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宝探しのような47都道府県の広告で深まった、JO1とJAMの信頼関係

ナタリー

池袋駅に貼り出された大きな「#FIND_THE_JO1」広告。メンバー内では唯一の関東出身者で、5thシングルでセンターを務める白岩瑠姫が登場している。

グローバルボーイズグループ・JO1が12月初旬にTwitterにて謎めいた告知をし、12月6日より47都道府県で「#FIND_THE_JO1」と題した広告を展開。事前に与えられた情報がかなり限られていたにもかかわらず、JAM(JO1ファンの呼称)は宝探しを楽しむかのように各地の掲出スポットに向かい、ファンダム内でその画像を共有してJO1からのメッセージをしっかりと受け取った。

2019年12月にオーディション番組を経て誕生したJO1。これまでJAMからの応援広告を受ける側だった彼らが立場を逆転させ、大規模な街頭広告を用いてファンへメッセージを伝えたことは、多くのJAMに感動をもたらした。本稿では「#FIND_THE_JO1」の展開について詳細に追いつつ、SNSを通じて築かれるアーティストとファンの信頼関係の理想形と言っても過言ではない、JO1とJAMの関係性について分析。またLAPONEエンタテインメントの「#FIND_THE_JO1」担当者へこの企画をどのような思いから立ち上げたかを聞き、その舞台裏に迫る。

取材・文 / 岸野恵加

始まりは、暗号のような数字の羅列

2021年12月2日。JO1のTwitterアカウントに突如、「#FIND_THE_JO1」のハッシュタグとともに4枚の画像が投稿された。
そこにはひたすら数字の羅列があるのみ。一見何かの暗号かと思ってしまうが、すぐさま何人ものJAMが、それぞれ47都道府県の特定の場所の緯度経度であると特定。そのスポットの大半が駅であり、添えられた数字「2021.12.6 -」から、「12月6日にこの47カ所で何かが起こるのでは」「広告ジャック?」「JO1公式アプリに搭載が予告されているARカメラと連動する?」など、さまざまな予測がファンダム内で飛び交った。

3日後の12月5日、公式Twitterで「#FIND_THE_JO1」2回目の投稿。
今度の画像では、日本地図の上にマッピングされたような配置で、47カ所にカラフルな三角形が散らばっている。そのうち11個の三角形は、JO1の11人のメンバーカラー。よく観察すると、それぞれのメンバーの出身地に配置されているように見える。ますます「12月6日に、この場所で何かが起こるのだ」という確信が、JAMの中で膨らんでいった。

ついに予告されていた当日の12月6日。Twitterを開くと、朝早くから「#FIND_THE_JO1」のタグが添えられたツイートが次々に投稿されている。そこには北は北海道から南は沖縄まで、全国のスポットで撮影された写真が。「近鉄奈良駅、純喜くん発見しました!」「池袋駅で瑠姫くんの広告貼り出されてる。すごく大きい……!」など、各地からの報告が絶え間なく続いた。そう、予告されていたスポットには、それぞれ異なるビジュアルの広告が掲出されていたのだ。
投稿の数が集まってくると、各広告には共通して黒い線のようなものがあしらわれていることが浮き彫りに。「すべての画像をつなげると何か言葉が浮かび上がるのでは」という推測により、集まった画像を整理し、ジグソーパズルを完成させるかのように並べていくJAMもちらほらと現れる。「すべての画像を集めて、メッセージを解読しよう!」と意気込み、心を1つにするファンダム。熱量たっぷりかつスピーディに、巧みな連携プレーが発揮されていく。ツイート数はすぐさま数万を超え、トレンド欄にも「#FIND_THE_JO1」が躍り出た。

神奈川県の掲出場所は久里浜駅。「県庁所在地の横浜などメジャーな場所ではなくなぜあえて久里浜に?」と思ってしまうところだが、JR横須賀線の終着駅である久里浜駅の駅番号は「JO 01」。そう、「JO1」にかけたチョイスだったのだ。こんな細かいところにも、運営側の粋な計らいが滲んでいる。
久里浜観光協会も、「気をつけてお越しください」とJAMへのメッセージをTwitterで投稿。歓迎ムードに心が温まったファンも多かったようだ。
掲出開始時期には地域によって差があったが、12月11日までにすべての広告が掲出完了。すべての広告の画像をつなげると、黒い太線で描かれたメッセージが浮かび上がった。

「ぼくたちは、いつでもひとつ。」

“拡散力No.1グループ”からファンダムへの厚い信頼

JO1は2020年3月に「PROTOSTAR」をリリースしてデビューするも、同時に世界中に蔓延した新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、その活動はことごとく制限された。通常のグループがデビュー後すぐに行うような、有観客ライブやファンとの交流イベント……彼らはすべて経験できず、初のワンマンライブも、無観客でのオンラインライブとして行われた。

2021年秋には本来は全国ツアーを開催するはずだったが、千葉・幕張メッセでのワンマンライブ5公演に変更。ついにファンへ直接パフォーマンスを披露できた感動はとても大きかったようで、メンバーは終始感慨深そうな表情を浮かべていた(参照:JO1が始まりの地で叶えた念願の初有観客ワンマン、JAMと一緒に開いた未来へ続く新たな扉)。
結成から約2年もの間、対面で交流ができないことは苦しかったに違いないが、その一方で、JO1とJAMはSNSを活用して絆を深めてきた。TwitterやInstagram、TikTok、Weiboなど、さまざまなSNSでほぼ毎日アーティストサイドから発信が行われ、ファンの熱を冷めさせない。そしてJO1のファンダムもTwitterを駆使してJO1の活動を盛り上げることで知られており、先日Twitter Japanが発表した「もっとも使われたハッシュタグ」のミュージック部門では「#JO1」が2年連続で1位を獲得したほか、JO1の楽曲のタグ「#Prologue」が6位にランクイン。さらに@official_jo1が「もっともメンションされたアカウント」ミュージック部門と「もっともツイートされた著名人」で1位に輝いた。このことから“拡散力No.1グループ”の称号とともにJO1が紹介されることも少なくない。歌番組などに出演する際は「JO1」が付いたハッシュタグがトレンド欄を賑わすことがおなじみの光景で、運営側から特定のハッシュタグが発信されることもある。

今回の「#FIND_THE_JO1」で運営側が告知したのは、冒頭で述べたようにたった2つのTwitter投稿だけ。こうした大型広告を掲出する際にはお決まりの、メディアにプレスリリースを撒くということも一切行われなかった。そこには「JAMならば必ずしっかりと意図を汲み取り、Twitterを駆使して企画を楽しんでくれるだろう」という、運営側からファンへの強い信頼が覗いている。

JO1と結びつきの深い広告で「今すぐ君に逢いに行くよ」

韓国の人気オーディション番組の日本版「PRODUCE 101 JAPAN」を経て結成され、日本の吉本興業ホールディングスと韓国のCJ ENMによる合弁会社・LAPONEエンタテインメントに所属するJO1。楽曲やパフォーマンスのみならずさまざまな面において、韓国式の手法が取り入れられている。

そんなJO1にとって、広告と言えば応援広告は馴染み深い存在だ。応援広告とは芸能人の誕生日などを祝う目的でファンが共同で出稿するもので、韓国では「センイル広告」と呼ばれて浸透している。日本でも「PRODUCE 101 JAPAN」をきっかけに認知が広がり、今やさまざまな広告会社が応援広告のプランを用意しているほどだ。
JO1は公式サイトに広告の規定を記載しており、ロゴやジャケット写真などの素材を提供。メンバーの誕生日が近付くと、各地にメンバーの応援広告が登場することが恒例になっている。「#FIND_THE_JO1」の期間にも、12月11日にメンバーの鶴房汐恩が誕生日を迎えることを祝した応援広告がファンの手によって展開されていた。
オーディション時代からファンが活用してきた広告という媒体を用いて、今度はアーティスト側がファンを楽しませた「#FIND_THE_JO1」。広告はメンバーの写真をメインに歌詞の一節が小さく添えられたシンプルなデザインで、「JO1」のロゴすらこじんまりとしている。翌週の12月15日にリリースされる5thシングル「WANDERING」を広く宣伝することを目的としたものとしては控えめと言ってよく、とにかくファンを喜ばせたかったという意図が感じ取れる。新曲「僕らの季節」の「今すぐ君に逢いに行くよ」という歌詞をなぞるように、ツアーで各地に行くことが叶わなかった代わりに広告という形で、JO1は全国のJAMの元へ現れた。

「運営側が感動をもらってしまいました」

「#FIND_THE_JO1」ではポスタータイプからデジタルサイネージ、一面の壁を覆うような大型広告まで、サイズもデザインも47都道府県すべてで異なるものが用意された。事前に47カ所の広告枠を押さえ、すべて異なるクリエイティブを用意して掲出するには、かなりの調整と下準備が必要であったことは想像に難くない。担当者はどのような思いから企画に至ったのか。

「10月9日にJO1メンバー1人の一時活動中止が発表されました。これは本人およびJO1にとっても大変残念なことでしたが、メンバー、運営は今回の出来事でショックを受けるJAMの皆さんが心配でした。しかし発表直後の反応はJO1への慰めや励ましの言葉がほとんどで、特に『#空はつながっとんねん』で広がったJAMの皆さんの温かいメッセージにはJO1および運営一同、大きな感動をいただきました。『WANDERING』のプロモーションプランを立てる際に一時活動中止になったメンバーは参加できなかったですが、JO1を応援してくださっているJAMの皆さんに何か恩返しができるものはないかを内部で議論し、JAMの皆さんに向けて『JO1も一時活動中止になっている仲間も全国のJAMの皆さんも、僕らはいつも1つ』というメッセージを、全国規模で展開する広告の形で、JAMの皆さんも参加して楽しんでいただくことのできる考察要素を入れて展開することにしました」(LAPONEエンタテインメント担当者)

そこに込められていたのは“恩返し”の思いだった。限られた告知でJAMにメッセージがしっかり伝わるか、不安な気持ちはなかったのだろうか。

「掲出がスタートする前に公式アカウントを使って謎解きができる手がかりを掲載しましたが、その意図をJAMの皆さんが受け取れないと意味がありませんので、どのような手がかりを出せばいいのかを決めるのもなかなか大変なことでした。しかし実際掲出がスタートしてから、予想したより大きな反応があり、全国のJAMの皆さんが驚くほど速いスピードで広告を探し出してくださって。SNSを通じての見事な連携プレイで、あっという間にメッセージを完成してくださいました。SNS上で展開されるJAMの皆さんのさまざまな反応を見ながら、感謝の気持ちを伝えるために展開した広告のはずだったのに、今回もまた運営側が感動をもらってしまいました。JO1とJAMの皆さんは本当に素敵な関係性だと改めて気づかされましたし、いつまでもこの関係性を守っていきたいと思いました」(LAPONEエンタテインメント担当者)

「ぼくたちは、いつでもひとつ。」

その「ぼくたち」はもちろん、JO1とJAMを指しているのだろう。
今後も世の中がどのような状況になるかは誰にも予想はできないが、JO1とJAMの絆が、この企画を経てさらに強まったことは間違いない。

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