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DEAN FUJIOKA×二宮健は“歴史の開拓者”となる? 「Echo」などのMVから感じた類い稀な感性

リアルサウンド

19/2/28(木) 7:00

 国際派俳優として活躍する一方、ミュージシャンとしてもハイクオリティな楽曲を生み出し続けているDEAN FUJIOKA(以下:DEAN)。1月30日リリースのアルバム『History In The Making』は、彼が“歴史の開拓者”として目指すような、力強いアーティスト像を象徴する一枚となった。

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 彼の音楽活動を語る上で欠かせないのが、そのグローバルな感性から生み出される数々のMV作品だ。なかでも、2017年12月にEPリリースされた「Let it snow!」以降は、岡崎京子原作映画『チワワちゃん』の監督としても注目を集めた映像作家・二宮健とのタッグ作に。DEANと二宮はこれまでに計4本のMVを制作しており、そのすべてで予想の斜め上をいく展開を目撃させられる。本稿では、各作品の特徴を紹介しながら、2人の関係性について考えてみたい。

 「Let it snow!」は、EDMのサブジャンルであるフューチャーベースを基軸に、1980年代歌謡の情緒溢れるサックスの音色を織り交ぜた楽曲。そのサウンドを意識してか、DEANがMVで着用する純白のスーツも、古き良き時代を思い起こさせるものに。また、同作で初監督を務めた二宮は、DEANの姿を“歌って踊って滑り出すバブリーなスーパースター”と表現(引用:DEAN FUJIOKA、ドラマ主題歌MVで歌って踊って滑り出す(動画あり)/音楽ナタリー)。その異名通り、DEANは劇中で1980年代風の振り付けをリアレンジしたダンスを披露するほか、最後には優雅にローラースケートを楽しんでいる。

 次作「Echo」MVでは、DEANがバンパイアに扮して、最上もが演じる女性の蘇生を試みる。その終盤、彼は復活した最上を人形のように操るも、その動きは極めて歪なものに。最後には、自らの手で彼女を再び葬ってしまう。同作で注目されるのが、最上の復活までの過程だ。ここでは、DEANが何世紀もの時間を駆け抜ける様子を、複数回にわたりルームランナーの上を走ることで演出。その背景に、CGで都会の夜景を差し込むことで時間の流れを表現している。

 また、「History Maker ~HITM Ver.~」MVは、原曲リリースから約2年の時を経て制作。同作は地下鉄の車内を舞台に、DEANの想像力が爆発した一作に仕上がっている。その冒頭、エキゾチックな少女に自身のボールペンを拾い去られたDEAN。彼女を追う最中、気付けば電飾で彩られたファンタジックな世界に誘われる。さらに、MV後半では宇宙服を纏った絵面の強いDEANも登場し、一瞬たりとも目を離せない展開が待ち受けている。楽曲が佳境に差し掛かるにつれて、ドラムもビルドアップを開始。その高揚感を象徴するように、前述した“宇宙のDEAN”も高速移動を開始するほか、J-POPのサビにあたるドロップ直前には、“地下鉄のDEAN”が少女から件のボールペンを受け取る。そして次の瞬間、彼は何かを自覚したかのように指揮棒を振り下げ、オーケストラを従えながら物語は大団円で幕を閉じる。

 このパートで特筆すべきは、サウンドと映像における密接な“繋がり”だ。前述した通り、楽曲最大の聴きどころで登場した“指揮者のDEAN”。開放感あふれるサウンドと、彼の躍動感みなぎる動きに、カタルシスさえ感じたリスナーもいることだろう。二宮は以前、映画『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ』のインタビューで「映像に対して音楽をどうハメていくかということに対する探究心が強いので、人物の動きやシーンの移り変わりとも気持ちよく同期するようにしました」(引用:二宮健監督が振り返る、初の商業映画を撮って感じたこと 「スタイルを構築しなければいけない」)と語っていた。彼の音楽に対する強い探究心は、DEANとのMV制作でも大きく発揮されているようだ。

 また、ミュージカルテイストの「History Maker ~HITM Ver.~」MVに代表されるように、すべてのMVでストーリー展開が予想できないことにも言及したい。ここまで紹介した“ローラースケートのDEAN”や“ルームランナーのDEAN”などを思い返せば、DEANと二宮が脚本家としても、類い稀な感性を備えていると納得してしまうはずだ。

 DEANは、「Echo」MV制作時に「ミュージック・ビデオって正直何をやっても成立するわけですよね。一見、全く関係ないことをやっていたとしても、その外し方の妙で深いダブル・ミーニング、トリプル・ミーニングも生まれたりもするし」(引用:DEAN FUJIOKAと映画監督・二宮健が対談。2人の意外な共通点とMV“Echo”の制作秘話/Qetic)と述べている。その言葉を踏まえるに、各シーン間でわずかにストーリーを飛躍させていることには、視聴者に“想像の余白”を与える意図があるのかもしれない。そんな独創性と想像力を兼ね備えたミスクチャーなMVは、彼自身やその音楽と同様にミスクチャーな映像ジャンル=“DEAN FUJIOKA”と言わしめるものだ。

 そんなDEANと二宮が新境地に辿り着いたのが、新曲「Maybe Tomorrow」MVである。同楽曲は、TVドラマ『僕の初恋をキミに捧ぐ』(テレビ朝日系)主題歌。映像内では、栗原類とアヤカ・ウィルソンが、互いを想い合う男女を演じている。DEANは同楽曲の制作を振り返り、「これは夢なのか、現実の未来なのか、もしくは死んでしまった後の世界なのかわからないような天国感を作りたい」(引用:DEAN FUJIOKAが語る、3年間の歩みと変化「自分の音楽の未来を作っていきたい」)とコメント。ドラマの物語に寄り添った歌詞はもちろん、映像内でも教会などから栗原らを見守るなど、一歩引いたポジションにいる。

 さて、同MVを視聴してみて、どこか不思議な感覚を覚えることはないだろうか。劇中では、栗原らの仲睦まじい様子を映し出す一方、時折に女性が悲しげな表情で青年の靴を運ぶ姿も確認できる。前述した感覚はおそらく、映像内の時間軸が入り組んでいることに由来するのだろう。実際に、青年の脱がされた靴が彼の死去を暗示しているのはもちろん、その生前と死後の時間が不規則に描写されている。これこそが作品に漂う“浮遊感”の正体であり、DEANの目指した“天国感”に繋がっているのかもしれない。何より、2人の男女が白骨化する衝撃のラストシーンを含め、王道な物語設定ながらも一筋縄では行かない展開には、DEANと二宮が“ネクストレベル”に突入したことを実感させられる。

 前掲のインタビューにて、MV制作の協力者を「固定概念に囚われない自由な精神で、一緒に冒険をしてくれるパートナーを探している感じ」と定義していたDEAN。彼にとって、二宮は最良のクリエイティブパートナーに他ならないだろう。そんな2人は、今もまた“新しい歴史の1ページ”を作る準備をしているに違いない。(文=青木皓太)

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