オーストラリアの女流監督ジェニファー・ケントの凄まじい復讐譚。舞台は英国の流刑地時代のタスマニアという異色っぷりで、アイルランド人のヒロインが復讐に走る理由も悲し過ぎるが、それ以上に驚くのは彼女がその過程の中で目撃＆体験する当時のタスマニアの現実。 彼女自身、旅の案内人として先住民のアボリジニの青年を雇うのだが、ふたりが目にするのは、アボリジニが英国人たちによって受ける残忍すぎる仕打ちの数々なのだ。そのダークな部分をケントは容赦なく描き、単なる復讐譚からひとつ上のレベル、もっと深い人間ドラマにまで昇華させている。人種の違う男女を旅の仲間にしたことで“希望”を感じさせてくれるのが唯一の救いだった。