片桐仁の アートっかかり!
最終日まで進化し続けます!『粘土道 20周年記念 片桐仁創作大百科展』をセルフレポート!
毎月連載
第32回
コツコツ作った約200点の粘土作品に囲まれた片桐さん
「あらゆるものに粘土を盛る」というコンセプトで、20年以上にわたって様々な作品を作り続けてきた片桐さんが、大回顧展を開催!『粘土道 20周年記念 片桐仁創作大百科展』が、東京ドームシティ Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)で12月19日(日)まで開催中です。いつもはいろいろな美術展を訪ねる片桐さんですが、今回は特別にご自身の展覧会をレポートして頂きました!
この展覧会は常に進化し続けています。なぜなら気がついたらキャプションに修正や加筆をしたり、僕の家族や友人たちが大作の《公園魔》に、粘土の顔を付け加えてくれたり、家にあるものを片桐家リビング再現コーナーにどんどん持ち込んだりしているから。だから、1度見た人でも新しい発見があるはず。最終日まで何度でも来てくれるとうれしいですねえ。
たとえば、入り口にある「『俺』年表」。中に記載されている作品のタイトルが違っていることに長男が気づきまして、マジックで直しました。家族の一員に犬のハナちゃんが加わったことが載ってないと妻が気づいたので、その場で書き加え。一家総出で校正していますね。あと、バナナマンライブに行ったこととか、ターニングポイントになったことも、気がついたときに書き加えています。
めくるめく粘土の世界
粘土作品は、1999年の第一作《俺ハンテープ台》以来たくさん作っています。口からセロハンテープが出てるの見えるかな? 普通のセロハンテープ台に粘土を盛り付けて作りました。20年前に作ったものだからボロボロで、右腕は新たに作り直しています。会場で左腕と見比べてみてください。
連載で作る作品はいろいろな文房具や道具の機能を保ったまま、粘土を盛っていくのがコンセプトです。いろんなものに粘土をつけていきましたよ。これは《イグバナナ》。イグアナ型のバナナケースです。ゆるやかな曲線がポイントですね。
あ、この《タコスク》のキャプションは以前開いた展覧会のときの内容のままだ。いま直しちゃいましょう。《タコスク》はフリスクケースで、作った当時は商品化できていなかったんです。でも、展覧会後に無事商品化されて、完売もしたんですよ。ありがたいことです。
はい、無事にキャプションの修正も完了。こうやって、気づいたら少しずつ直していっています。
歴代使っていた携帯電話は、全部粘土を盛りました。アンテナが延びたり、折りたたみだったり、20年の間に大きく変わりましたね~。携帯の進化の歴史も学べるかも?(笑)。
縄文シリーズは青森県からお声をかけていただいたのがきっかけで作るようになりました。作ってみて気付くことも多いんですよ。火焔型土器はギザギザした突起『鶏頭冠』が、ふちに4つあるのが特徴なのですが、1つだけ突起の数が1つ少ないんです。丁寧に見て、作っていくと気付くことって多いんですよね。
片桐仁の少年時代
あと、展覧会がスタートしてから意外に評判がよかったのが、子どものころの絵画作品のコーナー。小学生のときから高校生のときまでの作品を並べています。小学校3年生のときに金賞を取った《牛》は実家の壁から剥がしてもってきたので、画鋲の跡もしっかりついています。右上に金賞を取ったことがわかる金色の色紙がついたままのもポイントです。
これ(下の写真)は、高校の昇降口を描いたもの、高2の時に描きました。高校で唯一賞を取った絵です。ちなみに、全国高校美術展の特選に選ばれてはいますが、たくさんの人が特選を取れます。その上に推奨っていう賞もあったりします。
土足で出入りする学校だったから下駄箱はありません。展覧会に来てくれた高校の同級生たちが、この絵を見て、口々に「懐かしい〜」って言ってくれました。もうこの校舎は建て替えられたので。絵って記憶を呼び覚ます働きもあるのだなって改めて気づきました。
全国各地を取材歩き
雑誌TV.Brosの『おしえて何故ならしりたがりだから』も2003年から続いている連載です。この連載では、いろいろなところに行ってその模様や感想を絵にするんですが、粘土と違っていつも緊張しちゃう。会場ではイラストや、取材のときに撮った写真や作ったものを並べてます。本当にいろいろなところに行っているなあ。
超大作《公園魔》
そして、こちらがクラウドファンディングでたくさんの方にサポートしていただいた大作《公園魔》です。故郷の埼玉県宮代町にあるタコすべり台がモチーフ。地獄の閻魔様をモチーフにしています。しかし、粘土をいくら貼り付けてもできあがらず、家族やスタッフ、後輩芸人、最後には宮代町の町長まで駆けつけて、粘土を貼り込んでもらって作っていきました。ベロの上にはタイルが敷いてあるんですけど、消毒ができるようにとたまたま遊びにきてくれたタイル屋さんと一緒に貼りました。お客さんもここに座ることができます。
そして、この作品の見どころは裏側にもあります。
この展覧会に来てくれた友人や知人が、芳名帳の変わりに粘土で顔をつくって貼り付けてくれているんです。次男が作業に飽きて、いきなり作品に顔を貼り付け始めたのがきっかけなんですけどね。エレキコミックのやついと今立、しりあがり寿さんに、大学時代の友達、レキシの池ちゃん、ジョビジョバのマギーさん、そしてこれは天神さんというガンプラの箱の絵を描いている方に海洋堂のフィギュアの原型なんかを作っている造形家の竹谷さん……。数え切れません。
なので、最終日になったら《公園魔》の裏側は顔で埋め尽くされているんじゃないかな。粘土って不思議なもので、顔を作って貼ってくれって頼むと、みんな気負わずにやってくれるんですよ。絵を描いてくれって頼んだらきっとみんな緊張しちゃう。でも、粘土だと適当に、自由にやってくれる、それがいいんですよね。会場のワークショップも非常に好評でうれしいです。みんなこれを機会に粘土をはじめてくれるといいなと思います。
アットホームな片桐家を再現
片桐家リビング再現コーナーは、初日と比べてものがいっぱい増えました。子どもたちが、壁に貼ってあるものをどんどん持ってきちゃうんです。展覧会前は、次男はここで熟睡してましたね。
そして、こちらにおいてあるスクラップブックは、次男の自由研究で作ったスクラップブック。雑誌『てれびくん』のなかで使われている平仮名の数を全部切り出して調べるというもの。
一応、小学生とはいえ研究ですから、作業に取り掛かる前に、予測も立てさせています。なんで「ん」が一番多いと思ったんだろう?
表のページの平仮名を切り取ると、裏のページの平仮名が切り取れなくなるので、この研究では「てれびくん」を2冊使った豪華なものです。アイデアは次男ですが、作業はほとんど父と母でやりました、本当に疲れた!
かなりの労作なので、会場にぜひ見に来てもらいたいです。
アーティストとのコラボ作品も!
そして、自分の展覧会では初の試みとして、いろいろなアーティストの方々とのコラボレーションを行いました。
トータス松本さんや大宮エリーさん、野性爆弾のくっきー!さんのほか、フィギュア造形作家の竹谷隆之さんや、イラストレーターの横山宏さん、デハラユキノリさん、そしてプラモデル系YouTuberのせなすけさんと、バラエティ豊かなメンバーが、僕の作った《ペットボ土偶》や《ウドンケンシュタイン》に色を塗ったり、プラスアルファしてくれています。誰がどの作品を作ったのかは、会場でのお楽しみ。一部の作品を出品するチャリティオークションも開催予定です。
このほかにも、いろいろな作品を展示しています。まだいらしてない方も、一度来た方も、最終日まで何度も来てくれるといいですね。ぜひ、皆様のご来場をお待ちしています!
構成・文:浦島茂世 撮影:源賀津己
プロフィール
片桐仁
1973年生まれ。多摩美術大学卒業。舞台を中心にテレビ・ラジオで活躍。TBS日曜劇場「99.9 刑事事件専門弁護士」、BSプレミアムドラマ「捜査会議はリビングで!」、TBSラジオ「JUNKサタデー エレ片のコント太郎」、NHK Eテレ「シャキーン!」などに出演。講談社『フライデー』での連載をきっかけに粘土彫刻家としても活動。粘土を盛る粘土作品の展覧会「ギリ展」を全国各地で開催。