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岩田剛典単独インタビュー「俳優としての自分は40点。まだまだです」

ぴあ

岩田剛典 撮影:奥田耕平

2010年、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのパフォーマーとしてデビュー。2013年、舞台『あたっくNo.1』から俳優活動を本格化させ、初主演映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』で第41回報知映画賞 新人賞、第40回日本アカデミー賞 新人賞俳優・話題賞を受賞。俳優としても精力的に活動を続ける岩田剛典。

音楽活動と俳優活動を並行させる者へ、時に「二足のわらじ」と偏見まじりの目を向けられることも多い。だが、そんな逆風を反骨心に変え、岩田は着実に役者としての力を養いつつある。

その現在地を示しているのが、1月29日(金)公開の映画『名も無き世界のエンドロール』だ。本作で、岩田は新田真剣佑とタッグを組み、裏社会で生きる男・キダを演じている。

スクリーンに焼きつけられた孤高の佇まいに、テレビでよく見る「岩ちゃん」の面影はない。きっと本作の岩田を観たら、もう「二足のわらじ」と侮ることはできないはずだ。

あそこで涙を流すのはフェイクだと思った

「苦しい役ですよね。キダは、生きる希望を失ってしまった男。こんなふうに常に枯れた感じを持っている役は初めてかもしれないです」

岩田は、キダとして生きた日々をそう振り返った。

「(新田演じる)マコトとは真逆のキャラクター。マコトを支える側の人間として、“受け”の芝居が要求される役でした。しかも、作品自体が仕掛けのあるお話。ちょっとしたリアクションひとつとっても、どちらの意味でもとれる塩梅で表現しなければいけなかった。そこは監督ともすり合わせしながら、細かくこだわってやっていきました」

相手の芝居との化学反応が、“受け”芝居の面白さ。その醍醐味を存分に味わえたシーンが本作にもあった。

「マコトがキダに対して感情を爆発させるシーンがあるんですけど、そこは特に印象深かったです。ふたりの関係性を示す上でも肝となるシーン。まっけん(新田)との台詞のかぶせ合いを大事にしたいなと思って現場に入ったんですけど。段取り、テスト、本番と重ねていくにつれて、僕たちふたりだけじゃなくて、現場全体がぐっと集中していくような感覚があって、あの空気感は刺激的でした。まっけんの芝居はスマートで、すっと気持ちが入ってくるんですよね。このシーンを演じているときも、ふたりで同じゴールを目指しているんだと感じることができました」

この歳でまだ制服を着ることになるとは(笑)

キダという役は、気持ちを押し殺すような場面が多い。抑制の効いた芝居が求められる中で、数少ないほっとするシーンが、マコトとヨッチ(山田杏奈)の3人で過ごした高校時代の場面だ。

「まさかこの歳でまだ制服を着ることになるとは思わなかったです(笑)。てっきり10代の役者さんでやるんだと思っていたら、まさか全部自分でやるっていう。嘘だろと思いました(笑)。まっけんと山田さんはまだ若いから違和感ないですけど、僕は無理があるだろうと。あそこは、みなさんもお手柔らかに観ていただけたら(笑)」

だが、そんな温かいシーンが心に残れば残るほど、キダを待ち構える運命の過酷さに胸が痛む。

「いちばん監督とよく話し合ったのは、クライマックスのシーンですね。キダはどんな顔でいたらいいんだろうと現場ですごく悩んで。いきなりあの状況になって涙なんて出るわけないし、それはただのフェイクになる。この映画のすべてがここに集約されると(クランク)インの前から考えていたので、監督とどうしましょうという話はすごくしました」

大粒の涙を流せば、確かにドラマティックに見えるかもしれない。けれど、岩田が突きつめたいのは、そんな見せかけのわかりやすさではなく、キダのリアルだ。

「監督にそういう話をしたら、監督もそうだよねと同意してくれて。たぶんあのとき、キダの中で葛藤もあると思うけど、マコトに対して理解できるという気持ちもあった気がするんですよ。本当にすごく複雑なシーンで。だから、最終的には表情をどうしようと頭で考えるのではなく、気持ちで臨みました」

エンドロールが流れ終わったあと、観客に残るのは決して軽やかなものではないかもしれない。それでも、この時代だからこそこの映画が上映される意味はあると岩田は考えている。

「2020年は、いろんな人が辛い思いをした1年でした。おこがましいかもしれないですが、この映画が自分で自分の人生を終わりにしようとしている人たちが立ち止まるきっかけになったらいいなとも思うんです。やっぱり遺された人はすごく傷つくと思うから。いろんなテーマがつまった作品ですが、僕がこの映画を通して届けたいメッセージは、命です」

出演作のレビューはめちゃくちゃチェックします

芝居は、スポーツのように記録や点数といった明確な指標がない。自身の芝居を深めていくにはどうすればいいのか、はっきりした正解のない世界で、岩田はどう演技と対峙しているだろうか。

「まず自分の出演作は必ずチェックします。やっぱり観ると毎回毎回学びがあるんですよ。特にそれを感じたのが『シャーロック』のときで。そこから台詞の間をより意識するようになりました。聞いていて気持ちのいいテンポをつくることだったり、言葉を立たせるところと抑えるところの調整をもっと考えるようになったり。細かいパーツにこだわるようになったのは『シャーロック』をやってから。それまでずっと感情をつくることはできても、その感情をちゃんと観ている人に伝える方法が自分の中で消化できていなくて。そこは『シャーロック』以降の1年で特に意識するようになった部分です」

そしてもうひとつが、声を聞くことだ。

「お金を払って映画館に来てくれた観客の方や、テレビの前の視聴者のみなさんがどう思ったのかはちゃんと見るようにしています。だからFilmarks(映画レビューサイトのこと)とかめちゃめちゃチェックしますよ。やっぱり映画好きの方がよく投稿しているので、参考になるコメントがたくさんあって。それが、どんなマイナスのコメントでも受け入れるようにしています」

そうしたレビューは時に容赦ない言葉も並ぶ。心を削られませんか、と恐る恐る聞いてみると、岩田はにこやかに「削られます」と笑った。

「でもそれも仕事のうちだと思うので。なんでもそうですけど、叩かれるうちが華というか、アンチがいてなんぼの世界ですから、そこは本当に気にならなくなっちゃいましたね。自分の気づきになるものだけをちゃんとピックアップして、反省の材料にしています」

ちゃんとメンバーに顔向けできるだけのことをやってきた

気づけば、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEもデビュー10周年を迎えた。自らのホームに対する愛着は、ひと言では語りきれないほど深い。

「10周年を迎えられてうれしいですけど、うれしいだけじゃないですね。積み重ねてきたな、と噛みしめる感じがいちばん近いかもしれない。バラバラのところから集まった7人が大きな仲違いもなく10年もやれたことがある意味奇跡。10年という年月への感謝はあります」

三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEについて語るときの岩田は、映画について語る岩田とはまたちょっと顔つきが違う。どこか柔らかくて、いとしさが自然と表情ににじみ出ている。

「僕らにとって、グループは人生。たとえこの先解散しても脱退しても引退しても、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEと絶対に一生言われ続けるので。こうやってグループ活動ができている時間をより大切にしたいし、ここからどんなエンターテインメントを届けていきたいか、またメンバーと相談してつくっていきたいなと思った10周年でした」

そもそも岩田が俳優活動に取り組みはじめたのも、才能豊かなメンバーの中で自分だけが何もないというコンプレックスが出発点。何をすれば、グループの活動に貢献できるか。その答えが、芝居だった。10周年を経て、自らの俳優活動がグループにどれだけ還元できたか。自身の歩みに通知表をつけてもらうと、岩田は少し誇らしげに胸を張った。

「僕個人のスキル云々、キャリア云々という意味ではなく、グループに貢献できたかというところで言えば、じゅうぶん及第点じゃないですか。僕のやってきた道のりは、絶対他のメンバーにはできなかったと思うので、やれるだけのことはやったと振り返れるし、ちゃんと顔向けできるかなと」

では、俳優・岩田剛典個人としての通知表は? そう質問を重ねると、「うーん」としばらく考えたあと、こう付け加えた。

「40点ぐらいかな。まだまだです」

大学の考査で言えば「不可」。その辛口の採点が、岩田剛典の向上心の表れだ。いつか合格点を自分に出せるように、これからも気づきと学びを重ねていく。

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『名も無き世界のエンドロール』
1月29日(金)公開

撮影:奥田耕平、取材・文:横川良明

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