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One World、Nirvana Tribute、PlayOn Fest……オンライン上に引き継がれた海外チャリティーライブの現在

リアルサウンド

20/5/8(金) 12:00

 いつの間にか「STAY HOME」という言葉が生活の中に溶け込み、ライブハウスや映画館にでかけた日々を遠い昔のように感じる。新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界中のあらゆる人々の日常生活は大きく変わってしまったのだ。そんな中、スーパーマーケットの販売員や配送業者、清掃員など人々の暮らしに不可欠な職業に就く人たちを「エッセンシャルワーカー」「フロントラインワーカー」と称し、感謝の気持ちを表す動きが広まっている。とりわけ、新型コロナウイルス治療の最前線で闘う医師や看護師ら医療従事者にスポットライトが当たっており、様々な支援活動が展開されている。この動きは音楽業界においても例外ではなく、医療従事者への支援を目的としたチャリティーライブが広がりつつあるようだ。

 WHO(世界保健機関)と世界規模の課題の解決に取り組む非営利団体Global Citizenが主催し、レディー・ガガがキュレーターを務めたチャリティーライブ『One World:Together At Home』がその筆頭だ。医療現場の最前線で闘う医療従事者を讃え、支援するために開催されたこのチャリティライブはYouTubeなど各種SNSをはじめ、テレビでも放映され、ビリー・アイリッシュやテイラー・スウィフト、リゾなどの人気アーティストから、ポール・マッカートニーやスティーヴィー・ワンダー、エルトン・ジョンといったレジェンドまで多くのトップアーティストが自宅から世界中へパフォーマンスを届けてくれた。なかでも、「You Can’t Always Get What You Want」を演奏したThe Rolling Stonesのパフォーマンスは大きな話題を呼んだ。オンライン会議ツール「Zoom」さながら、4分割された画面に最初に登場したのが、ミック・ジャガー。アコースティックギターをかき鳴らし、歌い始める。続いてキース・リチャーズとロン・ウッドのギターを弾いている姿が映し出されるのだが、チャーリー・ワッツのカメラがオフのままになっている。ようやく、チャーリーが映し出されると、なんとエアードラムをしているではないか! 機材ケースやソファーを完璧なタイミングで叩くユーモアあふれる姿に思わず口もとが緩んだのは筆者だけではないだろう。プレイベントも含め、8時間に及んだこのイベントでは、1億2,790万ドル(約138億円)の支援金が集まったと発表されている。

 100人以上のアーティストが参加した『One World:Together At Home』だが、それとは対照的にひとりでチャリティーライブを配信したのが、ポスト・マローンだ。ポスト・マローンは「WHOのための新型コロナウイルス感染症連帯対応基金」への募金活動として、かねてより大きな影響を受けたことを公言しているNirvanaのトリビュートライブを行った。この知らせは故カート・コバーンの妻、コートニー・ラブの耳にも届き、彼女はInstagram上でこの活動への賛同を表明し、楽曲の使用について許可を出している。自宅から約1時間に及ぶライブを配信したポスト・マローン。Nirvanaへの溢れんばかりの愛を抑えきれない様子で、終始力強く演奏する姿が印象的だ。このライブのために駆けつけたトラヴィス・バーカー(blink-182)のパワフルなドラムとの相性も素晴らしく、まるでガレージバンドのような熱量の高いグルーブを見せつけた。彼の額に曲名のタトゥーが彫られている名曲「Stay Away」をはじめ、計15曲を披露し、興奮冷めやらぬうちにライブを締めくくった。

 多くの音楽フェスが中止や延期を余儀なくされる中、チャリティーを目的としたバーチャル音楽フェスも注目されている。ワーナー・ミュージック・グループは「WHOのための新型コロナウイルス感染症連帯対応基金(COVID-19連帯対応基金)」への支援のために、バーチャル音楽フェス『PlayOn Fest』を開催した。Coldplayやエド・シーラン、The Flaming Lipsなど総勢70組の貴重なライブパフォーマンス映像を実際の音楽フェスさながら、タイムテーブルに沿って72時間に及び配信した。特に注目を浴びたのは、昨年凶弾に倒れたニプシー・ハッスルのデビューアルバム『Victory Lap』発売記念公演の映像だ。あまりライブ映像が残っていない彼の貴重な秘蔵映像を目にし、亡くした才能の大きさを再認識した方も多いのではなかろうか。

 これまでチャリティーライブは寄付金を最大化するため、たくさんの観客を集めた大掛かりなイベントとなる傾向があった。例えば1985年に開催された史上最大級のチャリティーライブ『ライヴエイド』は、アメリカのJFKスタジアム、イギリスのウェンブリースタジアムを満員にするなど大規模なライブイベントとなった。『ライヴエイド』の熱狂の様子は映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)でも印象的に再現されている。慈善の志に賛同した観客が一堂に会し、大きなムーブメントを起こしてきたこれまでのチャリティーライブだが、コロナ禍ではその舞台はオンライン配信に引き継がれている。まだまだ終わりの見えない新型コロナウイルスとの闘いだが、音楽を通じた支援の輪は着実に広がっているようだ。まずは自分の手の届く範囲を守るために「STAY HOME」を実践し、余裕があるのであれば賛同できるチャリティー活動に寄付をしてみる。そんな些細な助け合いの気持ちによって「細き流れも大河となる」のではなかろうか。(Z11)

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