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『麒麟がくる』染谷将太演じる織田信長が猛威を振るう  「蘭奢待切り取り事件」のエピソードも

リアルサウンド

20/12/21(月) 6:00

 とうとう室町幕府は幕を閉じる。NHK大河ドラマ『麒麟がくる』第37回の「信長公と蘭奢待」では、義昭(滝藤賢一)を京から追放した信長(染谷将太)が、権力の象徴ともいえる蘭奢待(らんじゃたい)の切り取りを行った。

 信長が渡した「十七カ条の異見書」のせいで義昭の怒りは頂点に達する。とうとう義昭は大名を集めて兵を挙げるのだった。なかでも頼みの綱とされていたのが武田信玄(石橋凌)だが、どういうわけか京に向かう途中で兵を引き返してしまう。さらには朝倉・浅井も姿を見せず、窮地に立たされた義昭は木下藤吉郎(佐々木蔵之介)の手により捕らわれの身となってしまった。信長を主君に選んだ光秀(長谷川博己)は、みじめな姿で引き立てられていく義昭を見送ることしかできない。光秀が菊丸(岡村隆史)からの伝言で、信玄が陣中で病死していたと知るのはまだ先のことであった。

 義昭と信長の対立により袂を分かつことになるのが、三淵藤英(谷原章介)と細川藤孝(眞島秀和)の兄弟である。実の兄弟でありながら2人の姓が異なるのは、弟の藤孝が別の家に養子に出されたため。かつては力を合わせ、足利将軍家再興に取り組んでいたのだが、いつしか藤孝は、将軍を見捨てて信長の家臣に転身していた。そして、それを三淵が知ったのは、敗戦の後のことである。

 光秀と共に信長側に座った藤孝の姿に、三淵は「いつから裏切り者になり果てた!」と怒りをあらわにする。藤孝が「力を合わせ淀城を落とそう」と呼びかけるものの、三淵は無念の涙を流すばかり。三淵が考えていたのは、今もただひとつ、義昭の命が助かることだけだったのだ。その後、信長の言うことに時々ついていけないと漏らす光秀に“良い家臣”について説く三淵。この言葉からは、義昭を守れなかったことで、三淵がどれほどやりきれない思いを抱えていたのかが伝わってくる。三淵を演じた谷原章介は、必死に涙を堪えるも溢れ出る想いと突きつけた拳から、三淵の悔しさを表現した。

 その後、織田軍は勢いを増し、朝倉本拠地の一乗谷に火を放つ。追い詰められた朝倉義景(ユースケ・サンタマリア)は、朝倉景鏡(手塚とおる)の裏切りに合い自害。約百年続いた越前の名門朝倉家は、ここに滅びる。信長は、同年の内に小谷城の浅井家を攻め落とし、滅亡させる。240年続いた室町幕府はついに幕を閉じたのだった。

 信長による新しき時代が始まろうとしていた。朝倉・浅井を討ち、義昭を京から追放した信長は、たいそう満足な様子で蘭奢待の名を口にする。最初は「今の儂は蘭奢待を拝見できると思うか?」と謙虚だったのに、終いには、戦の褒美として帝(坂東玉三郎)に切り取りの許可を求めるまでに。

 蘭奢待とは、東大寺正倉院に納められている香木のことである。様々な薬効を有するともいわれるが、何よりも重要なのは、これが天下人としての権威付けの意味合いを持つということだ。蘭奢待は目前に運び出され、信長はその香に恍惚とした表情を浮かべる。上機嫌で木片の半分を「帝に差し上げよう」と言い出す始末。だが帝は、届いた蘭奢待をこっそりと信長と対立関係の毛利輝元に送ろうとしていた。これまでに金銭的な援助をしたり、弟・覚恕(春風亭小朝)を京から排除したりと、帝に必要な存在だった信長だが、今後も必要であり続けることはできるのだろうか。すでに帝と面会を果たし、心酔している様子の光秀との今後の関係性も気になるところだ。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
大河ドラマ『麒麟がくる』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアムにて、毎週日曜18:00~放送
BS4Kにて、毎週日曜9:00~放送
主演:長谷川博己
作:池端俊策
語り:市川海老蔵
音楽:ジョン・グラム
制作統括:落合将、藤並英樹
プロデューサー:中野亮平
演出:大原拓、一色隆司、佐々木善春、深川貴志
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/kirin/
公式Twitter:@nhk_kirin

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