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森七菜×岡部大の甘酸っぱいラブストーリーが完結 『エール』裕一と音はすっかり“親”の顔に

リアルサウンド

20/9/18(金) 12:10

 新型コロナウイルスの影響で撮影一時休止という未曾有の事態を迎えたNHK連続テレビ小説『エール』。約2カ月半ぶりに再開となった第14週「弟子がやって来た!」では、夢追う若者の純愛がコミカルに、それでいて心温まる本作らしい演出で描かれた。まだまだ“元通り”と言える状況ではないが、お茶の間に朝ドラが帰ってきたことで微かな希望を感じた人もいたのではないだろうか。

 嫌味たらしい言い方ではあるが、廿日市(古田新太)から“大先生”と呼ばれるまでに作曲家として邁進した裕一(窪田正孝)。今週は、作曲家志望の五郎(岡部大)が古山家に弟子入りを志願しにやって来たところからスタートした。そして、同時期に文学の新人賞を受賞し、上京した音(二階堂ふみ)の妹・梅(森七菜)。夢追う2人は互いに呼応し合い、第68話でついに梅が五郎に告白。2人の恋が大きく進展するかと思いきや、五郎は自分の才能のなさに気づき、梅に何も相談せず古山家を出て行くことに決めた。

 初恋の相手に返事すらもらえず、梅は涙に暮れる。だが、三姉妹の中で一番しっかり者の彼女がそう簡単に諦めるわけがなかった。梅の決意が明らかになったのは、確執のある女流作家でかつての親友・幸文子(森田想)との対談。記者の前でも梅への敵意をむき出しにする文子の前でも、梅はもう狼狽えなかった。それは一番大切な存在である五郎に才能がある、人を愛しむ心があると認めてもらえたから。たとえ世間知らずでも、本当の自分を見てくれる誰かがいるという事実はそれだけで大きな自信になる。今後の方針を聞かれた梅は、「彼(五郎)は居場所を探しています。私がその居場所になりたい。自分らしくいられる豊橋にその人と帰ります」とはっきり前を向いて答えた。

「私たちの急務はただただ眼前の太陽を追いかけることではなく、自分らの内に高く太陽を掲げることだ」

 島崎藤村の小説『春を待ちつゝ』から引用されたこの言葉。これまで梅や五郎にとって、小説と音楽だけが太陽であり、その世界で才能を認めてもらえることが生きる術だったのだろう。けれどいつしか太陽には靄がかかり、2人は絶望した。同時に、追いかけるのではなく自分の空高くに掲げる太陽の存在に出会った五郎と梅。正体の分からない才能より、本当は五郎が認めた梅の人を慈しむ心や、梅が惹かれた五郎の真っ直ぐな優しさの方が尊いものだと気づいたのだ。

 そして、「私はあなたを必要としています。信じろ!」という梅の言葉に心動かされた五郎は、梅と共に豊橋へと向かった。作曲家にはなれずとも、馬具職人として岩城(吉原光夫)にうん十年認められなくとも、梅という太陽を掲げた五郎ならきっと居場所を見つけられるはずだ。

 五郎と梅の甘酸っぱいラブストーリーに、視聴者まで悶絶させた今週の『エール』。女優デビューからわずか3年の森七菜と、普段はお笑い芸人としてステージに立つ岡部大の、絶妙な間で繊細な心の奥を表現する演技力に圧巻されつつも、2人の初々しさがどこかに滲んでいた。そのわずかなリアリティが、まだまだ青くさい五郎と梅の姿を形づくったのだろう。

 そして、何より感慨深かったのは裕一と音の成長ぶり。梅の好きな人が五郎と分かった時、裕一が呟いた「いや~世の中には信じられないことが起きるもんだね」という一言は失礼極まりなかったが、2人を見守る裕一と音はすっかり親の顔をしていた。しかし、忘れてはならないのが、“音楽に向き合う姿と2人の絆”という後半戦のテーマ。これから太平洋戦争下の時代に突入し、裕一は次週「先生のうた」で、いよいよ戦時歌謡を作り始める。本作では様々な絆の形が描かれたが、真に問われるのはこれから。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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