Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ヤバイTシャツ屋さん、UNISON SQUARE GARDENがチャート1&2位に “3ピースでどこまでやれるか”追求するバンドイズム

リアルサウンド

20/10/10(土) 10:00

参考:2020年10月12日付週間アルバムランキング(2020年9月28日~2020年10月4日)

 今週はかつてないほどバンドものが多いチャートになりました。10位にQueen + Adam Lambertのライブ盤、8位にBon Jovi新譜、7位に緑黄色社会、そして2位にUNISON SQUARE GARDENの『Patrick Vegee』、1位がヤバイTシャツ屋さん『You need the Tank-top』です。

 話題のK-POPやアニメ作品が入ってこないのも近年では珍しいですが、それらの狭間を見てみれば、洋楽の大ベテランから話題の若手まで、ロックバンドが小規模なヒットを飛ばし続けているのが日本のアルバムチャート。先週も2位にWANIMA、3位にBUCK-TICK、6位にMONOEYESという顔ぶれがありまして、ワールドワイドな潮流を無視してバンドのダイナミズムやストーリーを求めるリスナーの傾向が見えてきます。

 さて、俎上に載せたいのは今週のワンツートップを飾ったUNISON SQUARE GARDENとヤバイTシャツ屋さん。キャリアも方向性も違うので一緒にするのはちょっと無理があるかもしれませんが、ヤバTは初週4.5万枚のセールス、ユニゾンは初週3.0万枚です。“テレビには出ないけど人気フェスでは常連”なバンドたちはフィジカルで1~2万枚売れるのが標準的なので、頭一つ抜けているというか、いわゆるフェス好きな層の外部にまで届く人気バンドと言えるでしょう。

 しいて共通点を探すなら、2バンドともかなり情報過多。せわしなく乱高下するメロディ、早口言葉のように言葉を詰め込んだ歌唱、あとはボーカルをかなり大きく聴かせるミックス。海外ではまず見られない、日本だけで発展した邦ロックの典型的スタイルです。あとは、フェス好き以外にも届く人気を誇りつつ、大衆的であることよりも自分たちがバンドであることを重視している。そこは両者の音から強く伝わってきます。

 具体的に説明しましょう。大衆性を意識するなら棘やノイズは取り除く必要があり、より聴きやすくわかりやすく、時にはピアノやストリングスも取り入れる。そうやって間口を広げてポップスのファンを取り込んできたのがMr.Childrenからヒゲダン(Official髭男dism)にまで受け継がれる“売れるセオリー”です。でも、この2バンドはあくまで3人のメンバーだけで完結する音楽をやっている。3人だけでここまで楽しそうなことができるのか、という様子を派手に見せつけながら。誰だってひとりならここまで熱くなれないしここまで騒げない。でもバンドならこういうことができる。そういう音と空気をまず全面に出すことで、ロック未体験リスナーをライブハウスに引き込んできました。大衆性よりもバンドであることを重視する、とはこういう意味です。

 話題性でいえば、旬はヤバTことヤバイTシャツ屋さんでしょう。1stアルバム『We love Tank-top』が出た4年前はイロモノの匂いが強い、本気でバンドをやっているのか茶化しているのかよくわからない印象でしたが、継続は力なり。誰にも思いつかないコミカルな曲を量産し続け、また珍妙なプロモーションを続けることによって、新しいファンはどんどん増えていきました。

 際どいことを題材にしているようで、実は誰も傷つけない。笑えるし元気が出るけど、カラ元気の励ましはまったくない。そういう佇まいも今ウケる理由なのでしょう。4枚目のアルバムにして初のオリコン1位。こやまたくや(Vo/Gt)が「バンドまじで夢ありすぎ!!!バンドやってて良かった!!!!」とツイートしていたことは先日ヤフーニュースにもなっていましたが、なんだか素直に嬉しくなります。ニューアルバムの真骨頂は、頼むから生きていてくれ、というメッセージが突き刺さるラストナンバー「寿命で死ぬまで」。こんなピュアなヤバT、初めてです。

ヤバイTシャツ屋さん – 「Give me the Tank-top」Music Video

 対してUNISON SQUARE GARDENは15年選手、人気急上昇のヤバTに比べれば、ほどよく落ち着いた中堅といったところでしょうか。ニューアルバムもバランスがよく取れていて、激しいロック、爽やかなポップス、どこかシリアスな「摂食ビジランテ」のような曲、さらにはMVが公開されてアンサンブルの変態性に世間がざわついた「世界はファンシー」みたいな曲も収録。何をやっても自分たちだという自信が伺えます。そして全曲から伝わってくるのは、やはり、ひとりではこんなことできない、でもバンドならこんなことができる、という想いの強さ。バンドを組むきっかけがユニゾンだった、という若手もますます増えてくることでしょう。

UNISON SQUARE GARDEN「世界はファンシー」MV

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む