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田中泰の「クラシック新発見」

この作曲家に再入門/アントニオ・ヴィヴァルディ(1678-1741)~レッドプリーストへの誘い

隔週連載

第3回

イラスト:坂谷はるか

クラシックにさほど興味のない方でも“ヴィヴァルディの『四季』”という言葉には聞き覚えがあるのではないだろうか。

そして曲の冒頭『春』の第1楽章を耳にすれば、小中学校で音楽の授業を受けた方の大半が、「ああ、知ってる知ってる」と頷かれることだろう。いやはや日本の音楽教育の徹底ぶりには頭が下がる。ちなみに子どもたち全員に音楽教育を行う国は世界広しといえども日本だけなのだとか。その昔海外の友人に「我々の世代の殆どの日本人がリコーダー(縦笛)経験者だ」と言って仰天されたことを思い出す。

余談はさておき、クラシック史上最大のヒット曲の1つに数えられる『四季』の作曲者は、バッハやヘンデルと同時代に活躍したイタリア・バロック界の巨匠ヴィヴァルディだ。燃えるような赤毛を持ち、若い頃に教会で司祭を務めていたことから「レッドプリースト(赤毛の司祭)」と呼ばれたヴィヴァルディの得意分野は「協奏曲(コンチェルト)」。63年の生涯の中で500曲以上もの協奏曲を作曲しているのだから半端じゃない。

ちなみに「協奏曲」とは、独奏楽器が管弦楽(オーケストラ)をバックに演奏する作品の総称だ。彼の代表曲である『四季』はどうなのかというと、これも立派な協奏曲なのだ。正式名称は「ヴァイオリン協奏曲集『和声と創意の試み』」。その中の第1番から4番までが『四季』と呼ばれている作品だ。

筆者がクラシック音楽に親しみ始めた1970年代に一斉を風靡していたのが、「イ・ムジチ合奏団」による『四季』アルバムだ。クラシック史上屈指のベストセラーと言われた当時の彼らの演奏は、まったりとしたアンサンブルといった趣で、とてもヴァイオリン協奏曲には聴こえない。それを覆したのが、イングランドのヴァイオリニスト、ナイジェル・ケネディ(1956〜)だった。彼が1989年に発表した『四季』アルバムは、当時クラシック史上最高の売上である200万枚以上を記録し、ギネスブックに認定されたことも語り草だ。

その人気の秘密は極めてシンプル。『四季』をヴァイオリン協奏曲らしい華やかさで弾ききったことだ。今ではイ・ムジチ合奏団を含むほぼすべての演奏団体がこの流れを踏襲しているだけにに、ナイジェル・ケネディ盤の存在意義は大きい。そして近年はヴィヴァルディが活躍していた当時の楽器を使った「古楽演奏」へと回帰しつつあり、演奏のスピード感はさらにアップ。まさにヴァイオリン協奏曲としての面目躍如と言えそうだ。これには草葉の陰のヴィヴァルディも苦笑いしているに違いない。

個人的には、高校時代吹奏楽部でトランペットを吹いていた頃に体験した『2本のトランペットのための協奏曲』がヴィヴァルディとの最初の出会いとして思い出深い。こちらはフランスの名トランペッター、モーリス・アンドレ(1933-2012)による1人2役の多重録音による名盤がお薦めだ。

Photographer: Rankin
Copyright: Rankin licensed to EMI Classics


ヴィヴァルディが生まれたイタリアの街は以下の中のどこでしょう?

ミラノ

ヴェネツィア

ナポリ

ローマ

ヴェネツィア

ヴィヴァルディは1678年3月4日にイタリアのヴェネツィアで生まれ、ヨーロッパ各地で活躍した後、1741年7月28日にウィーンで没しています。

プロフィール

田中泰

1957年生まれ。1988年ぴあ入社以来、一貫してクラシックジャンルを担当し、2008年スプートニクを設立して独立。J-WAVE『モーニングクラシック』『JAL機内クラシックチャンネル』などの構成を通じてクラシックの普及に努める毎日を送っている。一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事、スプートニク代表取締役プロデューサー。

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