視線を逸らす、視線を向ける、視線を合わせる。映画を観ていて気になるのは、そんな出演者の目の動きだ。言葉よりもはるかに多く、人の感情が伝わってくるからだ。 「PFF・オンライン映画祭」の第5夜。山中瑶子監督『あみこ』も強く「視線」を意識した作品だ。長野の女子高生・あみこは、男子生徒のアオミと帰り道に語り合い、「魂の会話」を交わしたと確信する。恋心が芽生えた瞬間だった。しかし、アオミは途中から学校に来なくなる。高校の先輩女性と付き合い、東京にいることを知ったあみこは…。 田舎道を並んで歩く2人は饒舌だ。ただ、視線はほとんど交わらない。東京で再会したときも。心が通うことのない2人の様子がもどかしく、滑稽だ。 続いて配信された山中監督の新作『魚座どうし』もラストシーンの視線の交錯に心が打たれた。どのように映像で表現されているか、ぜひ観て確認してほしい。 視線のつながりで言えば、映画祭第１夜の李相日監督『1001のバイオリン』にも、似た印象を受けた。東日本大震災後、登場人物たちは苦悩を抱えて日々を生きているが、何とか前を向こうとする。視線は平行線だが、「視線の先」の希望を強く想起してしまう演出が素晴らしい。 ●PFF・オンライン映画祭日程　(配信期間は開始より1週間です) 【第1夜】7月4日(土) 21:00～配信開始　上映：李相日監督作品『青～chong～』(※PFFアワード2000グランプリ)、『1001のバイオリン』 トーク：李相日(映画監督)×妻夫木聡(俳優)　 【第2夜】7月5日(日) 21:00～配信開始　上映：市井昌秀監督作品『隼(はやぶさ)』(※PFFアワード2006準グランプリ) トーク：市井昌秀(映画監督)×眞島秀和(俳優)　 【第3夜】7月6日(月) 21:00～配信開始　上映：市井昌秀監督作品『無防備』(※PFFアワード2008グランプリ／初配信) トーク：市井昌秀(映画監督)×MEGUMI(女優) 【第4夜】7月7日(火) 21:00～配信開始　上映：山岡信貴監督作品『縄文にハマる人々』 トーク：山岡信貴(映画監督)×片桐仁(芸人・俳優・彫刻家) 【第5夜】7月8日(水) 21:00～配信配信　上映：山中瑶子監督作品『あみこ』(※PFFアワード2017観客賞)、『魚座どうし』(※初配信) トーク：山中瑶子(映画監督)×池松壮亮(俳優) 【第6夜】7月9日(木) 21:00～配信開始　 ＜プレミア配信＞第1回大島渚賞記念 特別先行上映　上映：小田香監督作品『セノーテ』 トーク：小田香(映画監督)×石川直樹(写真家) ※本作は、PIA LIVE STREAM のみでの配信となります