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ディーン・フジオカ×井浦新『レ・ミゼラブル』を通して感じる“平成の30年”の揺らぎ

リアルサウンド

19/1/6(日) 12:00

 1月6日夜9時より、ディーン・フジオカ×井浦新W主演スペシャルドラマ『レ・ミゼラブル 終わりなき旅路』(フジテレビ系)が放送される。『レ・ミゼラブル』は、ヴィクトル・ユゴーによって1862年にフランスで生まれた大河小説。それから150年超、ミュージカル、映画、ドラマ、アニメ、漫画と、各時代に応じた作品として語り継がれてきた名作が、“平成の30年”を舞台に描かれる。

【写真】幸せな生活を送っていた頃の馬場純(吉沢亮)

 物語は、1991年~1995年の神戸を舞台にした第1幕から始まる。主人公の少年・馬場純(吉沢亮)は正当防衛の末に、母を騙した斎藤太(寺脇康文)を殺めた罪により刑務所に入っていた。真面目に罪を償っていたところに、病気の弟が危篤であるという連絡が入る。特殊な血液型の弟を救えるのは自分しかいないと知っていた純は、思わず脱走してしまうのだった。しかし、間に合わなかった純。絶望の果てに、自殺しかけたところを、自立支援施設を営む徳田(奥田瑛二)に助けられ、そこで弁護士を目指す少年・拓海(村上虹郎)と出会う。この出会いが、純の人生を大きく変えることに……。

 一方、純(ディーン・フジオカ)に父親を殺された涼介(井浦新)は、正義感の強い刑事になっていた。2004年の東京を舞台にした第2幕では、身分を隠して生きる純と、その正体を暴き、追う涼介との攻防が描かれる。純を「絶対に赦さない」と心に決め、追い詰めていく涼介。だが、純に迫るほど何が善で何が悪なのか、次第に心が揺さぶられていく。そして、第3幕は2018年の福島へ。それぞれが抱える痛みと想いの先に、何が待っているのか。

 改元を直前に控えた今、改めてこのドラマを見ると、平成という時代のゆらぎを感じることができるはずだ。1995年の阪神・淡路大震災。少年法の議論を呼んだ1997年の神戸の児童殺傷事件。そして2000年代には、全国的に横行したオレオレ詐欺、さらに認可外保育施設(無認可保育園)で起きた悲劇や、2011年の東日本大震災……。『レ・ミゼラブル』の原題が意味するところは、“悲惨な人々”、“哀れな人々”。文字通り、悲惨で哀れな事件・事故・災害が多かった平成の30年間を、私たちはどう生きたか。そして新しい年を、新たな時代を、どう生き抜くかを考えさせられるドラマだ。

 弱き者を助けるため、自らの正義を貫くためにした行動が、時として罪となることがある。だが、その罪を決めるのは他ならぬ人。人が人を裁き、そして人が人を赦す。だからこそ、時代と共に、その罪は変化していくのだ。では、この30年間で大きく変わったのは何か。

 IT革命が起こり、世界とつながることができた反面、地域や家族に対する求心力は控えめになり、私たちは“個”であることに気がついた時代。“自己責任”も平成を象徴するひとつの言葉だ。未だかつて体験したことのない圧倒的なスピードで情報が行き交う日々の中で、小さな事件もあっという間に広がっていく。マスメディアが匿名報道をしたとしても、インターネットで誰もが罪人と呼ばれる人の個人情報を晒すことができてしまう世の中になった。

 もちろん、誰もが他者の権利を脅かすことなく生きていくのは理想の社会だ。技術の進歩は、これまで声が上げられない人たちのSOSが届きやすくもなった。だが、一度転んだ人が立ち上がるチャンスは……? 人はふいに過ちの落とし穴に落ちる。不条理な連鎖によって、図らずも罪を犯すこともある。情報は、受け手一人ひとりが様々な解釈をするもので、異なる見解の中には、認知の歪みも生じる。逆手にとって利用する人もいる。その結果、新たな罪へと転がっていく人がいるかもしれない。そんな危うさを孕んだ時代を私たちは生きているのだと、痛感している真っ最中だ。

 人生はいつだって理不尽だ。生まれる時代も、生んでくれる親も、育つ環境も、出会う人も……何ひとつ選ぶことはできない。なぜ生まれてきたのかも、なぜあの人が死んで、自分が生かされているのか、正直者がバカを見て、ずる賢い者が笑うのか。誰も説明ができない。それでも日々の選択の連続で、人生が切り開かれると信じて歩み続けるしかない。「選択に迷ったときのヒントを教えてやろうか」。劇中では、そんな忘れたくない言葉もたくさん出てくる。

 今この瞬間も、刻々と時は過ぎ去り、いつか振り返る時代のかけらとなって、記憶の彼方に消えていく。何のために生き、何のために死ぬのかは、自分自身しか意味をつけられない。ならば、今この瞬間を精一杯生きるために、このドラマを見ることから始めてはいかがだろうか。

(佐藤結衣)

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