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2020年注目ユニット illiomote初インタビュー:幼なじみの二人が掲げる“HAPPY POP”とは? 音楽に対する姿勢も明らかに

リアルサウンド

20/4/8(水) 18:00

 少ない音数、最高のギターリフ、ヒップホップ由来のビート感に乗る日本語~英語の移行がスムーズなボーカル。手作りの雑コラ感たっぷりなテクスチャーが印象的なミュージックビデオ「In Your 徒然」を2019年3月にYouTubeに投稿して以降、ファッション/カルチャー系メディアでピックアップされ、早耳のリスナーの間で話題になっていた二人組ハイブリットユニット・illiomoteが、4月8日に1stEP『SLEEP ASLEEP…。』をリリースする。

 幼稚園からの幼なじみだというYOCO(Vo/Gt)とMAIYA(Gt/Sampl)が掲げるテーマは“HAPPY POP”。だが、彼女たちの鳴らす音楽がただ刹那的でカラフルなポップではないことは一聴瞭然。今回は音楽ユニットとしてグッと成長期にある二人に、ほぼ明かされていない結成エピソードや、表現に対するスタンスを軸に話を聞いた。

(関連:CHAI、海外での評価は“面白そうなバンド”から“最注目若手バンド”へーー宇野維正が現地ライブで目撃

■「親しき仲にも礼儀あり」って考えはお互いあるよね?(MAIYA)

――二人は幼なじみだそうですが、それぞれ音楽を始めたきっかけは違うんですか?

YOCO:私は、保育園の頃、ピアノを習っていたんですが、その頃から「作曲したーい!」とか冗談で言ってたと思うんです、教本とかをガン無視して。でもある時、社会で生きていく中で嫌なことが重なって、学校にはちゃんと行くんですけど、それ以外は基本、自分の部屋に引きこもるようになったんです。着替えもせずベッドの上にいて、ネットサーフィンしたりとか。ほんとに友達とも遊ばないし、汚いけどお風呂も入らなかったり、ご飯も食べなかったり。

MAIYA:マジでその時、病んでたよね?

YOCO:すごい病んでた。アニメとかカルチャーの世界だけに没頭してましたね。そんな私を見てさすがにヤバイと思った親が、「何か始めた方がいいんじゃない?」って言ってくれて。中学1、2年生の頃に一人で弾き語りを始めました。友人に一度譲ったギターを引き取って(笑)歌ってみたら楽しくて。それから高校生になって、MAIYAちゃんとバンドを組んだ経験を経て今に至ります。

――MAIYAさんはどういうきっかけですか?

MAIYA:もともと家が音楽家系で、お母さんも音楽が好きで、お父さんはギタリストで、おばあちゃんも琴の先生なんです。琴は小学校の時に習ってみたけど座るのが苦手だったから、途中で寝ちゃったりしてましたが、ずっと音楽には触れていました。中学生の時にお父さんにギターをもらってちょっとずつ練習し始めてたんですが、その時はハードロックが好きでした。「ヤバい! ジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)かっけー!」みたいな。あとはアヴリル・ラヴィーンに憧れて、髪の毛がめっちゃ長かった時期もあった(笑)。ジョーン・ジェットとか、パンク寄りの音楽も好きでしたね。それから高校に入ったら軽音部に入ると決めて、YOCOと一緒の高校受けて、一回目は落ちて、もう一回同じ高校を受けたんです(笑)。高校に落ちたのも(YOCOと)一緒だった。

YOCO:学力も同じぐらい(笑)。

MAIYA:いざ高校に入って軽音部やるぞ! って意気込んで大会とかにもいっぱい出ました。最初は4人でガールズバンドを組んでいたんですが、あとの二人が大学進学で抜けて、その時はアコースティックで演奏していたんです。パソコンも持ってなかったし、サンプラーを触る機会もなくて。それで、昨年ぐらいからはサンプラーの音や同期を入れ始めて、今のilliomoteのスタイルになりました。

――その二人が辞めなかったら4ピースバンドだったかもしれないんですか?

MAIYA:他の二人がバンドやりますってなってたらガールズバンドだったね。

――二人がとても仲が良いので、人数が増えるほど大変なことも増えるし、人数が多いと大変だからその選択をしなかったのかと想像していました。

MAIYA:あ、でもそれはありますね。うちらが強すぎたのは、二人が辞めた理由のひとつでもあるかも。

――どういうところで?

MAIYA「スネア買えよ。ネイルやってないで」とか言ってましたね当時は。その子にとってはファッションが大事だし、今だったらネイルとかしたい気持ちはわかる。

YOCO:わかるね。

MAIYA:スネアなんか買わなくていい、今はね。でもその時は軽音部の部長だったし、YOCOが副部長だったので、大会にも出て後輩もちゃんと育てないとってすごく気を張ってたんですよね。だから「ちゃんとやれよ、ネイルしてる場合じゃねえぞ」って……(笑)。

――軽音部に所属してるバンドが進歩して欲しかった?

MAIYA:自分たちだけでも良かったと今は思う部分もあるけど、その時は高校で部活として活動していたし、その中で部長だったから、もっと(軽音部全体を)いい方向に持っていきたいと必死になっていました。全国大会も行ったよね?

YOCO:後輩が全国大会に出てくれて、でももうその軽音部は衰退してしまったんですけど……(笑)。私としては、学生だしお金もないし、でもバンドとか音楽ができる、勉強しながら好きな音楽の文化にもちゃんと向き合える環境作りがしたかったんですよね。自分たちも含めて、子どもだけどそういう環境を生み出せるぞ! っていうのを部活を通じて伝えたかったんだろうなと思います。周りの子たちには、そんな思いは全く理解されなかったし、たぶん「何、マジになっちゃってんの?」みたいな感じの温度差はありましたけどね。

――二人とも真面目ですね。

YOCO:真面目だよね。

MAIYA:真面目かもしれないね(笑)。

――二人になって、弾き語りから今みたいなスタイルになった理由はなんですか?

MAIYA:「やっぱりリズムがないとお客さんが乗れないね」って話していて、まずはスマホのアプリにあるドラムマシーンを使ってみて、「ギター以外の音入れた方がいい!」と意見が一致したのでパソコンを買いました。サンプラーは最初マネージャーに借りて試していて、段々と今のスタイルが定着してきました。

――YOCOさんは、唾奇さんの「Soda Water」にボーカルとして参加されていたこともありますが、自分なりのボーカル表現を高めていくためにはどんなことをしてきたんですか?

唾奇 “Soda Water” (Music Video Short Ver.)
YOCO:今まで特別、ボイストレーニングを受けたことはなくて、ただほんとにちっちゃい頃から歌うことは自分の中で自然にしていたことでした。ボーカルの表現を高める練習はとても大事だと思うんですが、私はカラオケがとても苦手なんです。例えば、決まった音程や音源のまま歌って楽しむのがカラオケを楽しんでる人たちの歌の捉え方だと思うんですが、私はその型にはめる歌い方ができなくて。私は、ジャズシンガーのハミングなどを参考にしていたんですが、歌は楽器の一部であり自分のオリジナルで、決まったものじゃなくて楽譜もなくて……歌に楽器としての自由さみたいなものをすごく感じて、「あ、私はこれをやりたいんだな」と思ったんです。なので、自分の声の良さはここだとか、MAIYAちゃんとの音の相性はこうするといいとか、自分と向き合いながらやってますね。

MAIYA:カラオケって、数字で上手いとか下手とか決めるのまじ怖いよね。

YOCO:そう! 私、カラオケ恐怖症みたいになっちゃったんです(笑)。

――カラオケやボカロを通ってきている人は音程やピッチが優先されるというか、「うまい歌」の基準が全然違いますね。

YOCO:そうですね。それはそれなりの楽しみ方があると思うし、ボカロは一応私たちも世代だったし、小学校の頃みんな聴いていたので通ってはいるんですよね。ニコニコ動画やアニソンも好きだったし、だけどやっぱり自分がボーカルとして楽しさを感じる部分は「うまい」ということだけじゃないんだなと思います。

――二人の間には暗黙の“illiomoteらしさ”があると思うんですが、言葉にするとなんだと思いますか?

YOCO:もう、雑多なやつじゃない? 雑多で素直。

MAIYA:雑な感じとか、雑な感じから出るチープさ、あと見た目のポップさとかそんな感じじゃないかな?

――音楽面でのilliomoteらしさはいかがですか。

MAIYA:うちらの世代はサブスクもYouTubeもあったから本当にいろんな音楽を聴いていて、情報もネットの中に溢れてて、意識せずとも音楽に触れて自然と消化していってると思います。多分、そういうジャンルレスなところなんかはilliomoteの音楽にも表れていると思う。

――なるほど。お二人は友達としても仲がいい感じがとても伝わってきますが、バンドと友達を両立していると揉めたり、逆に何も言えない状況に陥ったりしませんか?

MAIYA:うちらは仕事になると割り切って接することができていると思います。「親しき仲にも礼儀あり」って考えはお互いあるよね?

YOCO:そうだね。それはすごく大事にしてる。

――今回、1stEP『SLEEP ASLEEP…。』がリリースされます。すでに配信されてる曲もありますが、「TELEDISCO」は冒頭のYOCOさんが引きこもっていたという話から、部屋でディスコするって意味かな? とも思いました。

YOCO:ドイツのベルリンに、テクノ発祥の文化の関係で、使わなくなった公衆電話をワンコインディスコみたいにしている「teledisco(テレディスコ)」というものがあって、今新しいものがどんどん増えてる時代の中では公衆電話ってステレオタイプだけど、telediscoの存在を知った時に「何それめっちゃ楽しいじゃん!」と。(参照:TABI LABO )

MAIYA:ジュークボックスみたいだよね。

YOCO:そうだね。スマホが普及して、使われなくなった公衆電話を残して芸術に消化するっていうアイデアがめちゃめちゃ素敵だなと思って。新しいものや、次の流行りを見つけては前の文化が「なんかダサいね」ってすごいスピードで淘汰されていくじゃないですか。もう今は、ギャルサーとかも太古の歴史みたいにされちゃってるけど、実際にはギャルのソウルは全然残ってると思うんです。それが新しいものにリバイバルって形で進化するし、みんな大人になると忘れてしまうことってたくさんあるけど、そういうのを大事に……

MAIYA:「古き良き」だね。

YOCO:そう、古き良きもの。この曲は、電話ともかけてるんですが、例えば私たちは悩みや苦しいことがあった時にそれを音楽で表現したり消化したりできるけど、世の中には何かに苦しんでても口に出して言えない人やどこにもそれをぶつけることができない人もいると思うんです。そういう時に、この曲が「相談ダイヤル」的な存在になったらいいって。困ったら電話をかけてほしいみたいに、困ったらTELEDISCOに入って踊って欲しいし、困ったら私たちの曲聴いて欲しいんです。「君と同じこと思ってる人、実はたくさんいるし、私たちも味方だよ」っていう思いがリスナーや悩みを口に出せない人たちに届いたらいいなと思って。ちょっと傲慢かもしれないけど。

MAIYA:電話くるかもね、まじで。「はい、illiomote相談所でございます。今日はどうされました?」とか言って出てみようか。

YOCO:そういうのがあったら楽しいね(笑)。

――(笑)。トラックメイクはほとんどMAIYAさんが?

MAIYA:そうですね。

――オールドロック育ちな側面もある?

MAIYA:ギターはそうですね。やっぱりギターを弾くとなったらそのあたりもちょっとは通らないとなって。今は違うかもしれないけど、お父さんが通ってきているから、ギターを教えてもらったりすると、ブルースとかThe BeatlesのDVDとかを一緒に見ることが多かったですね。

――それで、せっかくギターならこれでしょっていう美味しいフレーズを抽出できるんですね。

MAIYA:そうなのかな? 自分ではあんまり意識してないんです。

YOCO:抽出してるよ!

――しかもバリバリ弾けます! みたいな方向でもなく。

MAIYA:ライブではギターも弾いたりするけど。音源だと今、ギターを入れる塩梅が難しくて。邪魔しない程度にキャッチーに音を入れる具合が。ギターが多すぎると歌の邪魔になっちゃうじゃないですか。それが嫌いなんですよね。

――なるほど。「Sundayyyy」はトラックがドラムンベースっぽくて、一番暴れてる印象です。

MAIYA:「Sundayyyy」は、実験的な感じにしたかったっていうのもあって。

YOCO:昨日、J-WAVEの『SONAR MUSIC』で流してもらったんですけど、放送後SNSを見たらビリー・アイリッシュと比較されて「パクリだ」って言われててびっくりしました。

MAIYA:四つ打ちで、リフのキーが一緒だっただけなんですけど、結果、ビリー・アイリッシュに似てるって言われたらうちらの勝ちだね(笑)。

――そして「BLUE DIE YOUNG」は古今東西のユースカルチャーで用いられてきた慣用句が入っています。

YOCO:「BLUE DIE YOUNG」はメッセージ性が一番強い曲になっています。歌詞では〈The beautiful die young〉って歌っていて、四字熟語の「美人薄命」から取ったんですけど、それだとそのまますぎるし、もう少しシンプルに全てを要約して伝えたくてタイトルには「BLUE」を足しました。「BLUE」という言葉には地球の青だったり、若さの青だったり、単純な年齢の若さじゃなくて人間的な未熟さの青だったり、たくさんの意味を持たせたかった。そこには、戒めというか、私たちはいつでも忘れちゃいけないことがあるんだって。この曲を歌ったりライブで演奏する度に自分たちにも言い聞かせるし、聴いてる人にももしかしたら引っかかるものがあるかもしれないと思います。

――「自分だけでどうにもならないんだけど、このまま進んでいくとヤバいぞ」ってもうわかってることじゃないですか。それをポップな楽曲に落とし込んでいる?

YOCO:この曲はそういう感じで作っていますね。

――例えばグレタ・トゥーンベリはアクティビストとして発言していますね。

MAIYA:トゥーンベリは好きです。でも自分はアクティビストにはなれないし、伝える方法を選ぶならやっぱり音楽かなって。自分は一つひとつの小さいことしかできないけど、その小さいことをみんながしてくれたらいいな、せめてこの曲を聴いて誰かが気づいてくれたらいいなと思います。音楽ではさ、大きいことってたぶん変えれないじゃん?

YOCO:そうだね。

MAIYA:The Beatlesみたいに時代を変えられる人もいるけど、うちらには無理だから。

YOCO:限られてるからね、そういう人は。

MAIYA:せめてうちらのことを聴いてくれてる人だけでも気づいてくれたらいいなって思います。

――illiomoteの真面目さは全体に滲み出てます。

YOCO:出てますよねぇ……。

MAIYA:待って。“HAPPY POP”とか言ってるのに真面目とか言われたらちょっと恥ずかしくない?(笑)

YOCO:そういうこと言うのが一番真面目でしょ? 暴かれてるよ(笑)。“HAPPY POP”って私たちが言うのも、その平和を願っての“HAPPY POP”なんです。ただ単におバカなところもあるんですけど(笑)。でもそれも含めて平和を願っているし、そのぐらいバカでも平和に安心して生活できるぐらいの世の中になって欲しいっていう願いも込めて、今後の音楽活動で、世に“HAPPY POP”を放ちたいっていう思いはあります。(石角友香)

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