曲の一部となって、演奏に深みを与えている。特に後半の盛り上がりと感動は、観客と一緒にライブを作り上げているからこそ生まれるものだろう。「また会いましょう」という最後の挨拶で締めくくることも感動的だ。
PassCode「Ray(PassCode STARRY TOUR 2020 FINAL at KT Zepp Yokohama)」
コロナ禍になってから初めて行った有観客ライブを音源化した『PassCode STARRY TOUR 2020 FINAL at KT Zepp Yokohama』。彼女たちのライブはモッシュやダイブは当たり前で、ファンも一緒に歌ったり叫んだりするライブだった。しかし、コロナ禍における取り組みとして、ライブ中に声を出すファンは1人もいなくなった。それでも最高のライブをやろうという意気込みと、ファンの前でライブを行えることの喜びを「Ray」のライブ音源からは感じる。歌い始める前の「何度も何度もこの曲に助けられた分、この曲でみんなを幸せにしたい」という南菜生の言葉が胸に刺さる。コロナ禍だからこそ熱い想いを感じるようなライブ音源だ。
andymori「愛してやまない音楽を (アカペラ ver.) (2013.04.05 ライブハウスツアー”FUN!FUN!FUN!”/恵比寿LIQUIDROOM)」
バンドなのにあえてメンバー3人がアカペラで歌っているandymori「愛してやまない音楽を」(『andymori ライブアルバム 愛してやまない音楽を』収録)。客席にいる音楽を愛する人たちの手拍子や歓声も演奏の一部になっている。ライブはアーティストだけでなく、客席を含めた全員が、音楽を心から楽しみことで成立していることを実感するような音源だ。スタジオの録音では感じることができないような、ファンと一緒に作り上げるライブだからこそ録音することができたであろう名演。これがライブの魅力だと思う。
音楽はアーティストから一方通行でリスナーが受け取るものではなく、キャッチボールのように受け取り合うものだ。ライブ音源を聴くと、それを改めて実感する。ライブ音源の中には歌や演奏が荒々しいものもあり、音の良さという点でもスタジオ音源と比べると劣っていると言えるのかもしれない。ただ、そんなライブ音源たちが、今は体験することができない音楽の根源的な楽しみ方を、我々に蘇らせてくれるのだ。
■むらたかもめ
オトニッチというファン目線で音楽を深読みし考察する音楽雑記ブログの運営者。出身はピエール瀧と同じ静岡県。移住地はピエール中野と同じ埼玉県。ロックとポップスとアイドルをメインに文章を書く人。
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