Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

川島明、原田泰造、澤部佑……今期ドラマを引き締める、“芸人役者”たちの活躍

リアルサウンド

19/9/6(金) 6:00

 お笑い芸人は、今も昔も映画やドラマに出演し続けている。そこは漫才やコントとは別の、もう一つの舞台といっても過言ではない。明石家さんまが、『男女7人夏物語』(TBS/1986年)、『空から降る一億の星』(フジテレビ系/2002年)といった多くのヒットドラマに出演していたのは有名であり、近年でも片桐仁(ラーメンズ)が『あなたの番です』(日本テレビ)を始め、『99.9 -刑事専門弁護士-』(TBS/2016年)など多くの作品に出演し、塚地武雅(ドランクドラゴン)が朝ドラ、大河、民放とバイプレイヤーとして欠かせない存在に成長している。

参考:麒麟・川島明が“理想の上司”に 『なつぞら』東洋動画を支える低音癒やしボイス

■『なつぞら』川島明(麒麟)
 今期ドラマにおいても、片桐だけでなく、多くの作品に芸人が出演している。中でも出世頭とも言えるのが、朝ドラ『なつぞら』(NHK総合)でアニメーター・下山克己を演じる川島明(麒麟)だろう。2007年公開の映画『パンティストッキングダイナマイト』では、監督と出演の両方を務め、2009年放送の朝ドラ『つばさ』にベッカム一郎として出演するなど、これまで出演歴が全くなかったわけではないが、そのほとんどが言わばちょい役。しかし、『なつぞら』ではメインキャストへの大抜擢を果たしている。

 下山が物語に初めて登場するのは序盤の第6週「なつよ、雪原に愛を叫べ」。東洋動画に見学としてやってくるなつ(広瀬すず)を温かく歓迎し、入社後も班のリーダーとして指揮を執り、作画監督も担当した凄腕のアニメーターだ。心優しい下山は、同じ東洋動画で働く茜(渡辺麻友)の心を射止め、結婚。第22週「なつよ、優しいわが子よ」では、東洋動画を円満退社し、マコプロダクションをアニメーションの新天地にしようと新たな挑戦を続けている。ひょうきんで明るく人を楽しませようとする性格も演じる川島にぴったり。それに加えて、印象的な低音ボイスも回を増すごとに安心感へと変わっていっていることに気づく。

 余談だが、一時期、川島が民放のバラエティ番組に出演する際、仮眠中に広瀬すずに起こされたというエピソードトークが定番に。『テレビ千鳥』(テレビ朝日系)では、第3週「なつよ、これが青春だ」にて、なつの通う十勝農業高校の先生役として出演したノブ(千鳥)と共演する回もあった。朝ドラという国民的ドラマということもあるが、他局で朝ドラ出演を話題にできるのは、芸人に許された特権でもあるように感じる。

■『サ道』原田泰造(ネプチューン)
 サウナブームのさらなる火付け役と言われているドラマ『サ道』(テレビ東京系)。その主演を張るのが、原田泰造(ネプチューン)だ。朝ドラと3作の大河、映画、ドラマと多くの主演作を持つ原田は、国民的認知を得ている芸人俳優の一人である。と同時に、原田はサウナ愛好家、通称サウナーからも一目置かれるほどの、生粋のサウナーとして認められている。『サ道』撮影前日はロケ場所のサウナに一人で前乗りし、必ず“ととのって”から撮影に臨むほどだ。

 『サ道』は、サウナの名所を1話ずつ巡っていく物語。テレ東の「ドラマ25」枠に通ずる丁寧な作品作り、「サウナ&カプセルホテル北欧」を始めとしたサウナーも納得の店舗選択、共感を覚えるサウナエピソードなど、ポイントを挙げ出せばキリがないが、『サ道』の一番の魅力は原田の素の表情ではないだろうか。サウナーは「サウナ、水風呂、休憩」を1セットと呼ぶ。あまりの気持ちよさに一種のトランス状態を味わうことを“ととのう”と言うが、中でも原田の“ととのった”表情が際立っていたのが、第6話で訪れる静岡の「サウナしきじ」だ。“サウナの聖地”と呼ばれるしきじは、駿河の美しい自然の中で育まれた天然水を使用しており、「水風呂の概念が変わる」とサウナーは口ぐちに話す。原田本人もしきじに魅了された一人。思わず声を上げてしまうまろやかな水風呂、そして3セットを終え、ととのった瞬間の表情は、サウナーである原田の心からの演技だ。

 『サ道』開始後、都内のあるサウナでは1日の最大入場者数が更新されるほど、本格的なサウナブームが来ていると話を聞く。同局の『孤独のグルメ』のように、原田続投でシリーズ化しないものかとすでに思い始めている。

■『だから私は推しました』澤部佑(ハライチ)
 「女オタ×地下アイドル」をテーマにしたドラマ『だから私は推しました』(NHK総合)は、「あの、推しって分かりますか?」というアラサー女子・遠藤愛(桜井ユキ)の一言から始まる。一見するとリア充OLが、ある日、地下アイドル「サニーサイドアップ」と出会い、オタク沼にハマっていく人生で一番暑い夏が、『だから私は推しました』では描かれる。愛が推すのが、親友のような、妹のような、子供のような分身、ある意味もう一人の自分と感じる、メンバーの栗本ハナ(白石聖)。彼女のために奮闘し、現場に通い、オタ仲間と反省するというリアルな二人三脚の日々は、全て過去の出来事として愛の口から話されていく。愛が「あの、推しって分かりますか?」というアイドルの説明をする相手が、刑事・聖護院実(澤部佑)だ。

 聖護院は、サニーサイドアップにまつわる、ある事件を捜査している。それは、ハナ推しのオタクで、ストーカー的な側面をもつ厄介・瓜田勝(笠原秀幸)が突き落とされた事件。その容疑をかけられているのが、愛だ。愛とハナをメインに物語は進んでいくが、始まりと終わりでインサートされる、言わばサスペンス要素を、聖護院による取り調べのシーンが担っている。

 放送前の会見で役作りについて「ほぼそのまま出ている」と話している澤部だが、『オトメン(乙男)』(フジテレビ/2009年)、『ガリレオ』(フジテレビ/2013年)、『ボク、運命の人です。』(日本テレビ/2017年)など多くの作品に出演し俳優としての経験を積んでいる。中でも、『オトメン(乙男)』の主演を務めた岡田将生とはクラスメイト役で共演し、そこから親友と呼べる仲にまで発展している。

 聖護院は、愛からアイドルの世界を教えられる立場だが、演じる澤部本人は、欅坂46の冠番組『欅って、書けない?』(テレビ東京系)のMCを約4年務めている。サニーサイドアップと欅坂46のグループの規模感は違うものの、アイドルへの理解という意味で、根底に流れている考え方は変わらない。1、2話を観た澤部は「こんなに揺さぶられるなんて」と感想を話していたが、主演の桜井ユキや白石聖よりもドラマに寄り添うことができるのが、澤部なのかもしれない。

 ほかにも、今期ドラマでは『ボイス 110緊急指令室』(日本テレビ系)に出演の木村祐一、大河ドラマ『いだてん』(NHK総合)に出演のじろう(シソンヌ)、片桐仁と同じく『あなたの番です』に出演している坪倉由幸(我が家)などがいる。芸人が出演するケースは様々だが、作品の中で何か一つ親和性のあるものが交わった時、ひときわ輝く存在へと昇華していくのだと感じる。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む