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小芝風花が表現する主人公の心の機微 『モコミ』萌子美に訪れた変化が最終回へのカギに

リアルサウンド

21/3/21(日) 12:30

 「自分がどこにいるのかわかんなくなっちゃった。私が私じゃないみたいで」ーー花やモノ、相棒でぬいぐるみのトミーの声さえ全く聞こえなくなった萌子美(小芝風花)が、その突然の変化に翻弄される様子が描かれた土曜ナイトドラマ『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』(テレビ朝日系)第8話。

 「部屋がしんとして」という萌子美の言葉通り、我々にとっても見慣れたはずの萌子美の部屋から心なしか温かみが消え、ガランとして見えてくるから本当に不思議だ。これまでそれぞれのモノが気持ち良さそうに萌子美の手によって同じ空間内で生き生きと共存していたかに見えたのが、突然ただただ“そこにあるだけ”のモノに成り下がってしまったかのようだ。萌子美本人からすれば、“居心地の良かった場所”から“全く勝手知らぬ場所”に身を置いているような感覚に襲われさぞかし心細いことだろう。そんな彼女の繊細な心の移ろいや機微を引き続き小芝風花がとてもとても細やかに見せてくれる。萌子美にモノの声が聞こえていた頃にも、効果音などもなくモノの声が視聴者に届くことはなかった。それで言うと、今と何ら変わらないはずなのに、我々にも萌子美が体感している「静寂」が伝わってくるのだからお見事である。まさに、花屋の店員の涼音(水沢エレナ)がこぼす「何となく変わったようにも見えるし、変わってない気もするし」くらいの僅差を体現し、時に滲ませる“何かを諦めた”かのような表情が切なく迫る。

 この変化を家族に打ち明けたところ、母親の千華子(富田靖子)は「それが普通なのよ」とむしろどこか嬉しそうで、一方兄の俊祐(工藤阿須加)は“自分がきつい言葉をぶつけてしまい萌子美を深く傷つけてしまったからではないか”と責任を感じる。

 そんな中、家族を驚かせたのは父・伸寛(田辺誠一)の「田舎生活がしたい」という唐突な申し出だった。“突然何を言い出すの?”ときちんと取り合おうとしない千華子に、「自分が一体何したかったんだろうって思い返したときに、思い出したんだ。“元の自分”に戻りたいんだ」と心の内を伝える。祖父の須田観(橋爪功)の「戻れ戻れ! 本当の自分を思い出せ!」と言う加勢は、何も伸寛だけに向けられた言葉ではないだろう。清水家の人間みんなに言えることであり、また我々視聴者の胸をも打つエールにも聞こえた。

 最初は家族や周囲を心配させぬようにと千華子の意見に同調し、「元々これが普通なんだし。なくてもいい能力だったし」と気丈に振る舞っていた萌子美も、佑矢(加藤清史郎)には本心を打ち明ける。「怖い。今の私は私じゃない」と。

 大人になればなるほど、“物分かりが良い”振りを覚え、自分の本音にさえも何かしらの理由や理屈をつけて気づかぬように目を背けてしまいがちだ。打算や取り繕うことのない“本当の自分”“元々の自分”をまさかの清水家の中でも一番肩身の狭い思いをしていそうな伸寛が、今まさに取り戻そうとしている。そんな父親の姿がきっと萌子美や俊祐にとっても刺激になっていくのだろう。

 ラスト2話。清水家の「地方移住」計画は進むのか。萌子美はじめ清水家の皆が「本当の自分」を取り戻せるのか。これから先、皆にとっての“雨のち晴れ”が待ち受けているように祈るばかりだ。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:00~23:30放送
出演:小芝風花、加藤清史郎、工藤阿須加、田辺誠一、富田靖子、橋爪功、水沢エレナ、内藤理沙ほか
脚本:橋部敦子
演出:竹園元(テレビ朝日)、常廣丈太(テレビ朝日)、鎌田敏明
音楽プロデュース:S.E.N.S. Company
音楽:森英治
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:竹園元、中込卓也(テレビ朝日)、布施等(MMJ)
制作著作:テレビ朝日
制作協力:メディアミックス・ジャパン(MMJ)
企画協力:オスカープロモーション
(c)テレビ朝日

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