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鈍い出足となった『ルパン三世 THE FIRST』 しかし、日本の3DCG作品の未来は明るい!?

リアルサウンド

19/12/12(木) 19:00

 先週末の映画動員ランキングは、『アナと雪の女王2』が土日2日間で動員77万6000人、興収10億3300万円をあげて、3週連続で1位を獲得した。12月8日までの17日間で動員466万人、興収60億円を突破。年内にも興収100億円を突破するのも確実な情勢となっている。2位に初登場したのは山崎貴が監督・脚本を担当した3DCG作品『ルパン三世 THE FIRST』。土日2日間の動員は17万7000人、興収は2億4500万円。この成績は、今年8月に公開されて最終興収約14億円に終わった、同じ東宝作品、山崎貴作品(こちらでは総監督)、同じ3DCG作品の『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』とのオープニング週末成績の興収比で79%という数字。『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』とは違って作品の評判は決して悪くない『ルパン三世 THE FIRST』だが、2014年に『STAND BY ME ドラえもん』という成功例はあったものの、人気フランチャイズの3DCG化作品という近年東宝がご執心の企画自体が、もはや国内の観客の潜在的な要求をそれほど喚起するものではないのかもしれない。

参考:【ネタバレあり】『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』論争巻き起こる作品構造を読み解く

 さて、2019年の興行収入で現在のところトップに立っているのは『天気の子』。同作は12月初頭の段階で興収140億円を突破して以降も公開中だが、さすがにここからの上乗せは微々たるものとなるだろう。今後は、『アナと雪の女王2』が『天気の子』を超えるかに注目が集まることになる。ちなみに、12月10日にTwitter Data、及びTwitter Japanが発表した「今年最もツイートされた映画作品」で、『天気の子』は全世界で6位(日本は当然のように1位)になった。

 12月に入ってからもヨーロッパ各国で続々と公開が始まっている『天気の子』の世界興行。しかし、気になるのは、10月30日に公開された韓国、11月1日に公開された中国と、新海誠監督の前作『君の名は。』の世界興行においていずれも大きな結果を残したアジアの映画大国のマーケットで、前作を大きく下回る記録に終わりそうなことだ。

 それぞれの国の興行分析によると、より興味深い事実が浮き上がってくる。まず韓国に関しては、日韓関係の悪化を受けてそもそも公開が予定よりも遅れた上に、韓国国内のマスメディアでの宣伝が思うように展開できなかったことが大きな要因として挙げられている。政治における争いとは別に、特に若い世代においては互いの国のカルチャーに強い関心が寄せられている、というアングルで語られることが多い現在の日韓関係だが、国家と国民の中間に位置するメディアのプロモーションに関しては、現行政府からの締め付けがかなり厳しいというのが現実のようだ。

 中国に関して驚かされたのは、2010年代に入ってから国内に大型シネコンが普及して急速に映画マーケットが拡大した後、ここにきて2Dアニメそのものに客離れが起こっているという分析(https://tech.ifeng.com/c/7rzvQg9c50T)だ。そういえば、2015年に中国で公開された『STAND BY ME ドラえもん』は、日本国内の興収84億円を超える5.32億元(85.1億円)を記録したことで話題になった。それをふまえれば、中国の観客の3DCG作品好きは今に始まったことではないことがわかるが、近年ハリウッドのアニメーション作品における主流となっている3DCG作品にすっかり観客が慣れ親しんできたことで、その傾向はさらに進行しているようなのだ。

 そう考えると、本稿で先に否定的な見解を述べた東宝の3DCG作品も、中国のマーケットを見据えて、今後のシリーズ展開や技術革新への布石としてとらえるべきなのかもしれない。ちょうど本日(12月12日)、東宝は『STAND BY ME ドラえもん』の続編を来年8月7日に国内で公開することを発表した。その視線の先には、前作の中国公開から5年経ってさらに成熟した中国のマーケットがあることは間違いない。(宇野維正)

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