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YURiKAに聞く、『呪術廻戦』OP&EDの魅力と『神様になった日』麻枝准楽曲への愛「アニメを見ることで歌詞を深く味わえる」

リアルサウンド

20/12/15(火) 18:00

 『YURiKAのアニソン最前線』第3回は、『呪術廻戦』と『神様になった日』をピックアップ。怪奇ものは苦手というYURiKAだが、本編とはギャップのある音楽に光るものを感じたという。また『神様になった日』は、YURiKAが愛してやまないKeyの麻枝准が原案・脚本、作詞作曲も手がけている作品。Key作品の最新作という位置づけで、YURiKAらしい視点から同作の音楽について語ってもらった。そしてYURiKAが選んだ2020年のベストアニメは?

ALIの音楽がハードな本編をマイルドに

ーーまずは『呪術廻戦』ですが、こういう系統の作品を選んだのは初めてじゃないですか?

YURiKA:これは自分の好みの問題で、怖いのはあまり得意ではないので「そこに行くのか!」と思った方も多いと思いますけど(笑)。Netflixで「今日の総合TOP10(日本)」の2位とか3位とかに挙がっていてすごく人気も評価も高かったので、新規開拓してみようかなと思って。内容はちょっと怖いですけど、音楽がすごく良いんです。もちろん原作も人気ですけど、楽曲から入った人も多いんじゃないかって思います。私自身がそうだったので。

 それに今期のアニソンを調べたら、私が調べた範囲では、女性声優さんのキャラソンや、女性アーティストさんや女性声優さんが歌われているものが多い印象で。『おちこぼれフルーツタルト』『アサルトリリィ』『安達としまむら』などなど、女性声優さんのキャラソンが目立っている中で、『呪術廻戦』はオープニングもエンディングも男性アーティストで、それが異彩を放っていると思って。

廻廻奇譚 – Eve MV

ーー『ハイキュー!!』などシリーズものでは男性アーティストの曲もありますけど、ほとんどシリーズものですからね。確かに新作という点では、女性が歌っているものが多いかもしれない。オープニングはEveさんの「廻廻奇譚」で。

YURiKA:ハイトーンで、ピンと張っていてきれいな声をされていて。きっといろんな声が出せるんだろうなと感じます。『呪術廻戦』はバトルシーンが印象的なアニメ作品で、そんな中で楽曲にはヌキ感があって。単にバトルものだからと熱くジャカジャカやるわけではない。それは意外性でもあり、作品に寄り添っている部分でもあるなと思いました。実際にまるまる全部怖いのかな、グロいのかなと思っていたんですけど、決してそうではなくて。日常のギャグ要素もあって、それとはギャップのある戦いの格好良さもあって、すごく緩急があって、ハラハラドキドキワクワクしながらの30分という感じです。

ーーヌキ感という部分ではエンディングテーマで、ALIさんの「LOST IN PARADISE feat. AKLO」が最高ですね。

YURiKA:はい。ALIさんと言えば私が1期でエンディングテーマを担当させていただいた『BEASTARS』で、オープニングテーマ「Wild Side」を担当されていて。その時も思ったんですけど、ALIさんは独自の世界観を持っていて、アニメ作品の方向性に引っ張られすぎず、バンドの世界観とアニメの世界観を、本当に見事に融合されていると思います。

TVアニメ『呪術廻戦』ノンクレジットEDムービー/EDテーマ:ALI「LOST IN PARADISE feat. AKLO」

ーー「LOST IN PARADISE feat. AKLO」はディスコっぽいビートで、ジャズもヒップホップも入っていて。

YURiKA:グルーヴ感が独特で、たとえばカラオケでこの曲を歌っても、あのグルーヴは絶対真似できませんね。エンディングテーマと一緒に流れる映像もおしゃれで今っぽいし、けっこうハードな展開の本編をマイルドにしてくれています。

ーーエンディングの映像で、キャラクターが私服で踊っているのも、本編と良い意味でギャップがあって。

YURiKA:キャラ好きの人は「私服は何を着てるんだろう」って想像するのが楽しかったりするので、ああいう映像はうれしいです。あと劇伴には、9月に解散してしまったsora tob sakanaのプロデューサーで、ハイスイノナサの照井順政さんも参加されているんです(堤博明・桶狭間ありさとの連名)。照井さんにはアニメ『宝石の国』のオープニング主題歌「鏡面の波」の作詞・作曲・編曲をしていただいたことがあって。私自身が照井さんの音楽のファンでもあるので、オープニングとエンディングだけではなく劇伴というところでも注目しています。いずれサントラ盤が発売されるかはわかりませんけど、「ここは照井さんが作ったのかな?」と、想像しながら見るのもすごく楽しいです。

麻枝准楽曲には、伏線を解き明かす楽しみがある

ーー続いて『神様になった日』ですが、YURiKAさんご執心の麻枝准さんの作品。

YURiKA:なんか毎回、ダーマエの話ばかりですみません(笑)。でも今回ばかりは満を持してという感じです。

ーー『神様になった日』は、麻枝准さんが原作・脚本を手がけるP.A.WORKSのオリジナルアニメ作品として、『Angel Beats!』『Charlotte』に続く3作品目ということで。

YURiKA:いちダーマエ信者というか(笑)、いちファンとしては、いつでも「待っていました!」状態でした。麻枝さんの脚本や音楽も含めた、確立された世界観があって。その感覚と空気感が、ファンにとっては特別なものです。まず1話で急に野球をやるところは、『リトルバスターズ!』を思い出させるし、2話で主人公がピアノを弾くカットは『Angel Beats!』っぽくて、歴代Key作品の要素が散りばめられていて。出演されている声優さんも、佐倉綾音さんをはじめ花江夏樹さんや木村良平さんなど、これまでのKey作品に出演経験のある方が出ていらっしゃるので、ファンはきっと「あの人はあの作品にも出ていた!」と、いろいろ共通点を探しながら楽しんでいると思います。

ーー曲は、オープニングテーマ、エンディングテーマ、挿入歌、すべて麻枝准さんの作詞作曲、編曲がMANYOさん、ボーカルがやなぎなぎさんという一貫した作品作り。

YURiKA:どちらも歌ったらすごく難しいだろうなと思う曲で、平常心で聴いていられませんね(笑)。

ーーやっぱりファンなだけに、「もし自分が歌ったら」みたいな聴き方をしてしまうんですね。

YURiKA:そうなんです。私自身デビューする前からの麻枝さんの曲のファンなので、いちファンとしての目線も持ちつつ、「いつかは麻枝さんの曲を歌いたい、関わりたい」というアニソンシンガーとしての気持ちもあるので。自分が歌ったらどうなるのか、これはどういう組み立てになっているんだろうとか、つい分析目線で聴いてしまいますね。それに悔しいのは、編曲のMANYOさんには「時のFoliage」という曲を作曲・編曲していただいたことがあるうえに、演奏で参加されているミュージシャンも、私のライブでお世話になっているバンドメンバーとほぼかぶっているんです。けっこう接点があるのに、「なかなかお声がかからないかな〜」って(笑)。

ーーオープニングテーマ「君という神話」については、どうですか?

YURiKA:サビで、階段を上がるようにメロディが上がっていったり、駆け下りるように下がったり。サビとしてのキャッチーさはあるんですけど、すぐには解読できないというかつかみ所がなくて、一発では聴き取れない感じなんですよね。麻枝さんの曲で、よく「なぜここで止めるんだろう」とか逆に「なぜここを伸ばすんだろう」と思うことがあって。それはとあるインタビューで、ご自身から出たものをそのまま形にした結果みたいなことをお話されていて、それが独特な麻枝さん節みたいなものになっているんだと思います。

ーー問答みたいになっている歌詞の構成も面白いですね。

YURiKA:たぶん歌詞は、誰かひとりの気持ちを歌っているんじゃなくて、歌詞の主人公は何人もいるんです。それによって、毎回変わるその話数ごとのメインとなるキャラクターの歌として、受け取ることが出来るようになっていると思います。伏線回収じゃないけど、楽曲の歌詞にもそういう部分があるなって。鍵っ子(Keyファンの総称)は、深読みが大好きですから(笑)。

ーー歌詞に散りばめられた謎が、毎話ごとに回収されていくと。

YURiKA:オープニングの映像から深読みし放題ですよ。たとえばキャラクターたちの背中が映るシーンがあるんですけど、いずれ10何話かでこういうシーンが出てくるんじゃないかって。そもそもオリジナル作品で原作がなく、誰も物語の続きを知らないので考察はし放題です! エンディングテーマへの入り方もいいですよね。2話で、妹の空ちゃんがぐたっとしているところに、「空どうした」というセリフがあって、そこに重なるようにしてイントロが流れる。あの入り方は天才的です。

ーーエンディングテーマは「Goodbye Seven Seas」で、タイトルからして意味ありげですね。

YURiKA:これは余談ですけど、麻枝さん原案のKeyのゲーム『Summer Pockets』には、「七海」というキャラが出てきます。ちなみにCVは花澤香菜さん。隠れキャラみたいな存在ですけど、キーパーソンになっているんです。楽曲としては、個人的にすごく好みの曲調ですね。とくに悲しい曲というわけでもなくて、爽やかなメロディなのに、タイトルに「Goodbye」と別れの言葉が付いているところにグッときます。サビのメロディは明るさもあって、もしかしたら最後に「笑顔で別れよう」みたいなシーンが出てくるのかなって。曲から、これからどうなるのかの展開を想像させてくれます。

ーーKey作品の魅力は、やはり物語と楽曲の結びつきの深さですか?

YURiKA:ドタバタの日常があり、その何気ない日々がどれだけ大切なものだったか、それが後になってわかるという切なさがKey作品のストーリーの特徴です。曲単体で聴いてもすごく良いし、ストーリーと絡めながら聴いても楽しい。それこそ『神様になった日』は、作品のストーリーがまだ最後までわかっていないので、まだ気づけていない部分がきっとたくさんあるはずです。私は『CLANNAD』で、曲だけではわからなかった歌詞の意味が、ゲームをプレイしてアニメを見ることによって、初めて「こういう意味だったんだ」と気づけた経験がありました。音楽とアニメ(ゲーム)、両方知って初めてわかる深さが、Key作品にはあります。ゲームをプレイしたからこそ、アニメを見たからこそ歌詞をより深く味わえるのが、Key作品の魅力ですね。

ーー同じ曲でも、人によって万華鏡みたいに捉え方が変わる。

YURiKA:私もKeyのゲーム『Summer Pockets』シリーズで「夜奏花」など3曲を歌わせていただいたんですけど、「夜奏花」を作詞された魁さんはシナリオライターで、『Summer Pockets』の脚本にも携わっているんですね。『神様になった日』も楽曲の歌詞を、原案と脚本の麻枝さんが書いていらっしゃって。それだけに歌詞とストーリーの結びつきが、より深いんです。

ーー全12話の放送終了後も、その曲からいろいろ感じ取ることができそうですね。

YURiKA:じっくり味わいたいですね。答え合わせじゃないけど、ストーリーを思い返したり、セリフを思い出したりしながら聴いていくのが楽しいです。だから放送が終わっても、ずっと楽しめると思います。

2020年のYURiKA’S BESTは『BNA ビー・エヌ・エー』

ーー先ほど、麻枝さんのメロディはつかみ所がないという話がありましたが、具体的にはどういうところですか?

YURiKA:アニメ『Angel Beats!』で、Liaさんが歌ったオープニングテーマ「My Soul, Your Beats!」は、Aメロのピアノが謎すぎてすごいです。私のカバーライブで、アコースティック編成でカバーさせていただいたんですけど、アレンジをする際にミュージシャンの方が「これはどうなっているんだ?」って頭を抱えていました。

 キャッチーなメロディとか曲って、誰でも聴いてすぐ覚えられますよね。そう作られているし、だからキャッチーだと言われるわけで。でも麻枝さんのメロディは、つかみ所がないのにすごく心に残るキャッチーさがあって、心地よくも感じる。それに加えて、内容の深い歌詞がそこに乗ってくる。分析しようとすると謎だらけでつかみ所がないんですけど、気づいたらもう虜になっているんです。

ーーどんなふうに作っているんでしょうね。

YURiKA:これは聞いた話ですけど、鍵盤とかを使わずにパソコンのキーボードで、ステップ入力というやり方で音符を打ち込んで、小節数とかあまり考えずに作るそうです。それをミュージシャンの方に弾いてもらうために、ほかのスタッフさんが楽譜に起こすそうなんですけど、それがすごく大変らしいですよ。

ーー天才肌ですね。

YURiKA:そうですね。唯一無二の存在だし。インタビューを読むと独特な発言もあって、カリスマですね。来年1月23日にはKey楽曲のみをアコースティックでカバーするライブ『YURiKA Key Cover Live〜Song for friends~』を開催することが決定したので、歌うのが今からすごく楽しみです。

ーーこれはアニメではありませんが、YURiKAさんご自身VRゲーム『リトルウィッチアカデミアVR ほうき星に願いを』の主題歌「Dream Flight」を担当されていて。そのお話も少し聞かせてください。

YURiKA:ゲーム自体は、マリオカートのほうき版みたいな(笑)。テレビシリーズ自体は2018年に放送が終了しているんですけど、2年経ってもこういう展開があるのは、見てくれているファンのみんなと作っているスタッフの愛のたまものですね。私自身アニメ『リトルウィッチアカデミ』オープニングテーマ「Shiny Ray」でデビューさせていただき、またこうしてシリーズの楽曲を歌わせていただけて、本当に恵まれているなと思います。

ーー作詞作曲の大原ゆい子さんも、映画『リトルウィッチアカデミ 魔法仕掛けのパレード』の主題歌「Magic Parade」でデビューしていて。

YURiKA:はい。私だけじゃなく、ゆい子さんにとっても思い入れのある作品です。私の名前で歌ってはいますけど、ゆい子さんの思いも乗せているし、ミュージシャンも当時と変わらないメンバーが携わってくれているし。ファンも含めた『リトルウィッチアカデミア』ファミリーみんなの歌だという感覚です。

ーーロックで熱い楽曲ですね。

YURiKA:そうですね。編曲も「Shiny Ray」と同じ吉田穣さんです。「Dream Flight」の間奏にドラムソロがあるんですけど、そこは『リトルウィッチアカデミア』のサウンドトラックにある「デッドヒート」という曲のオマージュです。サントラからイスピレーションを得たというのは、まさしく編曲家さんの愛だなって思いますね。これも伏線回収じゃないけど、それに気づいて「ウワッ!」って驚いたファンも多かったようです。2番でも、ベースが「デッドヒート」のフレーズを弾いているところがあるんです。『リトルウィッチアカデミ』のことも歌いながら、日常のさまざまな面で元気や勇気を与えられる1曲になっていると思います。めざまし代わりにかけてほしいし、通勤や通学の時に聴いてほしいですね。あと12月に、『YURiKA LIVE Photobook「DEAD HEAT 〜RED vs BLUE〜」』が出ます!

ーーライブの時の表情は、今とはまた違った表情でしょうね。

YURiKA:10月9日に開催した配信ライブ『DEAD HEAT 〜RED vs BLUE〜』で、すごく格好よく撮っていただきました。連載の前回が9月だったんですけど、それから5キロくらい落として臨んだライブだったので、仕上がりはかなり良いです(笑)。

ーーどんなトレーニングを?

YURiKA:YouTubeでトレーニング動画を見ながら、筋トレと有酸素運動で宅トレしました。あと1日3食のうちのどれかをオートミールにするというのもやって、けっこう楽しく落とすことができました。

ーーさて年内はこれで最後となりますが、2020年のアニメ/アニソンシーンはどうでしたか?

YURiKA:こういうご時世で、春アニメが延期になったり再放送が増えたり、アニメに限らずどの業界も大変だったと思います。私自身は好きな作品を延々何度も繰り返し見ているタイプなので、今どういう作品が人気なのか、どういう曲が流行っていたり注目されていたりするのかはわからなくて。この連載のお話をいただいて、すごく良い機会をいただけたと思っています。楽しみながら、勉強にもなっているので、2021年も頑張ってアンテナを立てていろんな作品に触れたいと思っていますね。そんな中でどれかを選ぶのは難しいんですけれど、個人的に印象に残ったのは『BNA ビー・エヌ・エー』ですね。吉成曜監督で、個人的にはすごく印象に残っていますし、内容、絵のタッチ、そして音楽も好きでした。詳しくは連載の第1回を読んでいただいて、まだの方はNetflixなどで見ていただければうれしいです(笑)。

『YURiKAのアニソン最前線』バックナンバー

第2回『彼女、お借りします』ヒャダイン楽曲の魅力や“新時代”感じた今期アニソン
第1回『球詠』『BNA』『ハメフラ』をピックアップ

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