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LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

幼い頃から吹き込まれていた、スウェーデンの有名な事件を描く『ストックホルム・ケース』

月2回連載

第56回

人の感情ってのはつくづく不思議なものだと思う

今回紹介する2作品は、どちらも現在公開中のものです。まずは洋画から。私の故郷、スウェーデンで実際に起きた事件を基にした『ストックホルム・ケース』です。

舞台は1973年。劇場型の事件が発生します。それは人質をとった銀行強盗事件。犯人のラースは自由と夢の国アメリカに行くため、アメリカ人を装ってストックホルムの銀行を襲い、その際にビアンカを含む3人の人質をとって立て籠もります。

『ストックホルム・ケース』

ラースは警察への脅迫で、ワルの仲間で刑務所に服役中のグンナーの釈放に成功。それから彼は人質と交換に、逃走車と金を要求し、グンナーと共に逃げる計画を立てていました。ところが、対する警察は彼らを人質ごと銀行の中に封じ込めるという作戦に。現場には報道陣がつめかけ、長期化する事件を報道する日々が始まります。そのとき、銀行の中では、ラースとビアンカたちの間に不思議な関係が芽生えはじめ……。

イーサン・ホークが主演し、彼がチェット・ベイカーを演じた『ブルーに生まれついて』のロバート・バドロー監督の新作です。

『ストックホルム・ケース』

この事件の当時、私はまだ3歳だったので詳しくは知らないはずなんです。なのに、その後から今に至るまで、「もし人質にされるような事件に巻き込まれたら、犯人の警戒心を解いて、その隙に逃げよう」と思っているんですよね。ということは、どこかでこの事件のことがすり込まれていたってこと。きっと覚えてないくらい小さいときに、誰かから吹き込まれていたんでしょう。それくらいに有名な事件。犯罪ドラマや映画でよく使われる“ストックホルム症候群”という言葉の基となった事件でもあります。

『ストックホルム・ケース』

敵対した関係にあるはずなのに、幽閉された環境が長引くと、関係性が全く違うモノになっていく。人って本当に不思議なものですよね。身近なところだと、恋愛結婚ではなく、お見合いで結婚をしたとしても、一緒に生活しているうちに相手との関係が変わってくるじゃないですか。それと似ているのかな……? いずれにしても、人の感情ってのはつくづく不思議なものだということがよく分かります。

『ストックホルム・ケース』

ちなみに本作はスウェーデンでのロケ撮影をしているんですが、おそらく1973年当時そのままの風景。ええ、ストックホルムは昔から風景が変わってませんから(笑)。私にとってはおなじみの風景が観られました。ロケのときは美術担当、とても簡単だったんじゃないかな。あ、それと、ラースの仲間グンナーを演じているのは、私のオシ俳優、マーク・ストロングというのもうれしかったですね。

ちょっと可愛いエピソードも面白い! シングルファーザー家庭の奮闘記

もう1作品も実話を基にした『461個のおべんとう』。TOKYO No.1 SOUL SETの渡辺俊美さんのエッセイ『461個のおべんとうは、親父と息子の男の約束。』を原作にした作品です。

長年連れ添った妻と別れ、一樹は息子・虹輝と共に暮らすことになります。一樹と暮らすことを選んだのは虹輝で、彼としては非常にありがたかった反面、15歳の思春期まっただ中の息子に、いきなり父子ふたりの生活を強いる罪悪感を抱いていました。そんな虹輝は高校に進学し、昼食は父の弁当がいい、と言ったことをきっかけに、一樹は毎日息子のための弁当作りをする決意をします。近年の日本では当たり前のことになってきた、シングルファーザー家庭の奮闘記です。

『461個のおべんとう』

日本のお弁当文化ってとても素敵ですよね。スウェーデンにはないので観ていて羨ましかった。一度、小学校の遠足のときに、母が海苔で巻いたおむすびを持たせてくれたことがありましたが、それを見た友達は「爆弾だ!」と……。真っ黒で丸い食べ物なんてありませんでしたからね、スウェーデンで(泣)。

一樹の場合は、ミュージシャンの仕事をしているだけに、いろいろとつきあいもありますが、それでも虹輝のために毎日欠かさず手作りの弁当を作ります。心をこめたお弁当は、いつ食べてもおいしいもの、ということがこの作品を観るとよく分かると思います。

『461個のおべんとう』

また、ミュージシャン一家ならではのシチュエーションも面白い。虹輝が枕の下に隠していた雑誌は、父の載っていた音楽雑誌。恥ずかしいから隠すんでしょうけど、こういうときってエロ雑誌では!?と思いますよね。でも、虹輝にとっては父の関係する雑誌の方がエロ雑誌よりも見られるのが恥ずかしかったんでしょう。そんな、ちょっと可愛いエピソードも盛り込まれていますよ。

※次回は11月27日(金)に更新予定です!

取材・文:よしひろまさみち/撮影:源賀津己
(C)2018 Bankdrama Film Ltd. & Chimney Group. All rights reserved. 
(C)2020「461個のおべんとう」製作委員会

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売された。

『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』

講談社 1400円(税別)
発売中

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