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イヤホンズが語る、5年の活動を表現した“音楽の進化論”「今の私たちの歌はこれです!」

リアルサウンド

20/7/25(土) 18:00

 高野麻里佳、高橋李依、長久友紀による3人組声優ユニット、イヤホンズが7月22日に3rdアルバム『Theory of evolution』をリリースした。今作は、イヤホンズの5周年を記念した作品となっており、”音楽の進化論”というテーマが掲げられている。

 今回のインタビューでは、ユニットとして活動を始めた5年間を振り返りつつ、今作収録の「記憶」「耳の中へ!!!」「背中のWING!!!」を中心にイヤホンズの声の表現の進化について話を聞いた。(編集部) 

変化していっていることが、表現されている 

ーーイヤホンズはもともと漫画『それが声優!』に登場する声優ユニットで、そのTVアニメ化に際し、同ユニットのキャストを務める皆さんが、現実の声優ユニットとしても活動を始めたのが誕生のきっかけだったわけですが、そこから作品の枠を超えて活躍の場を広げ、今年で結成5周年を迎えました。ここまで活動を続けてこられた今、どんなお気持ちですか?

高橋李依(以下、高橋):結成した当初は『それが声優!』という作品に向けて走ることばかりでしたけど、そこから「今後イヤホンズというユニットを続けるか?」ということを決めるタイミングのときに、みんなで覚悟を決めたからこそ、今は来年も再来年もずっと一緒にいるんだろうなっていうのが見えます。

高野麻里佳(以下、高野):うんうん。

長久友紀(以下、長久):だってリーダー(高橋)は、もう10周年のことも言ってますからね。早い!(笑)。

高橋:え〜! だってまだまだやるでしょ。私は10周年やるつもりです! 勝手に言ってますけど(笑)。

長久:でも、リーダーがそう言ってくれてうれしかった。とはいえ5周年もすごいですよね。最初は『それが声優!』を盛り上げるためのユニットでしたけど、今は「作品から離れても、この3人で面白いことをやろう!」っていうプロデューサーの信念があるし、私たちもそういう気持ちでいて。応援してくださる方たちに、今までにない音楽を届けているところに関しては、自信がついてきました。

ーー「今までにない」という実感は、皆さんにもあるんですね。

長久:そうですね。声優ユニットって基本はメンバーが同じ事務所のことが多いと思うんですけど、この3人は事務所もバラバラでしたし……まあ今は、私とまりんか(高野)が一緒の事務所ですけど(注:高野は2019年に青二プロダクションに移籍し、長久と同じ事務所の所属になった)。それにイヤホンズの曲は、音楽のジャンルにあまりとらわれないというか、アニソンみたいな曲だけではなくて、「声」の表現に特化した曲ばかりなので……こんなことを言っちゃっていいのかわからないですけど、唯一無二だと思います!

高野:最初は、イヤホンズという名前からして「ダサかわいい」ところがあって、それが私たちの創造主である浅野さん(声優の浅野真澄、TVアニメ『それが声優!』の原作者)からいただいたコンセプトみたいな部分だったんですけど、そのポップでかわいいイメージから、この5年でお洒落な要素とかが追加されていったと思うんですね。それは今回のアルバムの「進化論」というコンセプトにも表れているところで、私たちがどんどん変化していっていることが、楽曲でちゃんと表現されていますし、改めて振り返ると、5年ってすごく早かったですけど、着実にイヤホンズのカラーが脚色されてきたんだなと思います。

高野麻里佳

ーー今回のニューアルバム『Theory of evolution』は、「音楽の進化論」というやや硬いイメージのテーマが掲げられていますが、最初にそれを知ったとき、どう思われましたか?

長久:めっちゃビビりました(笑)。

高橋:しかも、私たちが「進化」って言うと、スタッフさんから「いや、そこは進化論」って正されるんですよ。最初はその違いの意味がわからなくて(笑)。でも、アルバムが完成してなるほどと思ったのは、「進化」という言葉には完成形とか最終形態のイメージがありますけど、「進化論」だとまだ進化の過程なんですよね。なので、まだ途中でも未完成でもいいんですけど、「5年目の今これが私たちの進化論です!」って胸を張って言えるのは、「論」がついているおかげだなあと思います。

高野:たしかに「自分で進化って言っちゃうんだ」ってなるもんね。そこは人に評価されるべきものだから。

長久:日本語の勉強にもなりました(笑)。

高橋李依

ーー今回のアルバムの収録曲は、今までのイヤホンズの活動や楽曲を踏まえて作られている印象ですが、その意味でリード曲の「記憶」は、前作の2ndアルバム『Some Dreams』に収録された「あたしのなかのものがたり」の進化系といった内容です。どちらも三浦康嗣(□□□)さんが提供されていますし。

高野:私たちも、何となく連続性のあるものというイメージはありますけど、「記憶」は「あたしのなかのものがたり」での一人の人生の描き方とは、またちょっと違うものになっていて。「あたしのなかのものがたり」は、少女時代の自分が未来への不安を持っていて、どっちの道を選ぶか選択を迫られる曲でしたけど、「記憶」は歌詞に〈走馬灯のような〉というフレーズがあるように、未来の自分が過去を振り返っていくお話なんです。なのでノスタルジーというか哀愁の漂うような楽曲になっていて。でも、私たちは結構明るいコンセプトで歌うように言われていました。

高橋:うんうん、「あたしのなかのものがたり」よりも入り口は全然明るいと思います。「あたしのなかのものがたり」では、まりんかがどちらの方向に行くか迷う女の子のポジションを担当していたんですけど、その子は結構悩んでいたんですよね。でも今回の「記憶」は、走馬灯を見た悟りの先というか、悲しんでいるとかそういう雰囲気ではなくて……。

長久:ちょっと達観しているところがあるよね。

高橋:そうそう。どちらも語り口調の楽曲で、ある意味、続編ではありますけど、その違いを楽しんでいただきたいなと思います。

高野:挑戦的な曲ではあるけど、このラップのような、おしゃべりのような楽曲を今回もアルバムに入れられるのがうれしかったよね?

高橋:うれしかったー! それと3人それぞれのすみ分けの担当パートがあるので、そこはしっかりやらせていただきました。

長久友紀

ーーお三方がそれぞれ、一人の女性の記憶の断片を曲中で演じていて。高野さんは高校一年生の夏、縁日というロケーションを担当されています。

高野:私の担当したパートは、主に楽しかったことを思い浮かべている歌詞だったので、私自身も過去を振り返って、ドキドキして息が上がっている自分だとか、好きな人を意識して頬を染めている自分をイメージして歌おうと思ったら、三浦さんからは「当事者としてというよりは、当時の自分をフワッと思い出しているような、大人の自分であってほしい」というディレクションをいただきまして。歌詞の内容は楽しい思い出なんですけど、それはやっぱり今の視点から考えると過去のことで、もう遠い思い出というのが、私はノスタルジーだなあと思いました。愛しくて切ないその日へついつい戻りたくなってしまうけど、今の私が歌うからこそよく聴こえる、という部分を表現できればと思って歌いました。

ーー高橋さんは5歳の頃、生まれてから覚えている最初の記憶を演じられました。

高橋:私も5歳っぽい芝居をしようというよりかは、5歳の子供が頭の中で抱いていた記憶を、それよりちょっと先の誰かがモノローグでしゃべっている曲なので、年齢感を意識するよりも、気持ちを一回、悟りに飛ばした感じと言いますか(笑)。あまり「こういう女の子」というイメージを固めないようにしました。聴いた人が、一番自然体の形で5歳の記憶に戻れるような、一緒に共有できるようなものにしたいなと思いまして。

ーー役になりきるというよりは、俯瞰的な感じと言いますか。

高橋:はい。あとは、しゃべっている音より、頭の中で考えているモノローグに近い感覚を意識しました。子供って、ふと我に返った瞬間に、急に大人びてたりするじゃないですか。お母さんとしゃべっている自分ではなく、子供の内にあるもの、みたいな印象でやらせていただきました。

ーーあと、この5歳という年齢は、イヤホンズの5周年にもかかっているのかなと思ったのですが。

高橋:えっ、気づかなかった!

高野:私もそれは思ったー。「イヤホンズ5ちゃい」っていう。三浦さんはそうは言ってなかったから、違うかもしれないけど。今度聞いてみよ?

高橋:なんとー! でもそう思うと、これはイヤホンズが生まれた瞬間なのかもしれない……! だとしたら、ちょっとヤバいかも。歌詞に〈駆けた大通り 見えた葬式〉ってあるので(笑)。

高野:5周年でまさか……っていう(笑)。

ーーそして長久さんが担当したのは、今夜の記憶。大人になった主人公が、仕事を終えて自宅に帰ってきた情景です。

長久:私は最初の部分は、聴いている人たちが耳で聴きながら視覚的に感じられるものにしたかったので、結構主観で歌いましたね。まず導入の〈「ただいま」と言う気力ゼロ へとへと って誰もいないけど〉というイメージを皆さんに共有してもらいたかったので、そこは主観的に言わせていただいて。その後は、だんだん心がハッピーで明るい気持ちになっていって、最後は幸せに眠りに落ちるっていうパートなので、三浦さんと一緒に構成を考えながら、だんだん明るくなっていくように、自分のリズムと声にこだわって録りました。

ーー声のニュアンスでストーリーを組み立てていかれたと。

長久:ただ、私のパートはめちゃくちゃ難しくて。このパート、息継ぎがないんですよ! ブレスするところが本当になくて。みんなにも一回歌ってみてほしい! で、どこで息継ぎしたらいいのか、アドバイスがほしいです(笑)。

高野:たしかにめっちゃ録り直したって言ってたもんね。

長久:そこはまた違うところなの。

高野:えっ、そうなの!?(笑)。

長久:この曲は録り直したところがいっぱいあるの。この部分は技術的な部分が追いつかなくて。息を吸ってるけど吐く、しゃべっているみたいな発声法がいいよって言われたんだけど……。

高橋:距離が近い感じかな?

長久:いや、吸いながら声を出すみたいな。たぶん腹式で、短い呼吸でもちゃんと声を出せる発声、って言われたんだけど、もう意味が分からない! ってなって(笑)。これは私の中の「進化論」の課題になりました。きっと今後ライブで何回も歌うことによって、だんだん息継ぎの仕方もわかってくると思うので、いずれその呼吸法を習得したいなと思います。

ーーでも、たしかにパートを交代して歌うと、さらに面白い化学反応が生まれそうですね。

長久:本当にやってほしい!

高橋:絶対やだ! そのパート、超大変そうだもん(笑)。

長久:でも、まりんかも結構大変そうだよね、あのパート。

高野:そう、この曲は下駄のカランコロンっていう音とか、SEがたくさん入っているのも魅力だと思うんですけど、歌うときにそのリズムに引っ張られてしまって、すごく歌いづらいんです(笑)。なので、歌うときはSEを全部消してもらって、クリックだけを聴いて歌ったぐらいで。

高橋:たしかに花火の音がすごくリズムを刻んでるから大変そう。

長久:この曲はりえりー(高橋)が早めに録ってくれていたので、私たち(長久と高野)はりえりーの歌が入っているラフの状態の音源を先にもらえたんですよ。それを聴いたときに「りえりー、ちゃんと歌えてるし、私も大丈夫じゃね?」と思ったんですけど、いざ歌ったら何回も録り直しすることになって(笑)。さすがリーダーだなと思いました。

高橋:私はいつもリズミカルなパートが多いから。

ーーたしかに「記憶」の個人パートでの歌い方は、「あたしのなかのものがたり」で皆さんが担当されていたパートのフロウと似てますよね。

高野:私も似てるなあと思いました。それぞれのテイストも年齢感も全然違うはずなのに、私はわりとニュートラルな感じで、りえりーはちょっと弾んでいて、がっきゅ(長久)は大人っぽくて。きっと三浦さんの中では、それぞれの得意な担当があるのかなあって思いました。

高橋:私たちの声質を見抜いているのかな? 気になる。

長久:だって私、二人がめっちゃかわいい声だったから、最初はそれに合わせてかわいい声で歌ったのに、三浦さんに「長久さん、ぶりっ子はしなくていいです」って言われた(笑)。

高橋:アハハ(笑)。でもすごくいいバランスになったと思います。

 「進化論」だから、「進化」はしてないかもしれない(笑)

ーーその他の新曲についてもお話を聞いていきますね。「渇望のジレンマ」は、既存曲だと「予め失われた僕らのバラッド」などからの流れを感じさせるメタリックなサウンドで、血沸き肉躍るアニソンの系譜を感じさせる曲です。イヤホンズはこういったタイプの曲もわりと歌ってますよね。

高橋:たしかに。イヤホンズのこういう攻めた曲はサビの音が本当に高くて、キーがめちゃくちゃ高いんですよね。この曲、本当はもっと声に合わせやすいキーがあったはずなんですけど、プロデューサーが「もっと上げよう上げよう」って言ったそうで(笑)。

長久:めちゃくちゃ恨みがましいこと言ってる(笑)。

高橋:私はたぶん3人のなかで一番高い音が出ないの!(笑)。でも、サビの強い歌詞を噛み砕いて表現したり、楽曲に負けないように歌うためには、地声で出したい! っていう思いもありまして。そんななか、このサビを魂のおもむくまま歌うのは、なかなか大変でした……。

高野:苦労したんだね(笑)。

長久:私は個人的に、まりんかが歌う2サビの一番最初のパート、〈絶望に〉のところが、めっっっちゃ好きです!

高橋:たしかにここ、いいよね。

長久:めっちゃいいよね! 魂の底から〈絶望に〉って言ってる感じが伝わってきて、ものすごくソウルボイスだなと思って。

高野:え〜、ありがとう。この曲を作曲してくださった月蝕會議のエンドウ.さんがレコーディングに立ち会ってくださったんですけど、エンドウ.さんはOKと言ってくださっていたのに、私は「ここの〈絶望に〉は録り直したいです」と言って、何回か録ってもらったんです。

長久:そうだったんだ。

高野:それまでのサビのパートは3人で歌っているのに、ここのパートで突然私だけになっちゃうんですよ。それまで3人で歌っていた勢いとかかっこよさを、私の〈絶望に〉のせいで消したくないと思って、すごく不安で。なので何回も録り直させてもらったんです。この曲は「予め失われた僕らのバラッド」に続くような楽曲という意味合いでも、「予め〜」で得た「イヤホンズかっこいい!」というイメージとか熱量を消したくなくて。だから、この部分でまた「イヤホンズかっこいい!」と思ってもらえたらいいなあと思います。

ーー「わがままなアレゴリー」は2018年に発表した比較的最近の曲ですが、今回のアルバムでは「わがままなアレゴリー!!!」として新調されました。基本アカペラで構成されているので、今までの楽曲以上に、お三方の歌声の相性がダイレクトに伝わってくるものになったのかなと。

高野:うれしい! 私たちは以前からずっと、アカペラとクラップの曲がほしいと言っていたんですよ。でも「じゃあ誰が作るんだ?」とか「どうやって作るんだ?」というのはプロデューサーに任せるしかなかったので。そんななかで、やっとできたのがこの曲になります。

長久:主線の歌よりも、コーラスのほうが2〜3倍時間がかかりました(笑)。

高野:わかる! 何層も何層も重ねたもんね。

高橋:楽譜の量がすごいうえに、縦7行になっていて……。みんなで手分けして歌ったんですけど、それでも大変でした。

高野:コーラスが6線あるっていうことだもんね。

長久:逆にディレクターさんが「このパート、もう録ったっけ?」ってなって、その確認作業のほうが大変そうなぐらいでした(笑)。

高野:ただ、やった甲斐はあったと思うぐらい大好きな楽曲に仕上がりました。

ーーレコーディングの手順は? バラバラに録っていったんですか?

高野:これは誰が最初に録ったんだっけ?

長久:りえりーじゃない?

高野:あっ、そうだ、りえりーだ! たしかに私はりえりーの歌を聴きながら歌った。

長久:私は最後だったので、みんなが録り残したパートがないかを確認したうえで、残っていたパートは全部私が歌いました(笑)。

高橋:えー、ありがとう!

高野:これはイヤホンズの楽曲あるあるなんですけど、「別人になりきってコーラスを入れてください」っていうことがよくあるんです。りえりーはちょっと低めの男の人っぽいボイスが多くて、私はデスボイスみたいに歪んだ声のコーラスを入れることが多くて。がっきゅは?

長久:私は1オクターブ上とか、高い音で綺麗な音を出してください、って言われることが多い。

高野:だからこういうゴスペル風の曲とか、コーラスの声をたくさん重ねたいときは、それぞれが何人かを演じることが多くて。なのでこの曲はがっきゅがたくさんいると思います(笑)。ありがとう!

長久:でも、これがもし私じゃなくて別の誰かが最後に歌ったとしても、その子が帳尻を合わせるので。

高橋:いつも誰かが合わせてくれてる(笑)。

高野:支え合ってるんだよね。

ーー全員がその対応を出来るというのはすごいですよね。

長久:たしかに。でも私たちの中ではそれが普通になってましたね。

ーー「循環謳歌」も皆さんの歌声を何重にも重ね合わせた合唱曲のような作りになっていますが、この曲はアルバムの【初回限定 進化の過程盤】に収録される二つの新曲「忘却」と「再生」を合体させたものなんですよね?

高橋:はい。Aの楽譜とBの楽譜があって。

長久:しかも、普通ならAパートだったらAパートを何回か録って、その中から一番良いテイクをそれぞれ提出して、楽曲にまとめるんですけど、今回は3人が両方の楽曲をそれぞれ4パターンずつ歌っているので、全部で12人が歌っている感じになっています。なおかつ、あまりハマっていなかったテイクも、味ということでそのまま使っていて。最初はちょっと怖かったよね?

高橋:いや、がっきゅからその話を聞いたから、私は4線全部どこを取っても大丈夫なように集中しました(笑)。あと、よく聴いていただくとわかるかもしれないですけど、歌詞の小節ごとに、メインの声が微妙に変わるんですよね。合唱中にマイクを向けている相手が変わっていくような感じになっていて。なので「このパートが目立つ」という部分は、よりぐっと気合いを入れて歌ってみたりしました。

ーーしかも「忘却」と「再生」はメロディや歌詞の内容が対照的な作りになっていて。

高橋:しかも歌詞は真逆のことを言っている瞬間もあるんですよね。サビの〈いつまでも消えはしないから〉と〈また消えてく〉というところから重なっていく感じとか。

ーー「忘却」と「再生」を合わせた完成版の「循環謳歌」を聴いてみてどうでしたか?

高野:卒業式を思い出しました(笑)。学校でみんなで歌っている、別に音を外しててもいいし、自分の想いのままに歌うのだ! っていう気持ちというか。一人4線録ったので、その分の気持ちも重なってますし、音の厚みもあって、聴いている人が懐かしい気持ちになるような曲になったんじゃないかなと思います。

長久:この曲、ライブでやるときは(「忘却」パートと「再生」パートの)どっちを覚えるんだろう?

ーーこれ、3人だけでライブで再現できるんですか?

高野:そうなんですよね。

長久:だから、もうどっちかのパートはファンのみなさんに歌ってもらうしかないっていう(笑)。

高橋:みんなで歌いたいなあ、この曲。楽譜を配布して、学校とかで歌ってほしい。

高野:ねえ。合唱したい!

ーーさらに今作には、初期の楽曲「耳の中へ」「背中のWING」を、月蝕會議がリアレンジし、レコーディングし直した新バージョン「耳の中へ!!!」「背中のWING!!!」を収録。まさに「音楽の進化論」を体現した曲になりましたが、レコーディングの際には5年前の自分たちの歌を意識したりしましたか?

高野:以前に録った「耳の中へ」は完全に(『それが声優!』の)キャラクターとして歌った曲だったので、それを意識して比較するというよりかは、今の私たちが歌う「耳の中へ」ということを意識しながら、フラットな気持ちで歌わせてもらいました。バックの音のアレンジが大きく変わったので、そこでより「大人のポップとは?」という部分を意識して歌わせていただいて。

高橋:私も完全に100%、今の自分として歌いましたね。『それが声優!』のときは自分自身をミックスすることは一切なく、本編で曲が流れるシーンというのを意識して歌っていて。それと違って今回は自分として歌ってみたというのもあるから、「5年間の成長を残そう!」という気持ちを作らずともこうなったという感覚が強くて。その変化は、5年という年数がそうさせたんだと思います。

長久:「耳の中へ」と「背中のWING」を歌った当時の私たちは、まだピヨピヨの新人声優だったので、キャラクターソングとして必死に歌っていて。当時の曲を改めて聴き直すと、〈耳の中へ 会いに行きます〉という歌詞のところも「会いに行かせてくださいっ!」っていうイメージで歌っていたのかなと思うんですけど、今回の「耳の中へ!!!」は「会いに行かせていただきますね」っていう、慈愛に満ちたというか、余裕のある感じに自然となっていて。それを聴いたときに「もしかして、これが進化論?」って思いました(笑)。私は今回のアルバムだと「耳の中へ!!!」「背中のWING!!!」が一番進化論を感じたかもしれない。

高野:私たち的にも「背中のWING!!!」はエモかったよね。ここで歌い直させてもらえるんだっていう。

高橋:エモ〜い!

高野:今までライブで歌わせてもらう機会はあまりなかったんですけど、このアルバムを経て、もっと歌っていきたいなあと思う曲になりました。

ーーまさに5年の成長を刻んだ作品になりましたが、ご自身としては今回のアルバムを通して、どんな進化を見せることができたと感じますか?

高橋:「進化論」だから、「進化」はしてないかもしれない(笑)。このアルバムを受け取った方に、「ここが変わったね」とか「こう聴こえたよ」と思ってもらうことで、それが「進化」だったということに、数年経ってから思えるのかなっていう。なので「ここが進化したので聴いてください!」っていうのはまだ早いのかな。

長久:私たちからすると、「とりあえず今の私たちの歌はこれです!」っていうものをお見せして、その変化とか進化をファンの方に委ねる、っていう感じですね。自分たちの中に、進化したという実感はあまりないので……。

高橋:そうそう、実感がない。

高野:でも、この5年で曲の種類やジャンルが増えて、それこそラップを含めたような楽曲も、これまでのことがなかったら出来なかったと思うので、今回のアルバムは集大成みたいなイメージはあって。私たちがこの5年のうちに積んできた経験を詰め込んでいるので、皆さんが聴いて「進化論」と納得してもらえるようなものになっていたらと思います。

■リリース情報
『Theory of evolution』
発売:2020年7月22日(水)
【初回限定 進化の過程盤(CD+CD)】
価格:¥4,000(税抜)

【通常盤(CD)】
価格;¥2,500(税抜)

オフィシャルサイト

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