声優 杉田智和、『銀魂』坂田銀時などを演じる裏には意外な一面が キャラクターと共に愛される本質に迫る
21/1/22(金) 6:00
1月8日に公開された映画『銀魂 THE FINAL』が、19日までの累計で観客動員60万人、興収8億円を突破し好調だ。2006年から2018年まで四期にわたって放映されたアニメシリーズの、真の最終回となる本作。そんな原作マンガとともに、長きにわたり愛されてきたアニメで座長を務めあげたのが声優の杉田智和だ。
杉田といえば、代表作は先に挙げた『銀魂』の坂田銀時、そして『涼宮ハルヒの憂鬱』のキョンだろう。この2作はともに2006年に開始し、杉田の知名度を一気に上げることとなる。以降、『ジョジョの奇妙な冒険』のジョセフ・ジョースターなど、ひとクセあるキャラクターを演じてその地位を確立してきた。
杉田は独特の渋みのある低音ボイスで、一言喋れば誰が演じているかわかるタイプの声の持ち主だ。落ち着いた声音の淡々とした喋り口から一気にギアを上げて緩急をつける演技は、ギャグシーンで特に映える。坂田銀時、キョンはもちろん、『男子高校生の日常』(テレビ東京系)のヒデノリや『荒川アンダーザブリッジ』(テレビ東京ほか)の星などでも唯一無二の存在感を発揮した。
そして、コミカルな表現が得意だからこそ、見せ場での決め台詞がより一層のギャップを生み、心を掴んでくるのもずるいところだ。『ハチミツとクローバー』(フジテレビ系)の真山巧や『ヲタクに恋は難しい』(フジテレビほか)の樺倉太郎などでは、情感あふれるイケボも堪能できる。
アーティストデビューはしていないためキャラクターソングがメインだが、その個性は歌でも発揮されている。単純に歌唱するというよりも、キャラクター性を活かし、クセを押し出して語りを音に乗せるような歌い方が抜群に上手く、一度聴くと頭から離れなくなるような中毒性がある。キョンとして歌唱したキャラソン「ホモ・サピエンス・ラプソディ」などを聴いていただければきっとわかるはずだ。
クセの強さについ注目してしまいがちな杉田だが、本質的には職人気質だ。最近のインタビューでは、「かつて『ひきこもりの子供に励ましの声を』って仕事が来たことがありましたが、僕は請けませんでした。どんな意図があれ、直接的な指図を受けて起こした行動は本人のものじゃないと思ったからです」(参照)と語っていた。
また、『銀魂』が終わることについて聞かれた時も、「物語を盛り上げるためのエモーショナルなものを強要されるけど、僕は必要ないと思っているし、物語が完結してお話が終わろうとしているけど、作品の中の時間は動き続けるし。大衆の意見に簡単に流されない。あくまでも自分の目で見て考える」(参照)と、声優としての確固たる考えが伺える。
「やる時はやる男」という立ち位置で人気の坂田銀時というキャラクターについても、「ある程度の人生を経てきた坂田銀時は、自分の弱さであり向き合いたくないものでもある過去を隠しながら出会った新しい環境を生きてきました」とシビアに見つめており、実際、『銀魂』のオーディションの際に他の参加者が「かっこいい銀時」を演じるなか、杉田はあくまでもギャグキャラと捉えて演技し、その演技が異彩を放っていたことがきっかけで抜擢に繋がったというエピソードも。
キャラクターや作品を褒めたり、良い側面ばかりを取り上げることは簡単だが、杉田はそうしない。「本当の意味で必要なこと」をすくい上げようとする眼差しを持っているのが、これらの発言やエピソードから感じることができる。
周りに流されず、自分の好きなことに黙々と邁進する姿勢は、声優活動以外でも功を奏しており、彼の自由人ぶりがよくわかるTwitterのフォロワー数は188万人を突破。2019年に開設したYouTubeチャンネルも、登録者数68万人を突破して好調だ。昨年のステイホーム期間に公開した「ハレ晴レユカイ」の踊ってみた動画ではファンを大いに喜ばせ、一時はYouTubeの急上昇ランキングで1位にも輝いた。キャラクターと合わせて「中の人」としてこんなにも愛されている例は稀有ではないだろうか。
1月スタートの新アニメ『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』(TOKYO MXほか)では「前世の男」を演じている杉田。異世界に転生した男の、転生後の少年声を内山夕実が、「転生前の成人男性」としてモノローグ部分を杉田が演じるという特殊な演出も見どころだ。
キャラクターと共に杉田智和も好きになる、そんな活躍にこれからますます期待したい。
■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。満島エリオ Twitter(@erio0129)
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