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和田彩花の「アートに夢中!」

オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち

毎月連載

第27回

今回紹介するのは、横浜美術館で開催中の『オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち』(2020年1月13日まで)。パリのセーヌ川岸に建つ、オレンジ温室を改修した瀟洒な佇まいのオランジュリー美術館。画商のポール・ギヨームが基礎を築いた同館所蔵の印象派とエコール・ド・パリの作品群は、オーギュスト・ルノワールをはじめ、ポール・セザンヌ、アンリ・マティス、パブロ・ピカソなど名作がそろった世界屈指のコレクションとして知られている。現地にも実際に足を運んだことがある和田さんが、今回の展覧会で気になった作品とは?

画家別、年代順で見やすい!

最近、西洋近代絵画の展覧会がたくさんあって、見なければいけない展覧会が盛りだくさんです。私的にはとっても嬉しいのですが、ちょっとフランスが渋滞してる感じです(笑)。

今回の展覧会もすごく面白かったんですが、特によかったのが、画家別、年代順で見られるところ。

オランジュリー美術館って私のイメージはクロード・モネの《睡蓮》。実際に現地に行った時も、モネの《睡蓮》のことしか考えていなくて、こんなにたくさんの作品を持っているのかと、驚いた覚えがあります。

ただそれって、フランスでは当たり前のことなんですよね。いろんな美術館に印象派の画家たちの作品が収蔵され、展示されていることは。だから長くいるとそれが当たり前になって、普通のものに感じちゃったりして。

でもやっぱりこの時代の作品ってすごく面白いし、大好きです。

冷静な画家セザンヌ

ポール・セザンヌ《小舟と水浴する人々》1890年頃 油彩・カンヴァス 30×125㎝オランジュリー美術館蔵

最近、セザンヌがすごく好きなんです。きっかけは東京都美術館で開催中の『コートールド美術館展 魅惑の印象派』。ここでセザンヌの面白さを知ったんです(笑)。もうすでに3回足を運んでいるんですが、行くたびに「セザンヌやっぱりすごい!」って思うようになりました。

『コートールド美術館展』に、セザンヌが画家のエミール・ベルナールに宛てた手紙が出品されていたんです。それがとっても面白くて、興味深くて。だって画家の手紙の本物が目の前にある上に、その手紙にはセザンヌの芸術論が記されている。それだけでワクワクしてしまって。

そしてそれを見たことで、セザンヌのことが急に理解できるように思えたんです。そうだよね、そういうふうに見てたんだよね、描いてたんだよねって。その上で作品を目の前にすると、これまであまりよさを感じてなかったのに、すごく面白くなっていきました。

セザンヌはすごく構築的というか、画面を作り込んでいく画家だと思います。いろんな側面からモチーフを見ているし、その視点も独特だけど、画面の上できちんとバランスを取っていくんですよね。そう考えると、セザンヌは「形」というところからものを見ていて、その形をどう画面に当てはめていくかとか、パズルをしているように思います。その上で作られた画面は、バランスがいいとか綺麗な画面というわけではないけれども、破綻もしていない。絶妙なバランスで成り立っているけれども、不快感もないんです。「近代絵画の父」と呼ばれる所以はそういうところにあるのか、ということがよくわかりますね。

今回展示されているセザンヌ作品の中では、すごく透明感があふれる《小舟と水浴する人々》という作品が好きです。色彩的な面でも面白さを感じますが、画面の作り込み方の細かさにも目が惹かれます。感情の赴くままに筆を動かしているというよりも、一筆一筆、筆の置き方を揃えていて、一種、秩序をもって画面を構成している。だから色の透明感が出てきて、すごく見やすい。それに空気感が伝わってきます。

そういうことから、セザンヌってとっても素敵なんだって気付かされました。そして何というか…、セザンヌってさっぱりしてるんだなって。画面をものすごく作り込んでいるけれども、そこに激情というか、迸る思いというような熱さはなくて、綿密に、冷静に画面と向き合うセザンヌの姿が見えるんです。

本当に自分でもびっくりするぐらい、一気に好きになりました(笑)。もちろんまだ解釈が難しい作品もありますし、まだまだ知らないことが多いので、マネに続いてこれから勉強していきたい画家です。

色の画家マティス

アンリ・マティス《ソファーの女たち(別名:長椅子)》1921年 油彩・カンヴァス 92×73㎝ オランジュリー美術館蔵

そしてマティスも今回引っかかった画家です。マティスといえば色。画面を構築していくというよりかは、色を優先しているように気がします。

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