Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

雨のパレード、バンドの開放的なモードを明確に印象付けたライブツアーを振り返る

リアルサウンド

19/9/13(金) 14:00

 今年1月にバンド編成が変わり、蔦谷好位置を共同プロデューサーに迎えたシングル「Ahead Ahead」と、リリース当日の4月24日に恵比寿LIQUIDROOMで開催されたワンマンライブで新体制での活動を本格的にスタートさせた雨のパレード。8月28日の大阪BIGCATからスタートし、全4公演が行われた『SUMMER TOUR “Summer Time Magic”』は、3人編成になってから初のツアーとなった。

 僕はリキッドルームには行けなかったので、この日初めて新体制でのライブを観たのだが、新しいベーシストを入れず、メンバーそれぞれが複数の楽器を担当し、同期を用いて展開されたステージは、日本のバンドシーンにおける雨のパレードの特異性を分かりやすく浮かび上がらせていたように思う。「ベースレス」という編成は日本のバンドシーンにおいてまだまだ珍しいが、彼らが時代感を共有する海外のニュージェネレーションたちの多くはすでに定型のバンド編成にこだわっておらず、ベースレスも決して珍しくはない。雨のパレードはこれまでもシンセやサンプリングパッドを積極的に用いることで、現代的なバンド像を提示してきたが、3人編成でいわゆる邦ロックの大型フェスなどに出演することによって、さらに新たな価値観を提示することになるはずだ。

 真っ暗なステージにメンバー3人が登場し、ステージ上手に設置されたスクリーンを使った映像演出とともに、アンビエントなサウンドが場内を包むと、大澤実音穂(Dr)の叩き出すリズムに合わせ、福永浩平(Vo)がフロアタムを思いっ切り叩いて、1曲目の「Ahead Ahead」がスタート。アフリカンなビートと四つ打ちを組み合わせ、雄大なサウンドスケープを立ち上げるフロアアンセムであり、オーディエンスと一緒にジャンプをしたり、クラップを求めたりと、そのステージングは実に開放的だ。

 これまでの雨のパレードのライブでは、ポップスとしての日本語の歌と、海外由来のサウンド/ビートメイキングを組み合わせる難しさを感じることもあったが、英語も交えた「Ahead Ahead」はそこがバッチリかみ合っていて、「シンガロングできる雨パレ」というのははっきりと新しい。パフォーマンス重視のバンドシーンに対して、サウンドデザインを作り込むことで風穴を開けたバンドが、その成果をもって、今度は自分たちがフィジカルなパフォーマンスを行い、さらに上へと突き抜けようとする。そんな覚悟が楽曲とパフォーマンス双方から感じられた。

 イントロのベースフレーズが印象的な「new place」では、そのフレーズ自体がもともと反復を基調としたシーケンス的なものということもあり、曲が始まると3人の生み出す音に一気に引き込まれた。これまではクリックを使わないからこその生のバンドサウンドが魅力になっていて、初期曲の「new place」はその生感が特に際立つ曲だったが、R&Bやハウスに傾倒していった近年の楽曲の場合は、やはり同期を使った方がしっくりくる。オルタナティブなギターサウンドの「Horizon」、シンセポップな「Shoes」と、山﨑康介(Gt&Syn)が対照的な役割を担う2曲を経て、同期のコーラスによって歌の立体感が増した「You」が熱く届けられた。

 ここまでの福永は、歌い方にしろ、全身を激しく揺らすパフォーマンスにしろ、とにかくエモーショナルで、先日の『SUMMER SONIC 2019』で観たThe 1975のマシュー・ヒーリーを連想したりも。「You」は「誰かを救う歌を書きたい」という想いで書かれたという楽曲だが、デジタルな社会の中における苦悩や不安を描き出し、そこからの解放を生々しいパフォーマンスで表現するという意味において、雨のパレードとThe 1975にはリンクがあることを改めて感じさせた。

 山﨑がビブラフォン風の音色で印象的なフレーズを加えた「Reason of Black Color」からの中盤では、薄暗い照明と映像演出を基調にディープな音世界を作り出し、「Hwyl」までを終えると、今度は一転アコースティックコーナーへ。レーベルの先輩である永積タカシのSUPER BUTTER DOG時代の名曲「サヨナラCOLOR」と、くじ引きで選ばれた「MARCH」が演奏されたが、〈サヨナラからはじまることがたくさんあるんだよ〉と歌う「サヨナラCOLOR」と、「卒業」をテーマに、〈また季節巡って ありふれた別れが訪れた〉と歌う「MARCH」が、新体制初のツアーで続けて演奏されるというのは、不思議な巡り合わせだったように思う。

 Dos Monosをゲストに迎えてパーティー感たっぷりに盛り上げた「Hometown」からの後半戦では、ボコーダーを交えて生まれ変わった「Dive」、「俺ら史上最高に踊れるソングかもしれない」と言って演奏された「Count me out」でダンスフロアを作り上げ、最後に披露されたのが7月に配信で発表された最新曲「Summer Time Magic」。BPM110ほどの雨パレ流トロピカルハウスでは大合唱が起こり、「Ahead Ahead」同様に、現在のバンドの開かれたモードを明確に印象付けていた。

 アンコールでは、9月25日に配信リリースが決定しているクワイア風のコーラスを取り入れたミディアムバラードの新曲「Story」が披露され、ラストは「Tokyo」でフィニッシュ。全編を通じて3人仕様にリモデルされた楽曲にワクワクさせられたが、アルバム一枚分の新曲が届けられる頃には、本当の意味で生まれ変わったバンドの姿が見れるはず。そんな手応えを感じさせる充実のライブだった。

(写真=八木咲)

■金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『ナタリー』『Real Sound』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』『bounce』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。

雨のパレード オフィシャルサイト

アプリで読む