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大久保佳代子 (オアシズ)の 人生そろばん

歳を重ねて良くなったこと

毎週連載

第87回

20/9/6(日)

前回、私が小さいことでイライラしてしまう話をしましたけど、でも私自身は、基本、ルールや正義とかに対して比較的ユルいほうで。遅刻なんかも、人間だものするだろうし、不倫だって、人間だものするだろうしと思ってしまうタイプ。犯罪はダメですよ、勿論。でも世の中、聖人君子みたいな人ばかりじゃないですからね。

自分自身に直接的なダメージがなければ良いというか。だから、マネージャーやスタッフさんが仕事に遅刻してくるのはイラっとくるけど、友達が飲み会に遅刻してくるのは、まずまず気にならないかなと。タバコのポイ捨ての現場を見ても、「やだなぁ」とは思うけど注意なんて出来ないから、基本無視なんだけど、以前、愛犬パコ美が子犬だった頃は、散歩へ行くと、ポイ捨てされている吸い殻を口に入れようとするから、その時は、ポイ捨てする人をこれ見よがしに睨んだりしてました。

でも、歳を重ねるにつれ、明らかに穏やかになったモノもあるんです。

良いか悪いか分からないですが、そのひとつが「性欲」。40過ぎくらいまでは、まだしっかり「性欲」というものがあったから、男性の前では常に「好かれたい」とか「女として見られたい」という願望が強くて。仕事の現場だったとしても、笑いをとる芸人ポジションより、気づいたら女ポジションを取ってしまっていたりすることも。

だから、好みの男性がいる現場なんて大変ですよ。笑いをとるために前に出るなんてことは一切せず、女優のように微笑んでるだけだったりしますから。笑いを取りに行くのも恥ずかしい、すべりでもしたら死にたくなりますから。これが40代も後半になると、徐々に性欲が落ち着いてきて。男性と接しても、性の対象である男としてより、ひとりの人間として見られるように。なんで、余計な女感を出さなくていいので楽なんです。

あと、例えば仕事仲間に対して「全員ライバルだ!」みたいな気持ちを薄れてきたような。これも、3年くらい前までは、「おかずクラブには負けねーぞ!」とか思ってたり、収録現場で、他の女芸人の子がウケまくっていたりすると、尋常じゃないほどムカムカしていましたが。今は、ゼロではないにしろ、非常に穏やか。

「ぼる塾、面白いな〜」とか「いかちゃん、頑張れ!」とか普通に思えるように。

まぁ、母娘ほど歳が離れているのだから当たり前なのかもしれないですが。みんなと仲良くするほうが楽しいですしね。

性欲や名声欲、ライバル心なんかを持つのって、非常に疲れますから。相当のエネルギーがないと、持ち続けられないですからね。単純に49歳という年齢になり、体力的に持てなくなっているんだと思います。

だって、もう楽なほうがいいですから。「本当の自分より、良く見せよう」って気持ちから「こんな感じのオバサンです。これ以上でもこれ以下でもないです」という開き直りまっしぐら。少しはブレーキをかけないと、小汚い愚痴愚痴おばさんになってしまいそう。そうならない為にも、程よく欲は、持ってないといけないですけどね。



構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

大久保佳代子おおくぼ・かよこ

1971年、愛知県生まれ。相方・光浦靖子とともに、1992年にオアシズを結成。OLと並行してお笑い芸人として活動をし、2010年以降はお笑い一本に。数多くのレギュラー、連載を持つ。
http://www.p-jinriki.com/talent/oasiz/

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