Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

『グランメゾン東京』木村拓哉に「おっさん」!? 鈴木京香のギャップ溢れる奮闘の新鮮さ

リアルサウンド

19/11/3(日) 6:00

 木村拓哉主演で話題の日曜劇場『グランメゾン東京』(TBS系、日曜午後9時)で、木村と12年ぶりの共演となる女優・鈴木京香。高貴で清楚なイメージで映画やドラマを彩ってきた鈴木だが、このドラマでは木村演じる尾花夏樹の代わりに方々に交渉や謝罪をしたり、あくせくと動き回る姿が新鮮。今までにない、親しみやすい鈴木京香の『グランメゾン東京』での魅力を考察してみたい。

参考:ほか場面写真はこちらから

 『グランメゾン東京』で鈴木京香演じるフランス料理のシェフ・早見倫子は、料理を食べただけで使われた素材と調理法が分かる絶対味覚の持ち主だが、東京で10年レストランをやっても星が1つも付かず料理人としての限界を感じていた。そんな時、尾花が二つ星を獲得した「エスコフィユ」の味に衝撃を受け、再び三つ星を獲得することを決意。単身フランスへ行き、三つ星レストランの面接を受けた時に、全てを失っていた尾花と出会い「星を取らせてやる」と三つ星レストランを目指して「グランメゾン東京」を一緒に作り上げようと奮闘していく。

 女優・鈴木京香と言えば、正統派美人の容姿で品があり、20代の頃から既に大人の色香が漂う落ち着いた女性というイメージ。特に、彼女の転機となった三谷幸喜作品の『王様のレストラン』(フジテレビ系・1995年)で「私、愛人顔だから」というセリフがあてられたように、『華麗なる一族』(TBS系・2007年)や『セカンドバージン』(NHK総合・2010年)など、愛人役や悪女を演じることが多い印象だ。しかし、今回の『グランメゾン東京』では今までにない親しみやすいキャラクターを演じ、新たな魅力を発揮している。

 まず意外性を感じたのはレストランの面接を受けている登場シーン。今や大女優として物事を達観しているイメージがある鈴木だが、年齢を周りに笑われながらも、チャレンジャーの立場から頭を下げて必死にお願いする姿のファーストインパクト、そして木村との軽快なかけ合いは最近の鈴木ではあまり見ないキャラ。例えばこれまで『リーガル・ハイ』(フジテレビ系・2012年)で古美門研介(堺雅人)の元妻で弁護士の役を演じ、丁々発止のやりとりがあったが、それでも常に鈴木が主導権を握っていただけに、今回は完全に木村のペースに振り回され翻弄される姿も新鮮だ。

 またそのかけ合いも面白く、鈴木「私じゃ看板にならない」、木村「おばちゃんがもうちょっと有名だったらなー」、鈴木「私が有名だったら日本の恥なんて言われてるおっさんシェフと組んだりしない」と、木村をおっさん呼ばわりするのもスリリングだが、鈴木も普通におばちゃん呼ばわりされ、さらに酒飲んで荒れて「それを言っちゃあおしめぇよ」と寅さんのモノマネをする。三谷作品でコメディーは鍛えられてはいるが、最近の鈴木からは想像ができない演出だ。出てくるキーワードこそ年齢を感じさせるが、見ているうちにそのやりとりは90年代にタイムスリップしたかのような軽快さと可愛らしさがあり、年齢を感じさせない木村のペースに鈴木が見事に対応していく、この現役感が木村マジックなのかもしれない。

 木村は尾花と倫子の関係性を、「ビジネスパートナーという表現の仕方だと寂しくなっちゃうな……」と公式ページのインタビューで答えていたが、腐りかけていた尾花に料理の場を提供し、人の意見を聞かなかった尾花が倫子のアドバイスを聞くようになったりと、2人の関係は次第に変化していく。その心を開いていく姿は、若い人なら恋愛感情に繋がるのだろうが、そこはいい大人なだけに、お互いの絆をどういった感情で描いていくのかが今後の見どころでもある。

 レストランを舞台にしたドラマは、『dinner』(フジテレビ系・2013年)の倉科カナや、『Heaven?~ご苦楽レストラン~』(TBS・2019年)の石原さとみなど、オーナーが若い女性で、それを助けるように男たちが集結し店を作り上げていくというのが定番であるが、このドラマはヒロインも同年代で、夢に向かってともに作り上げていく大人の青春物語なのが他にはない面白さ。だからこそ今まで高貴で上品なイメージの鈴木が、みんなと一緒に奮闘をしている姿が、ドラマを特別なものにしていると感じる。このドラマは人生の再チャレンジがテーマだと思うが、実際は「再」ではなく、年齢を重ねた人が新しいことにチャレンジしていく姿を強く感じ、そこで大人のプライドを捨てるのか、こだわるのか、今回の鈴木の演技と相通じるものがあるのではないだろうか。

 鈴木は倫子という人を「すごく頑張り屋だと思います。自分一人でしっかりしないと、人を頼ってばかりではいけないと、そういう思いで仕事に励んできた女性。『グランメゾン東京』の皆と一緒にやっていくうちに、一人で頑張らなくていいということがわかっていくと思うので、自分自身も楽しみにしています」と公式インタビューで答えている。おそらく木村は皆が求めている木村拓哉を演じていくだろうし、脇役陣も安定した演技で木村をサポートしていくと思われるので、このドラマを更に面白くしていくキーパーソンはやはり倫子の成長であり、その変化をどう鈴木が演じるのか、ベテラン女優の腕の見せどころである。 (文=本 手)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む