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「老人ハイスクールDX」本番を前に、菅原直樹「不安と興奮。これぞ青春」

ナタリー

19/9/27(金) 13:26

老いのプレーパーク 発表公演「老人ハイスクールDX」稽古の様子。菅原直樹(右)。

老いのプレーパーク 発表公演「老人ハイスクールDX」が9月28日に開幕。ステージナタリーでは昨日26日に、その稽古場を取材した。

OiBokkeShi×三重県文化会館「介護を楽しむ」「明るく老いる」アートプロジェクトは、俳優・介護福祉士で「老いと演劇」OiBokkeShi主宰の菅原直樹と、三重・三重県文化会館により2017年にスタートした3年にわたる企画。同プロジェクトは、県内各地の病院や学校、介護施設などでワークショップを行う「介護を楽しむ」と、公募メンバーによって2018年に結成された“老いのプレーパーク”の2本柱で活動が行われており、老いのプレーパークには、三重県内の19歳から90歳(結成当時)まで、定年退職後のシニアや理学療法士など、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが名を連ねている。

今回はその老いのプレーパークの発表公演として、2015年のOiBokkeShiにて初演、2018年12月に老いのプレーパークでも上演された「老人ハイスクール」の“完全版”である「老人ハイスクールDX」が上演される。「老人ハイスクールDX」の舞台は、廃校を活用した老人ホーム。1部では教室を舞台に、入居者である高齢者たちが、それぞれの“高校生ライフ”をエンジョイする様が描かれる。彼らは、入室と同時に配られる配役カードに従って、“不良”“ギャル”“ガリ勉”など、それぞれに与えられた役を演じている。夫や妻、親子という現実の役割から解放された彼らは、ワルぶったり、同級生に恋をしたり、教師と衝突したりと青春を謳歌していて……。出演者たちはセリフで止まることもなく、自然なやり取りで物語を引っ張る。菅原はその様子を、穏やかな笑顔の中に時折真剣な眼差しをのぞかせつつ、客席から見つめていた。

2部では、老人ハイスクールの一室を舞台に、さまざまな人間模様が描かれる。ベッドには男性が1人横になっていて、その傍らにはなぜか屋外用のテントが張られていた。部屋を訪れた介護士の話から、その男性が“終末期”のホーム入居者であること、テントは彼の息子が“看取り”のため持ち込んだものであることがわかる。長年引きこもりだった五十代の息子は、父の死を目前にして、バンド活動を始めようとし……。“看取り”を軸に、家族と介護者、入居者の家族たち、高齢者同士と複数の目線で物語は進んでいく。なお2部は、今回のために書き下ろされた新作パートで、菅原は微調整を繰り返しながら演出を詰めていった。その細かな変更点を、出演者たちはもらすことなく体現していき、稽古は円滑に進んでいった。

稽古の合間に、本作について菅原に話を聞いた。菅原は昨年の老いのプレーパーク始動まで、新たな台本を書き下ろすつもりはなかったと明かす。「でも老いプレメンバーとワークショップをやるうちに、皆さん個性的な方ばかりなので、このメンバーに合わせた作品を作りたいと思うようになって。それで、OiBokkeShiで初演した『老人ハイスクール』の“青春と老い”というコンセプトはそのままに、“三重版”『老人ハイスクール』を書き下ろしたんです」と説明した。

三重版の特徴について尋ねると、菅原は「最初にワークショップをやった時点で、皆さん、役を演じることをすごく楽しまれていたんです。これまでそれぞれに生活を重ねてきて、定年退職したり、子供が巣立ったりといくつかの役割を終えた人たちなので、むしろ役割に飢えていると言うか、誰も知らない人の中に入って新たな役を演じることが、新鮮で面白かったみたいですね」と印象を語る。さらに「チラシに『人生はごっこ遊び』というキャッチコピーがありますが、本当にそんな感じのお芝居になっているかなと。また認知症の人と認知症じゃない元気なシニアが、演劇することによって共に楽しい時間を過ごす。そんなお芝居になっているのではないでしょうか」と手応えを述べた。

最後に、本番への思いを尋ねると「不安と興奮ですね(笑)」と菅原。「でもこの気持ちって、青春なんですよね。みんなで一緒にご飯を食べたり、稽古が楽しくて笑いが堪えきれなったり、台本が真っ黒になるくらい何かを書き込んだり……皆さんのそういった姿を見ると、本当に楽しんでるなって。このメンバーと一緒に明るく老いる、老いの明るい未来を描くことができたらなと思います」と思いを語った。

公演は9月28・29日に三重・三重県文化会館 小ホールにて。なお各回の終演後に菅原のトークが行われるほか、会場ロビーでは、両日13:00より老いや介護に関する展示やイベントが開催される。

老いのプレーパーク 発表公演「老人ハイスクールDX」

2019年9月28日(土)・29日(日)
三重県 三重県文化会館 小ホール

作・演出:菅原直樹
メンバー:池田由美、伊野廣美、井早照彦、今井亜子、近江容子、柄山加代子、木曽原友美、倉田美智子、くるぶし、佐脇柚、鈴木夢眠、高山鎮、辻屋康子、TSUぶ☆あん子、中尾法子、鳴海美穂子、柊木繁雄、前川香代子、丸井典子、水谷祐哉、水野慶子、宮木きみゑ、宮村紘実

※高山鎮の「高」ははしごだかが正式表記。

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