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『MEG ザ・モンスター』から振り返る“サメ映画”人気 『ジョーズ』の壁をどう乗り越えた?

リアルサウンド

20/8/8(土) 12:00

 『MEG ザ・モンスター』がフジテレビ系で8月8日21時より地上波放送されます。古代から生き続けていた恐竜時代の巨大サメが現代によみがえり、人々を襲います。この作品はそんなに残酷なシーンもなく、海洋冒険アクション映画としてもよくできているので、ホラーが苦手という人も十分楽しめるでしょう。一方劇場では『海底47m 古代マヤの死の迷宮』という、サメが出てくるスリラーが公開されています。この夏はちょっとしたサメブームですね。実はサメが出てくるホラー・サスペンス映画というのは非常に多い。“サメ映画”というジャンルワードがあるぐらいで、僕より詳しい方は大勢いらっしゃると思うのですが、なぜサメ映画がここまで人気なのか自分なりに考えてみたいと思います。

 実は『MEG ザ・モンスター』というのは日本独自のタイトルで、現代は“メグ”のままです。メグとは古代巨大ザメ、メガロドンの略。ただ日本だと“魔女っ子”みたいに愛らしいので(笑)、ザ・モンスターと補ったわけですが、ここで興味深いのは『MEG ザ・モンスター』であって『MEG ザ・シャーク』にしなかったことです。また『海底47m 古代マヤの死の迷宮』もインディ・ジョーンズっぽい冒険モノ風のタイトルで、サメ映画感はないですよね。つまりこれは両作をあまりサメ映画に見せたくなかったのではないかと思います。

 それは例えばブラッド・ピット出演の『ワールド・ウォーZ』が実質はゾンビ映画ですが、ゾンビという言葉を宣伝上使わなかったことに似ています。これは逆にいえばサメ映画やゾンビ映画がいかに多いか、ということの裏返しです。ですから『MEG ザ・モンスター』『海底47m 古代マヤの死の迷宮』も十把一絡げに“サメ映画”として売りたくなかったということでしょうか?

 サメ映画をブレイクさせたのは、なんといっても1975年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の『JAWS/ジョーズ』。『JAWS/ジョーズ』以前のサメ映画というと、z956年に『The Sharkfighters(原題)』という作品があり、これは艦が沈没し、海に投げ出されたアメリカ海軍の兵士をサメたちから守るため奮闘する科学者を描いた作品です。これ以外にもサメとかワニというのは当時の冒険映画でピンチを演出するシーンで登場しています。1966年、TVドラマ版『バットマン』をベースにした映画では、バットマンにサメが食いつくというサスペンス(?)なシーンがあるのです。しかし『JAWS/ジョーズ』が画期的だったのは、人喰いザメ自体を“主人公”にしたことです。当時の映画評論の中で 『JAWS/ジョーズ』を“白鯨”や“キングコング”と比較するものがあったのです。白鯨は鯨、キングコングはゴリラですが、両者とも単なる生物を超えてもっと神がかった存在、モンスターとして描かれていました。『JAWS/ジョーズ』のサメ(ブルースという愛称があります)も単なる“海の脅威”を超えた、キャラの立った存在だったのです。

 『JAWS/ジョーズ』の大ヒットは、『JAWS/ジョーズ』自身の続編も含め、たくさんの派生作品を作ります(『キングコング』もポスト『JAWS/ジョーズ』として1977年にリメイクされます)。『JAWS/ジョーズ』というお手本があるからマネしやすかったのと、モンスター映画としてサメは手っ取り早い。なぜならモンスターのデザインや設定を考える必要がないからです(笑)。

 しかしながら、サメをテーマに『JAWS/ジョーズ』を超える作品は出てきませんでした。そうした中、サメ映画としてヒットを飛ばしたのが、1999年の『ディープ・ブルー』という作品です。ここに出てくる人喰いザメは人為的に知能を強化されているので、見た目こそサメですが、実際はモンスターそのもの。あっと驚く手法で主人公たちを襲います。1993年に『ジュラシック・パーク』が公開され、CGによるクリチャー表現が花開いた時期でもあるので、今までのサメ映画にない見せ方もできたのでしょう。『JAWS/ジョーズ』を観たことのない新しい映画ファンにとって新鮮だったと思われます。

 『ディープ・ブルー』の成功はまたサメ映画に脚光を与えますが、次にブレイクするのは、アメリカでは有料放送用に作られた作品『シャークネード サメ台風』(2013年)から始まるシリーズです。台風(トルネード)が海水を巻き上げ、大都市に人食いザメが降ってくるというすごい設定です(笑)。サンディエゴ・コミコンの時には『シャークネード』のプロモーションが派手に行われ、ファンの間では人気です。

 こういう風にサメをネタにしたトンデモ作品というのもブーム化されますが、その一方で『オープン・ウォーター』(2004年)、『ロスト・バケーション』(2016年)、『海底47m』(2017年。監督は『海底47m 古代マヤの死の迷宮』と同じヨハネス・ロバーツ)というリアルなサメの脅威=サメのいる海や場所に取り残された人のサバイバルを描いた秀作サスペンスも多いのです。

 興味深いのは、『JAWS/ジョーズ』(1975年)から約25年経って『ディープ・ブルー』(1999年)が、『オープン・ウォーター』(2004年)から10年〜15年ほど経って『シャークネード サメ台風』(2013年)、『海底47m』シリーズ(2017年)、『MEG ザ・モンスター』(2018年)と、何年かブランクをあげてエポックメイキング的なサメ映画の傑作が生まれていることです。

 自分を含め古い映画ファンはどうしても『JAWS/ジョーズ』と比べてしまうのですが、それぞれの世代に自分がベストと思うサメ映画がちゃんと用意されている。こうしたことがこのジャンルを活性化されているのかもしれません。さて、個人的にサメが登場する映画で忘れられないのが、MYベストゾンビ映画である『サンゲリア』(1979年)。なんと、サメとゾンビが海中で戦うシーンがあるのです(笑)。ブームだったサメ映画の要素をゾンビに取り入れたわけですが、こういうサービス精神大好きです!

■杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画に関するコラム等を『スクリーン』誌、『DVD&動画配信でーた』誌、劇場パンフレット等で担当。サンディエゴ・コミコンにも毎夏参加。現地から日本のニュース・サイトへのレポートも手掛ける。東京コミコンにてスタン・リーが登壇したスパイダーマンのステージのMCもつとめた。エマ・ストーンに「あなた日本のスパイダーマンね」と言われたことが自慢。現在発売中の「アメコミ・フロント・ライン」の執筆にも参加。Twitter

■放送情報
『MEG ザ・モンスター』
8月8日(土)21:00〜23:10、フジテレビ系にて放送(※一部地域を除く)
出演:ジェイソン・ステイサム、リー・ビンビン、レイン・ウィルソン、ルビー・ローズ、ウィンストン・チャオ、ペイジ・ケネディ、ジェシカ・マクナミー、オラフル・ダッリ・オラフソン、ロバート・テイラー、クリフ・カーティス、ソフィア・シューヤー・ツァイ、マシ・オカほか
監督:ジョン・タートルトーブ
原作:スティーヴ・オルテン(『THE MEG』)
撮影:トム・スターン
美術:グラント・メイジャー
(c)Warner Bros. Entertainment Inc.

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