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『新感染』続編は前作とは完全に別モノ!? 初映像から入り混じる期待と不安

リアルサウンド

20/4/10(金) 12:00

 これ大丈夫なんですか!? 1年に何本か、不安と期待が半々、バクチのような気持ちになる予告編が登場するものだ。何の話かといえば、先日公開された『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)の続編『Peninsula(英題)』(2020年)の話である。

参考:菊地成孔の『新感染 ファイナル・エクスプレス』評:国土が日本の半分の国。での「特急内ゾンビ映画」その息苦しいまでの息苦しさと上品な斬新さ

 『新感染』といえば、韓国産の超大作ゾンビ映画だ。ソウル発プサン行きの高速鉄道の中に、全力疾走×即感染タイプのゾンビが駆け込み乗車でさぁ大変。この1アイディアをベースに、濃厚な人間模様にノンストップのアクション、そしてスリル・ショック・サスペンスがテンコ盛りの傑作だった。とりわけ日常が徐々にブッ壊れていくゾクゾク感と、コン・ユ演じる自己中心的な主人公が、ゾンビとの戦いを経て、娘への愛を取り戻す姿は感動的。クライマックスに用意された号泣シーンの連打は、今でも語り草となっている。

 そんな完成された作品だからこそ、続編を作ると聞いたとき、私は正直に言って不安になった。「何をやっても蛇足になるのではないか?」と思えてならなかったのだ。そんなところに、コレである。

 これ大丈夫なんですか!? あまりにも別モノである。時はまさに世紀末といった風景に、よどんだ街角で銃を構えるカン・ドンウォン。かと思ったら、謎のゾンビコロシアムにカーチェイスに銃撃戦。完全にジャンルが変わっている。かなり思い切った方針転換だ。これが吉と出るか凶と出るかは……正直、前作が大好きだった人間としては不安もある。思えば、きっと1986年のSFホラーファンもこういう気持ちだったのだろう。

 「宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない」これはSFホラーの古典『エイリアン』(1979年)の日本版キャッチコピーだ。その数年後、同作には続編ができるわけだが、そのポスターには「今度は戦争だ!」と、景気の良すぎる惹句が踊った。未知の怪物ゼノモーフの恐怖を描いた1作目から一転して、『2』は宇宙海兵隊とゼノモーフ軍団の大乱戦をアクション大作になっていたのである。しかし、結果的に『2』は『1』に勝るとも劣らない、後世に語り継がれる傑作となった。『Peninsula』も同じ道を辿れる可能性がある。制作陣は、そういう賭けに出たのだろう。

 ちなみに監督のヨン・サンホは『Peninsula』について、『ランド・オブ・ザ・デッド』(2005年)や『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)と並べて、日本の漫画『ドラゴン・ヘッド』と『AKIRA』から影響を受けた作品だと語っている(参考:IndieWire|‘Train to Busan’ Director Teases Sequel ‘Peninsula,’ Inspired by ‘Mad Max’ and ‘Akira’)。ここで引っかかるのは『AKIRA』だ。大災害の中で高校生がサバイバルをする『ドラゴン・ヘッド』からの影響は、予告を見た感じで何となく分かる。しかし『AKIRA』は分からない。ひょっとすると次の予告編にはサイキック要素まで入るのだろうか? ゾンビ、世紀末、銃撃戦、カーチェイス、おまけにサイキックまで入ってくると、これはもう過剰の極みであろう。楽しみな反面、やはり心配になる。あまりに大ネタを盛りすぎた結果、失敗した作品はたくさんあるからだ。しかし一方で、『テレビ千鳥』(テレビ朝日系)の「DAIGO’Sキッチン」理論で美味くなる可能性もあるので……やはり期待も高まる。そして邦題が『新感染2 ファイナル・ミッション』になる気がしてならないが、ともかく今は本作と笑顔で向き合えるように、コロナが1日も早く終息することを祈りたい。(加藤よしき)

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