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『HiGH&LOW THE WORST』久保茂昭監督が語る制作の裏側 「普通の映画とはちょっと違う」

リアルサウンド

19/10/7(月) 10:00

 大人気バトルアクション映画『HiGH&LOW』シリーズと、高橋ヒロシによるマンガ『クローズ』『WORST』がコラボした映画『HiGH&LOW THE WORST』が全国公開中だ。

 2015年以降、映画・ドラマ・漫画・音楽・ライブなど様々なメディアを通して男たちの友情と熱き闘いを描いてきた『HiGH&LOW』シリーズと、累計発行部数7500万部を突破する、不良漫画の金字塔『クローズ』『WORST』がクロスオーバーした本作。両人気シリーズの主な舞台となった街・戸亜留市とSWORD地区が交差した世界で、通称“漆黒の凶悪高校”鬼邪高校と、幹部以外全員スキンヘッドの最強軍団・鳳仙学園の両高校が登場し、世紀の頂上決戦が幕を開ける。

参考:ほか撮り下ろし写真はこちらから

 本作のメガホンを取ったのは、これまで『HiGH&LOW』シリーズも手がけてきた久保茂昭監督。人気シリーズ同士のコラボレーションという難題にどう挑んだのか。高橋ヒロシ作品の大ファンでもあるという久保監督に、制作の裏側について話を聞いた。(編集部)

「『クローズ』『WORST』の存在がなければ、『HiGH&LOW』はなかった」

ーー『HiGH&LOW THE WORST』は、『HiGH&LOW』と『クローズ』『WORST』のコラボレーション作品となっています。まずは、本作の企画がスタートした経緯を聞かせてください。

久保茂昭(以下、久保):まず、僕とHIROさんが出会う前から、『クローズ』『WORST』の原作者である漫画家の高橋ヒロシ先生は『エグザムライ戦国』(2009年放送のアニメ作品で、EXILEのメンバーを模した侍や忍者が登場。「月刊少年チャンピオン」連載のコミック版も)のキャラクターデザインを手かげていたこともあって、その頃からHIROさんとは交流があったんじゃないかな。

ーー『エグザムライ戦国』以後も、メンバーに、高橋先生が直筆イラストを送ったりと、様々な交流はあるようです。その後、『HiGH&LOW THE WORST』の具体的な話に発展したのはいつ頃でしょうか?

久保:『HiGH&LOW THE MOVIE 3/FINAL MISSION』の編集をしている頃でしょうか。HIROさんから「『クローズ』『WORST』との企画を考えている、高橋先生のOKはもらっている」という話は聞いていました。まだ内容は固まっていなくて「相手が鳳仙」と言っていたような記憶はありますね。ただ、「そういうアイデアがある」というレベルの話で、誰が撮るのかも決まっていなかったし、「『クローズZERO』シリーズの三池(崇史)監督が撮るのかな」とか思っていました(笑)。

ーーその後、久保監督に白羽の矢が立ったと。

久保:実は『HiGH&LOW』って、正式なオファーの話はいつもないんですよ(笑)。LDHのミュージックビデオの仕事もやっているので、その際にHIROさんから「次の打ち合わせで『HiGH&LOW THE WORST』の話をしますよ」と言われ、「えっ? 僕がやるんですか?」「そうです」みたいに進んでいきました。さすがにその時はプレッシャーがすごかったですね。

ーー監督も、高橋ヒロシ作品の大ファンだと伺っています。

久保:高橋先生の漫画って、一人ひとりの佇まいがしっかりとあって、キャラに意志が感じられるんですよね。同じ方向を見ていても、立ち方が違ったりして。EXILEのミュージックビデオや『HiGH&LOW』を撮るときも、色々と潜在的に参考にさせてもらった部分は多いんです。『クローズ』『WORST』の存在がなければ、『HiGH&LOW』はなかったということは伝えました。

ーー作り手にリスペクトがあるとはいえ、『クローズ』『WORST』と『HiGH&LOW』の別の世界観をドッキングさせるのは難しい作業だったのでは。

久保:脚本は、『HiGH&LOW』のノリさん(平沼紀久)と増本庄一郎さん、渡辺啓さんたちが、長野にある高橋先生の作業場で合宿して書きあげたそうなので、最初の段階でうまく混ざっていると感じました。

ーーそうなんですね。

久保:それをどう映像化するのかについては、悩みました。原作漫画も大好きですが、三池監督の『クローズZERO』シリーズも本当に好きで、当時劇場で観て大きなインパクトを受けた作品なんです。実写映画ということもあって、当たり前ですが『クローズZERO』とは比べられるじゃないですか。そのプレッシャーもすごくありました。でも、今回はキャストも舞台になる時代も違う、そこでいかに勝負できるかということは考えました。

ーー『HiGH&LOW THE WORST』ならではの映像で勝負できると。

久保:『クローズZERO』は『クローズZERO』だけの世界観なので、そこで映像のトーンは決まりますが、今回は『HiGH&LOW』のトーンも入りますので、ふたつの世界観が別々に見えるように、色のコントラストには気を使いました。鳳仙の方は冷たい色味でモノトーンで描いていて、一方の鬼邪高は、メキシカンギャングのファッションに学ランを合わせるようなイメージで衣装を作っているんですね。色のトーンでいうと、中南米の熱いカラーがありつつちょっとセピアも入っているような。そういうアプローチの違いは丁寧にやっていきたかったので。

ーーまずはヴィジュアルのインパクトで見せていった。

久保:その上で『HiGH&LOW』、鬼邪高の世界に、鳳仙がドンと入ってきて、どう影響を与えていくのかという見え方を作りたかった。オープニングは、電車から鳳仙が降りてきて、その向かう先は鬼邪高……みたいな。このシーンの脚本は、完成版とまったく違うものでしたが、編集の時点でどうしても変更したくて。やっぱり高橋先生も関わっている脚本なので、リスペクトしながら進めていくのは前提なのですが、むしろさらにリスペクトするために、あのようなオープニングにしました。

ーーちなみに、以前本サイトにて脚本家の平沼さんにインタビュー(参考:平沼紀久監督が語る、『DTC-湯けむり純情編- from HiGH&LOW』制作秘話 「DTCだからこそ“外に出す”ことができた」)をしたときに、撮影現場に出向いているとおっしゃっていました。監督、脚本家が現場にいる場合、意見のすり合わせはどのように行われるのでしょうか?

久保:基本的には、僕は物語を描いていて、ノリさんは芝居を中心に見てもらって、気になったことがあると、「これはどう思う?」と僕に相談してくる形ですね。たまに僕とノリさんの意見が違うときは(二人の間で)言い合いになることもあります(笑)。

ーーディスカッションが行われると(笑)。

久保:お互いが納得するまで話し合ったりはしますね。『HiGH&LOW』って普通の映画とはちょっと違う独特な現場なんですけど、そもそも、映画はいろんな人のアイデアでできていくのだと僕は思いますし、役者がアイデアを持ってきたり、カメラマンだったり、美術スタッフからのアイデアだったり、いいものが重なって出来上がるわけで。

ーーアクション監督との連携はどのように行うのでしょうか?

久保:僕と大内(貴仁)さんが現場で揉めることは多々ありますけど、これは昔からあるので、しょうがないです(笑)。でも今回に関しては、アクションについては、こちらからはあまりあれこれ言いませんでしたね。

ーー『HiGH&LOW』は趣向を凝らしたアクションシーンも見どころのひとつです。それはそういったディスカッションから生まれてくるのですね。たとえば、『HiGH&LOW THE MOVIE』ですと、コンテナ街での大人数バトル。本作ですと、河川敷での鬼邪高と鳳仙の大人数バトルをワンカットで撮影しています。そのアイデアはどこからくるのでしょうか?

久保:もともと、河川敷の戦いのような(ワンカット)での撮影を、『HiGH&LOW THE MOVIE』でもやりたかった。ただ、それにはスーパースライドという、10メートルを1秒で撮れるハリウッドの機材が必要なんです。EXILEの「No Limit」というミュージックビデオでは使ったことがあって、HIROさんも「いつかこれをアクションでも使ってみたいね」と話していたんですけど、アメリカからひとつ持ってくるのに4000万円かかるような高価なものなので、予算やかかる時間の問題で当時は諦めたんです。でも、いつかは実現させたいと思っていたので、今回大内さんに「あれ(スーパースライド風の撮影方法)をさ、アクション部のワイヤーだけでやれない?」と相談したんです。ワイヤーにカメラを吊って、スーパースライドのように撮影できるのではないかと。

ーーつまり手動で?

久保:これまで、大内さんと一緒にアクションを作ってきて、やっぱり彼はワイヤーアクションの使い方がすごいんですよ。それをカメラにつけたら面白いものができるのではないかと思って。「ハリウッドだったら1秒で10mだけど、大内さんなら30mはいくよね?」みたいな(笑)。

ーー3倍じゃないですか。

久保:そしたら本当に作ってくれて、さらに方向が変わってもワンカットで撮れるものになったんです。この河川敷の戦いは、『クローズ』『WORST』のやり方なんですね。『HiGH&LOW』と違って、高校生同士だから武器を使わずに拳だけでケンカをする。そこに新鮮味を持たせるためのアイデアを出し合いました。一方で、後半の団地戦は、武器を使ったり奇想天外な戦い方で『HiGH&LOW』っぽくしたいと話していて。そこの棲み分けは考えました。

ーーもう一つの決戦のシーンもすごかったですね。

久保:あれは脚本では具体的な描写はなかったんですけど、そこにアクションで達成感を伝えていきたいと、プロデューサーに相談したんです。もっと色々広げて行きたかったんですが、やっぱり日程の関係で、あれが精一杯で。

ーー『HiGH&LOW』シリーズの今後の展開もあるのかが気になります。もしかしたら他のSWORDのチームの作品も生まれる可能性も?

久保:そこはHIROさんの構想ありきなんですけど、個人的に僕はRUDE BOYSも撮りたいと前々からHIROさんと話していますね。例えば『HiGH&LOW THE RED RAIN』でスモーキーと雨宮長男が知り合いなのは判明しているじゃないですか。もしかしたらそういうエピソードも描けるかもしれない。そうやって色々広げていけるかもしれないと思っています。

ーー期待が膨らみますね。

久保:まずは、この『HiGH&LOW THE WORST』に、どういった反響があるかによって広がり方は変わってくると思うので、皆さまの感想が楽しみですね。『HiGH&LOW』ファンの方はもちろんですし、高橋先生の世界に対して、ものすごくリスペクトして鳳仙を描いているので、『クローズ』『WORST』の原作ファンの方にも、ぜひ観ていただきたいなと思います。

(取材・文=藤谷千明/写真=大和田茉椰)

※高橋ヒロシの「高」はハシゴダカが正式表記。

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