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『竜の道』王道の復讐劇に見入ってしまう理由 カンテレ制作ドラマの傾向から探る

リアルサウンド

20/9/8(火) 8:00

 現在放送中の『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)は、玉木宏と高橋一生演じる双子の兄弟、竜一と竜二の仇討ちを描く復讐劇。物語はいよいよ佳境に入り、2人は両親の敵である霧島源平(遠藤憲一)を決死の覚悟で追い詰める。

 コロナ禍の放送延期もあって、放送前は比較的地味な扱いを受けていた『竜の道』だが、華やかさと実力を兼ね備えたキャスティングも手伝って、ここに来てじわじわと注目を集めている。その理由を、関西テレビ(カンテレ)制作の火曜21時枠のドラマ(火9)の作品傾向から探ってみたい。

 『竜の道』が放送される火9は、改編前の火曜22時枠を含むカンテレが制作を担当してきた。厳密には制作会社との共同制作を含むが、同枠では伝統的に刑事ドラマやサスペンスが取り上げられることが多かった。その中には「復讐」をテーマにした作品も含まれる。草なぎ剛主演の「復讐シリーズ」が話題になったことは記憶に新しい。

 近年は恋愛ものやコメディ、ヒューマンドラマなど多彩なジャンルの作品を送り出しており、一口に刑事もの・サスペンス枠としてくくることは難しいが、同枠には、ジャンルを問わず、エモーショナルで骨太なストーリーという共通点がある。

 たとえば、2019年4月期の『パーフェクトワールド』は、主人公のつぐみ(山本美月)と障害を持つ樹(松坂桃李)のラブストーリーだが、2人が結ばれる過程では、家族の反対や恋敵の存在など、いくつもの試練が立ちはだかった。また、2020年1月期の『10の秘密』は、向井理演じるシングルファーザーの主人公・白河が、娘の誘拐をきっかけに元妻の由貴子(仲間由紀恵)や周囲の人々の秘密を知る内容。一見すると複雑なストーリーのようだが、過去の恩讐によって動機付けられる登場人物や、白河の父としての葛藤に物語の軸が置かれていた。

 古今東西のドラマは、ストーリーを通じた人物の成長や感情の変化を描いてきた。カンテレ制作の火9は、まさにドラマの王道展開と言える。もう一点、忘れてはならないのは、同枠が韓国ドラマのリメイクに取り組んできたこと。改編前の『グッドライフ〜ありがとう、パパ。さよなら〜』(2011年4月期)や『銭の戦争』(2015年1月期)にはじまり、『シグナル 長期未解決事件捜査班』(2018年4月期)や『TWO WEEKS』(2019年7月期)を送り出してきた。エモーショナルで骨太という特徴は韓国ドラマにも当てはまる。

 復讐や事件解決、成長物語といった王道のストーリー展開では、登場人物の感情をどこまで掘り下げて描けるかが重要だ。そのようにして作られたドラマがエモーショナルなものになるのは必然であり、そのことが強烈なドラマツルギーの源泉になっている。また、悪く言えば「ベタ」な展開にはスピンオフに発展しやすいという長所もある。同枠が本編と別にチェインストーリーを配信してきたことは理にかなっている。

 残念ながら『竜の道』でチェインストーリーは制作されていないが、同作が復讐劇の王道を踏襲していることに疑いの余地はない。竜一は顔を整形し、経営コンサルタントの和田に名前を変えて源平の息子・晃(細田善彦)に近づく。竜二は、源平の長女・まゆみ(松本まりか)と交際することで家庭内から源平の動向を探る。最終的に源平の命さえ絶とうとする執念は、源平の並外れた警戒心と動物的な勘によって水際で防がれ、そうしているうちに、追い込んでいたはずの竜一と竜二の足元が崩れていく。

 復讐に取り憑かれた2人が泥沼にはまっていく姿は容易に想像できる。それにもかかわらず、バッドエンドを予想してもなお竜一と竜二の復讐劇に見入ってしまうのは、「復讐には代償をともなう」という普遍的な物語の法則がそこに見え隠れするからだ。

 もちろん例外もある。同枠には『まだ結婚できない男』(2019年10月期)など作家性が前面に出た作品もあるが、火9ドラマ特有の演出カラーがあることはたしかだろう。関東よりも関西エリアで高い視聴率を記録してきたカンテレ制作の火9ドラマ。庶民的な文化が根付く関西圏には、笑いに象徴されるような自らの言葉で発信する気質があり、そのことがドラマ作品におけるストレートな感情の発露にもつながっているのではないだろうか?

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
『竜の道 二つの顔の復讐者』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:玉木宏、高橋一生、松本穂香、細田善彦、奈緒、今野浩喜、渡辺邦斗、 落合モトキ、西郷輝彦(特別出演)、松本まりか、斉藤由貴、遠藤憲一ほか
原作:白川道 『竜の道』 (幻冬舎文庫)
脚本:篠崎絵里子(「崎」は「たつさき」が正式表記)、守口悠介
音楽:村松崇継
主題歌:SEKAI NO OWARI 「umbrella」(ユニバーサル ミュージック)
オープニング曲:ビッケブランカ 「ミラージュ」(avex trax)
プロデュース:米田孝、水野綾子
演出:城宝秀則、岩田和行、紙谷楓、吉田使憲
制作:カンテレ、共同テレビ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/ryu-no-michi/
公式Twitter:https://twitter.com/ryunomichi_ktv

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