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松隈ケンタに聞く、WACKサウンドを構築する音楽理論の核 「大事なのは“間合い”、会話やお笑いの感覚なんです」

リアルサウンド

20/7/16(木) 17:00

 GANG PARADE(ギャンパレ)の分裂が2020年3月に決定し、5月には活動終了。そのGANG PARADEから分裂して誕生したのが、GO TO THE BEDSとPARADISESの2組だ。そして、早くも両者のフルアルバム『GO TO THE BEDS』『PARADISES』がリリースされる。

参考:元GANG PARADE カミヤサキ、「アイドル」から「振付師」へ 新しい道を歩み始める“覚悟”を語る

 GANG PARADEの路線を踏襲しながら新機軸も打ちだした『GO TO THE BEDS』、これまでのGANG PARADEのイメージから離れた『PARADISES』と、サウンドプロデューサーの松隈ケンタは新たな挑戦へと踏みだしている。そもそも、松隈ケンタはGANG PARADEの分裂をどう思っているのか? そして、4月に『関ジャム完全燃SHOW』(テレビ朝日系)に出演して話題を呼んだ松隈ケンタがクリエイターとして目指すものとは? 活動拠点を置く福岡から上京した松隈ケンタに話を聞いた。(宗像明将)

■全員のキャラクターを活かしながらひとつの曲にするのは職人芸

ーー7月22日にGO TO THE BEDSとPARADISESのアルバムが同時にリリースされますが、そもそもGANG PARADEが分裂したときはどう感じましたか?

松隈ケンタ(以下、松隈):やっぱりそういうことが起きる事務所じゃないですか、WACKは(笑)。いちいちびっくりしていたら精神を持っていかれる。これは初期BiSからのやり方ですけど、全員のキャラクターを活かしながらひとつの曲にするのは、自分で言うのもなんですけど職人芸なんですよ。何年もかけてやっと見えてきたところだったので、「ここで分裂か」とは思いましたね(笑)。

ーーさすが慣れている(笑)。GO TO THE BEDSとPARADISESの楽曲は、制作過程でどうやって振り分けているんですか?

松隈:今回は完璧に分けて作りました。昔はざっくりしていて、たとえばBiSHに作ったものがギャンパレに行ったり、逆だったり。最近はわりとそのグループ用に作るようになりました。

ーー各グループ用に作るとなると、それぞれで重視している音楽面のポイントはありますか?

松隈:GO TO THE BEDSは歌えるメンツだと思うので、歌をガツンとやっていこうかなと。ギャンパレ時代のダンスビートで乗せる部分は引き継ぎつつ。逆に、PARADISESはその部分を削ぎとりました。ただ、ギャンパレ時代のバラーディな歌モノみたいな部分はPARADISESに振り分けましたね。

ーー『GO TO THE BEDS』では、「行かなくちゃ?」「ROOM」「GROOVE」「VILLAIN」などにテクノ的なアプローチがありますね。

松隈:うん、そこはギャンパレから継承したものですね。

ーー一方で、「SCREWY DANCER」「MISSING」「ROOM」のサウンドに出てくるオリエンタルな要素も新鮮です。

松隈:今回意図的にやりましたね。世界的な潮流を見ると、音楽がシンプルになっていってると思うんですね。ただ、メロディラインがそうなると一辺倒になってしまうので、そこで海外の人たちがよくやっているのがオリエンタルな感じなのかな。逆に僕らはラテンっぽいものを「なんちゃって」でやるから、良い意味でへんてこりんなものに聴こえると思っていて。アルバム全体的にそれを入れたくて。

ーーなるほど、他にサウンド面のポイントはありますか?

松隈:いつもジャンルは幅広く作っているんですけど、今回初のアプローチとして、ジャンルが一曲一曲出すぎないようにしました。メロディのオリエンタル感で統一しているのもありつつ、一個一個分析すると全部違うジャンルだけど、結果、揃って見えるような感じで。いつもの僕のプロデュースはジャンルがわかりやすい作り方だったんですけど、なだらかに雰囲気を揃えてトータル感を出しました。

ーー1曲目の「行かなくちゃ?」は歌詞に〈行けばいいんじゃない?〉とあって、歴代のBiSの歌詞に多用されてきた「行かなくちゃ」というフレーズと対になっていますね。それをGO TO THE BEDSが背負っているというのが面白いですよね。

松隈:これは渡辺(淳之介)くんが作っているので真意はわからないんですけどね。ギャンパレもメンバーの入れ替えがあって、我々スタッフも心機一転のところで、このアルバムの1曲目。いつものフレーズに「?」をつけて入れたんじゃないんですかね。

ーーGO TO THE BEDSのメンバーのボーカルの特徴は、どんなところにあるんでしょうか?

松隈:今回主力に置いてみたのは、実はユイ・ガ・ドクソンなんです。今まではあんまり主役に置くような声質ではないと思っていたんですけど、この子たちの声質をもう1回考え直したんです。今回はドクソンを主軸に置くことによって、他の4人が全員飛び道具に使える。「ドクソン対各メンバー」という感覚で配置しましたね。

ーードクソンさんに対して、他の4人の声質の良いポイントってどこでしょう?

松隈:ドクソンは、白いご飯みたいな。最近だとユア(ユメノユア)が、BiSHのリンリンのような尖った歌い方が上手になってきていて。その反対側で、優しくて母性のある感じをマイカ(キャン・GP・マイカ)に出してもらって。ココ(ココ・パーティン・ココ)には洋楽歌姫のような感覚を伸ばしてほしくて、ヤママチ(ヤママチミキ)は邦楽歌姫ですね。ヤママチの配置はけっこう難しい。ギャンパレのときはかえって中心に置くことによって、周りが中和されてバランスが取れていたのかもしれないですね。

■既存のWACKイメージを消し去った2作品

ーーGO TO THE BEDSで印象に残っている歌詞はありますか?

松隈:「Don’t go to the bed」の〈サイレンが鳴っているの ピーポーピー〉とか面白いですよね。これは淳之介が考えたんですけど、擬音とか、キャッチーなのを入れてくるところが好きなんですよ。あとは5曲目の「パッパラパー」。このユアの歌詞も好きですね。「ぱ」とか「ぴ」が好きなんですかね(笑)。みんな何気なく歌詞を入れていると思うんですけど、そこに偶然なキャッチーさが生まれたりするんですよね。あと内容でいうとヤママチが作った「MISSING」は全体的にすごく好きですね。

ーー出てきた歌詞を見てから曲を調整することもあるんですか?

松隈:あります。作詞作曲を僕がやっている場合が多いので、その場でメロディを変えちゃったりできますから。あと、メンバーが間違えて歌ったりするときがあって、それが良かったらそのまま採用します。

ーー一方の『PARADISES』は、渋谷系のような「ALIVE」など、若い彼女たちの現在を切り取っている楽曲が多いです。「ズルい人」のアイドル歌謡感にも驚きました。

松隈:僕ら的にはこっちは実験的ですね。この辺のサウンドは、秋元康さんとか、80年代、90年代のアイドル歌謡曲がベースにしっかりとあって。バブルの時代のサウンドを入れてみたら面白いかな、と。「ズルい人」は、とんねるずの「雨の西麻布」みたいな。

ーーPARADISESのボーカルは誰がメインだったんですか?

松隈:月ちゃん(月ノウサギ)メインでやりましたね。キラ・メイとナルハワールドは歌の経験が少ないので、そうなると今回は月ノとテラシマ(テラシマユウカ)で引っ張っていかないといけなくて。僕の曲はふたりいないとひとつのサビが成立しないので、そこはやっぱり先輩ふたりに「ちょっと引っ張ってくれ」と言って。BiSHのアイナ(アイナ・ジ・エンド)とチッチ(セントチヒロ・チッチ)、ギャンパレでいうココとかミキちゃんみたいな。

ーースタッフさんによると、今回メンバーに対して怒ったそうですね。

松隈:珍しくちょっと若い子に怒ったんですよ。ナルハとキラに。僕、キラの声がすごく好きなんですよ。天性の歌声。口より奥側が歌うに適した骨格なので、使い方がわかればすごいボーカルになる。今回はどちらかというとナルハにわかってほしくて怒っちゃって。キラは初レコーディングでガチガチだったけど、ナルハは経験者だから、「もっとやってこれるよね?」って、ちょっとそういう駆け引き的にふたりとも怒ってみましたね。キラにはちょっと申し訳ないことをしたな(笑)。でも、逆に言うと、キラなら大丈夫だろうと思って言ったんですよ。

ーー今や松隈さんも娘さんがいて、作曲も一緒にやるようになって。父親目線としてはどうなのかなって。

松隈:ナルハ以降は年齢的に若すぎてもう娘レベルですよね。今までの子たちと違って、僕との距離がすごくあるんですよ。だからプライベート的な話もそんなにしゃべったことがなくて。レコーディングブースに入ったときはもちろんひとりずつ話しますけど。

ーー「WACKらしいサウンド=ロック、パンク」みたいなイメージって世間的にあると思うんですよ。そういうWACKのイメージは、今回2枚のアルバムを作るときにどのくらい意識しましたか?

松隈:今回は初めてそういうイメージを消し去った感覚はありますね。それがGO TO THE BEDSのアルバムの全体的なまろやかさだったりすると思います。ギャンパレの今までのイメージをひっくり返すのは簡単なんですよ。ただ、それを残しつつ新たなリスナーとファン層を広げる感覚でした。

■泣きのメロディを入れる“間合い”が重要

ーー4月にテレビ朝日の『関ジャム完全燃SHOW』に出演して、辛口な発言が話題になりましたが、音楽プロデューサーとして、俯瞰的な視点で現在のアイドルシーンの音楽はどう見えていますか?

松隈:せっかくいろんな人に聴いてもらえるチャンスなのに、なんかすげーマニアックになっていってるのが残念だな、って。アイドルたちに対してではなくて、クリエイターとしてはチャンスなのに、という意味で。

ーーマニアックになっている、というのは具体的には?

松隈:サウンドがニッチになっていってるというか。今はそうしなくても聴いてもらえるチャンスが増えているんですよね。僕は今もサウンドは尖っていますけど、メロディとかはポップスであるべきだと常に思っていて。アイドル界もマニアックに良い歌じゃなくて、もっとシンプルに良い歌を作る人がいっぱいいてもいいのに。僕が尊敬しているプロデューサーは、中田ヤスタカさん、ヒャダインさん(前山田健一)、秋元康さん、つんく♂さんなんですけど、やっぱりみんなJ-POPを作っているんですよ。

ーーニッチなジャンルももう飽和していますよね。松隈さんにとって、J-POPでの戦い方で一番大切にしているのは何ですか?

松隈:僕の場合はメロディですね。あとは、いかに人を乗せるか。

ーー松隈さんといえば「泣きのメロディ」ですよね。しかも、もともとUK志向だった松隈さんが、ビートや乗せ方を意識するようになったというのも大きい変化ですよね。

松隈:UKやEDMのビートもだいぶ極めて仙人みたいになってきたんですけど(笑)。でも、「ドラムが、ベースが」とかじゃなくて、会話やお笑いの感覚なんですよね。「間合い」みたいな感じ。「このコードに、このメロディを当てれば泣きのメロディになる」というのは作曲家は全員知ってるんですよ。僕がこだわっているのは、それがどこに出てくるのか、その「間」ですね。

ーーJ-POPのクリエイターで、「間」まで研究してる人ってそんなに多くないんじゃないんですか?

松隈:だから、逆にわかっている人の音がわかるようになってきました。やっぱり桑田佳祐さん、山下達郎さんみたいな作家さんは、完璧に音が積まれているので参考になります。

■ファンのコールを“想定して”作るのが嫌なだけ

GANG PARADE『PARADE GOES ON TOUR at 中野サンプラザ』【Plastic 2 Mercy】【UNIT】ライブ映像
ーーその間の置き方って、ファンの人はどのくらい気づいていると思います?

松隈:僕、ライブはいつも一番後ろの席から見ているんですけど、たとえばギャンパレだと「Plastic 2 Mercy」の〈まだ足りない!〉から盛り上がるじゃないですか。EDMというのはそこの間が様式美でわかりやすい。僕の思った通りに乗ってくれると、「間が合っているな」と。お笑いでいうと「ウケてくれてる」という感覚です。

ーー『関ジャム完全燃SHOW』のときに、ファンのコールやMIXが嫌いだっていう話がありましたよね。

松隈:あれは語弊が出ちゃったんですけど、僕は「嫌い」とは言っていないんですよ。僕は野球場に行くんですけど、野球場ってコールの嵐じゃないですか(笑)、「かっとばせー!」とか。あれこそ選手からしたら邪魔くせえと思うんですけど(笑)。ああいうコールは僕もやるから、楽しいのを知っているんですよ。ただ、そのときの番組の質問が「コールを入れやすいように曲を作るんですか?」だったので、「そうやって作るのは大嫌いです」と言って。それはこちら側に流れがあって、その流れを止めるようなファンのコールを想定して作るのが嫌なだけであって。たまに、それを乗り越えて予想外なコールをしてくるのは「おお、斬新な入れ方だ、かっこいいやん」って思うときもありますよ(笑)。

ーーじゃあ、ファンに合わせるというよりは、間合いを提供したい?

松隈:そうです。お笑いでいうと、ウケるところでウケて欲しい。ヤジを飛ばされて、それが笑いになったらその場は良いでしょうけど、芸人さんとしては不本意、みたいな。

ーーたとえばBiSHのライブはファンが万単位で来ますが、松隈さんが想定しないようなファンのリアクションって出てきたりしますか?

松隈:逆で、100人とかの規模のほうがおもしろおかしいコールが起きやすい(笑)。大人数のときのほうが思ったところで手が上がるし、静かなときは手を合わせるように聴いてくれる。極端なんですけど、「涙が出てほしいポイント」とかはもう決めて作ってあるんですよ。たとえば「BiSH-星が瞬く夜に-」の〈星が! 瞬く夜に~〉って歌うところの「が!」で涙が出てるんですよ。まぁ実際には出ないですよ(笑)。でも、これをファンの方に言うと、「たしかにあそこでグッとくる」って言ってくれる。

ーーなるほど、あらかじめグッとくるポイントを決めて作ってあると。

松隈:他の作詞家もそうやって作っていると思うんですけどね。でも、うちらが面白いのは、僕が仮で作った歌詞を、淳之介やメンバーがブラッシュアップしていて、ほとんど僕の意図というものがないんですよ。「ROOM」の作詞が「松隈ケンタ×ユイ・ガ・ドクソン」だったら、ほぼドクソンが僕の仮歌の歌詞を拝借しているに過ぎないので、要するに僕の歌詞じゃないんですよ。だから面白い。たまにメンバーが信じられないところに信じられない言葉を入れたりしたときに、そこが涙ポイントになったりする。

ーー他の作家は、1曲ウケたら同じような曲をいっぱい作る手法を取りがちだと思うんですけど、松隈さんはそれをやらないですよね。

松隈:僕のこだわりなんですけど、あえて考えないようにしています。ファンの声も、左耳から入ってきて、右耳から出ていくんですよ(笑)。BiSHの「オーケストラ」っぽい曲をまた作りたくなることもある一方で、真逆を行きたいときもあるんです。その辺は周りの大人頼みにして、うまいこと選んでもらって。

■何十年経っても色あせないような曲を死ぬまでに1曲作りたい

ーーそれは、第1期BiSの1stアルバム『Brand-new idol Society』(2011年)のときから?

松隈:はい。たとえばBiSの「nerve」って大人気じゃないですか。すごくいい曲だと思うんですけど、僕も作りたいかと言うとそうではない。「nerve」が1個あってそれで喜んでもらえているからいいじゃん、って。それ求める声には別に応えない。結果、それがいいことだってあるし。僕の中では「nerve」と、ギャンパレの「Plastic 2 Mercy」は同じ位置にあります。あれも超人気とか言われますけど、実際は初ライブのときはどちらも別にそうじゃなかった。みんなが乗っかりだして、長いことをずーっとやっているから伝説になっているわけで。作家はそれを作れと言われても作れないんですよ。

ーーそういう考え方なのに、結果的にどのグループにもアンセムが生まれるのは面白いですよね。世の中の作家は、「なんで松隈ケンタはあんなにいろんなグループにアンセムを作れるんだ?」って知りたいと思うんですよ。

松隈:みんながそう思っててくれるのであればラッキーですね(笑)。僕が心がけているのは、すべての曲を一定のクオリティで出すことだけです。その先はメンバーやスタッフさん、お客さんに上乗せしてもらえるので。やっぱりクオリティというのは確実にあって、これは料理人と同じだと思っていて。ベテランの料理人は、自分のジャンルじゃない料理でも、人に食べさせられるクオリティを作れる。だけど、若いうちにちょっと作ったパスタが大ヒットしちゃった人は、もうそれしか作れなくて二発目がない、みたいな。なので、僕らはどのジャンルでもクオリティを高めに作っていくしかないのかな、って。

ーーBiSの『Brand-new idol Society』から10年近くアイドルシーンでやってきた中で、今後、松隈さん自身が個人的にやりたいことはありますか?

松隈:いくつかはあるんですけど、インストみたいな、歌がないやつ。アイドル関係なくなっちゃってる(笑)。音楽ってドラマに寄り添うものだと思っていて、僕が今やらせていただいているのは、GO TO THE BEDSのドラマ、PARADISESのドラマ、BiSHのドラマにそれぞれBGMをつけている感覚。クリエイターとしては、やっぱり映画やドラマ、ゲーム音楽とかもやってみたいです。

ーーWACKは次に何が起きるかわからないじゃないですか。今回もギャンパレが分裂して、これが普通のサウンドプロデューサーなら「おいおいおい!」ってなりますよね(笑)。

松隈:あはは。それも左から入って右から出ていく感じですよ。「松隈さん、またひとり辞めます」「そっかー、しょうがねーなー」みたいな(笑)。よく不思議がられるんですけど、メンバーの動きとかに全スタッフの中で一番興味ないんですよ、僕。Twitterもアイナぐらいしか見ていないし。アイナだけ俺に「いいね」をいっぱい押してくれて(笑)、だから僕はお返ししてあげたいと思うんですよ。ナルハとか全然押してくれないから、あんまり見たことないです(笑)。WACKワールドにいるといろいろ持っていかれるじゃないですか。それは心地良くて好きなんですけど、全部追いかけると音楽に影響が出てしまうので、僕は常に一番後ろの席で見ているつもりです。

ーーそこはすごいところですよね。あと、私はやっぱり早く『紅白歌合戦』で松隈さんの曲を聴きたいんですよね。

松隈:『紅白』、行きたいですね、権威のあるものは好きなので(笑)。

ーー松隈さんにとっての最終目標ってどこなんでしょうか?

松隈:一応オリコン1位はBiSHの『PAiNT it BLACK』でとらせていただきましたけど、アルバムはまだなくて。アルバム1位はとりたいです。僕個人としては、『ドラクエ』(『ドラゴンクエスト』)のオープニングテーマとか、「およげ!たいやきくん」みたいな、何十年経っても色あせないような圧倒的な曲を、死ぬまでに1曲作りたい。イメージとしてはカラオケで一番歌われる曲みたいな。

ーーちなみにカラオケって、曲作りのときに意識します?

松隈:するんですよね(笑)。カラオケでみんなが歌っているのを聴いていて、「俺の曲は、カラオケでいっつも歌いづらいな……」と反省します(笑)。

ーーあはは。やはり、だんだん対象の年代層の幅を広げていこうと?

松隈:そうですね、特に子ども。僕の子どもが踊るかどうかっていうのを最近すごく気にしていて、それは今回この2グループともかなり意識しましたね。スタッフさんからも「若年層向けとか、世代を広げる方向で意識しましょう」という話があって。

ーー最後に、現在の松隈さんの音楽の核と言える部分をうかがいたいです。

松隈:曲作りで一番大事にしているのが、ダンスミュージック。ジャンル的な意味ではなくて、乗れるかどうか。これは赤ちゃんが生まれて確信に変わりましたね。たとえば渋谷のスクランブル交差点で歌姫が歌っていたとするじゃないですか。でも、その反対側にヤカンを叩いている黒人さんがいたら、そっちに人が集まると思うんですよ。ヤカンだろうとバケツだろうと、ビートを叩いていたら、世界中の人がそれを聴ける。日本語で歌姫が歌いあげているところには数人は集まると思うんですけど、500人にはならない。さっきも言った「間」みたいなものも含めて、そういう乗りやすい部分というのが必ずどのジャンルにでもあると思っていて。メロディも歌詞も楽器のひとつとして、盛りあがってきたところでいい歌詞、いいメロディが来て泣くみたいな、そういう流れがすごく大事かなって考えています。(宗像明将)

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