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NiziU、日向坂46……“ポジティブさ”が愛されるワケ 2020年代グループトレンドの変化を読む

リアルサウンド

20/9/1(火) 6:00

 ソニーミュージックとJYPエンターテインメントの合同オーディションプロジェクト『Nizi Project』から誕生したガールズグループ・NiziU。プレデビュー曲「Make you happy」が、オリコン週間デジタルランキング史上初となる初登場3部門同時1位を獲得するなど、本格的なデビュー前から大ブレイクの兆しを見せている。同曲は、明るいサウンドに乗せた〈Ooh I just wanna make you happy あ~もう!笑ってほしい 忘れちゃった笑顔も大丈夫ちゃんと取り戻して〉など前向きな歌詞が特徴的な楽曲だ。

 そして、坂道シリーズのなかで明るい楽曲が目立つ日向坂46。新曲「アザトカワイイ」のMVは、8月20日にYouTubeで公開するとすでに400万回再生を突破するなど話題に。天真爛漫に踊るダンスや、青と白のコントラストで爽やかさを前面に出している。

日向坂46 『アザトカワイイ』

 今世間から大きな注目を浴びる両者に共通するのは、「ポジティブ感」だ。

 2010年代後半には、欅坂46の「サイレントマジョリティー」や「不協和音」、BTSの「IDOL」などメッセージ性の強い楽曲のヒットが多かった。一方、2020年代に入ってからは、前述の「Make you happy」や「アザトカワイイ」のように、ハッピー感が前面に出ている楽曲が話題を集めているように感じる。“クールで強い”楽曲が支持されていた2010年代から、“ポジティブでハッピー”な楽曲が求められている現在。楽曲から見えるアイドルグループの変化について考えていきたい。

 まず、NiziUの「Make you happy」が愛されている理由を考察してみると、その一つには時代背景があるように感じる。新型コロナウイルス禍で、どこか殺伐とした空気が漂うなか、動画配信サイト『Hulu』や情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)で放送されていた『Nizi Project』。より、彼女たちの健気さやポジティブさが輝いて見えて「ほっこり感」を与えてくれた。聴いているだけで楽しくなるような「Make you happy」の曲調も、今の時代にそぐうのかもしれない。ステイホームが謳われる中で放送されたこともあり、普段は朝の情報番組を観ることができない層の支持を得ることができたこともヒットの一因だろう。

NiziU 『Make you happy』 M/V

 この「ほっこり感」は、“ハッピーオーラ”をテーマに掲げている日向坂46にも同じことが言える。「アザトカワイイ」から感じる青春の疾走感や、キュートで爽やかな衣装。ファンのことを「おひさま」と称するように、陽だまりの中にいるかのような雰囲気。楽曲の雰囲気はもちろん、見ているだけで楽しくなるようなオーラが特徴的である。9月23日にリリースされる1stアルバム『ひなたざか』のジャケット写真は、光を受けているメンバーの写真で構成されており、「おひさまからの光を受け、ファンとも繋がっている」というメッセージも込められている。ファンとの結束力も、彼女たちの強みだろう。

 しかし、前述のNiziUも日向坂46も、ただポジティブなだけではない。苦しみや悲しみを乗り越えた上に成り立っているポジティブさが、ヒットの本質のように感じる。

 例えばNiziUは、番組内でオーディション中の葛藤や苦悩を見せていた。ポジティブな部分だけを見せるのではなく、辛い部分やそれを乗り越えるための努力も見せる。だからこそ、共感を生むのだろう。なかでも、グループのエースと呼ばれていたMIIHIが陥ったスランプ。いつも笑顔を浮かべていた少女が、「ただ楽しかったステージが、いろいろなことを考えすぎてしまい、心から楽しめなくなっていた」と話し、仲間の前で「たまにあるよ。1人で泣いてまた元気になって」と涙をこぼす。そして、そのスランプを乗り越えて、「Make you happy」では、笑顔で〈忘れちゃった笑顔も 大丈夫ちゃんと取り戻して〉と歌う。そんな風に、ネガティブを乗り越えた先のポジティブだからこそ、感動を呼び、心が動かされるのかもしれない。

[Nizi Project] Part 1 #10-1
[Nizi Project] Part 2 #10-2

 また、日向坂46は、昨年の3月に単独でのシングルデビューを果たすまでは、「けやき坂46」の名で活動。欅坂46のアンダーグループとして、約3年に渡り下積みを積んでいた。デビューの見通しも立たず、自分たちのカラーを模索して葛藤する日々。8月7日に公開されたドキュメンタリー映画『3年目のデビュー』では、その3年間と、日向坂46としての道を歩み始めた1年間に密着している。華々しくデビューしたように見える彼女たちだが、「私たち、いる意味ある?」と葛藤した日々もあった。そんな計り知れない苦悩を乗り越えて、今のハッピーオーラに至っていることが分かる。

小坂菜緒ら日向坂46メンバーが涙… ドキュメンタリー映画「3年目のデビュー」新予告解禁 加藤史帆「私たち、いる意味ある?」

 NiziU、日向坂46のように、葛藤の上に成り立つポジティブさは、今の日本の現状にも勇気を与えてくれる。だからこそ、彼女たちの楽曲が支持されているのだろう。新型コロナウイルス禍で、先の見通しが立たないなかでも、何とか踏ん張ったら明るい未来が見えてくるのではないかーー、そう思わせてくれる幸福感に包まれる楽曲たち。そして、それを歌うグループたちの、苦悩の上に掴んだポジティブさが、現状を優しく照らしていくのかもしれない。

■かなぴす
メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。Twitter

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