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SKY-HIが語る、アーティストとしての充実と渇望の日々 インディーズ~現在、新事務所&レーベル設立の舞台裏も

リアルサウンド

20/10/1(木) 16:00

 SKY-HIが初のベストアルバム『SKY-HI’s THE BEST』をリリースする。本作は「カミツレベルベット 2020」「愛ブルーム」などの歌唱楽曲を収めた「POPS BEST」、「フリージア ~Original~」「As a Sugar」といったRAP曲による「RAP BEST」、 新曲「Shiawase feat. Honey C」を含むコラボレーション楽曲をまとめた「COLLABORATION BEST」のCD3枚組。新たにボーカルレコーディングを行った楽曲も多数収録、全曲リマスタリングを施し、充実の内容に仕上がっている。

 これまでのキャリアを追体験できる本作について、SKY-HIにインタビュー。オリジナルアルバムを軸にしながら、アーティスト/ラッパーとしての変遷、そして、ベストアルバム以降のビジョンについて語ってもらった。(森朋之)【最終ページに読者プレゼントあり】

最初で最後の大勝負だった『FLOATIN‘LAB』

ーーこれまでリリースしたアルバムを軸にしながら、キャリアを振り返ってみたいと思ってます。まずはインディーズ時代にリリースしたコンピレーションアルバム『SKY-HI presents FLOATIN‘LAB』。ビートメイカー、ラッパーと組んで楽曲制作するプロジェクトをまとめたアルバムで、SKY-HIが世に出た最初の作品ですね。

SKY-HI:そうですね。『FLOATIN‘LAB』は、とにかく盛り上がる企画を作らなくちゃいけなかったんですよね、そのときは。最初で最後の大勝負みたいな気持ちもあったし、このアルバムで上手く波に乗らないと、リリースとプロモーションを継続できないし、活動をスタートさせられなかったので。至上命題というか、大切なタイミングではありましたね。ただ、個人的にはプレッシャーを感じていたというより、「これだけ楽しくて面白ければ、話題になるでしょ!」というテンションだったんですよ。そこだけは信じて疑わなかったし、実際、当時のヒップホップのいちばん面白い動きを捉えることができたんじゃないかな、と。それは良かったと思いますね、振り返ってみると。

ーー『FLOATIN’LAB』に参加したビートメイカー、ラッパーは現場で出会った人ばかりですよね?

SKY-HI:基本はそうじゃないかな。クラブで会ってない人はいないような気がします。その時の空気感をそのまま出せば大丈夫だと思ってたし、自信はありましたね。ジェイ・Z『フェイド・トゥ・ブラック』(2003年11月25日にマディソン・スクエア・ガーデンで行われたジェイ・Zの引退ライブを収録したドキュメント作品。ビヨンセ、ミッシー・エリオット、メアリー・J.ブライジ、ファレル・ウィリアムス、R・ケリーなどが参加)が好きなんですけど、ヒップホップは他のジャンルの人たちと交流しながら、話し合って制作できる関係値が必要だし、それが実現できてたんじゃないかなと。

ーー「One By One feat.TAKUMA THE GREAT(HOOLIGANZ)、ZEUS & BRGK、R指定、SQUASH SQUAD、JAZEE MINOR、DAG FORCE」は、まさに当時のシーンを象徴する楽曲だと思います。

SKY-HI:いいですよね、衝動的で。ただ、良くも悪くも遊びの延長、趣味の延長というか。

ーー6月17日に新宿BLAZEで行われた無観客配信ライブ『We Still In The LAB』でも『FLOATIN’LAB』の収録曲を披露していましたが、タイムラグみたいなものを感じたりしました?

SKY-HI:昔の曲だなって感じる部分はありましたね。でも、今も好きな曲は多くて。「WHIPLASH feat.RAU DEF, 環ROY」「Subway feat.ポチョムキン, EGO, ALI-KICK」「Tumbler feat.KLOOZ, MIHIRO~マイロ~」もそうだし、ある種の普遍性も担保できてるんじゃないかなと。即時的なものに終わらず、クオリティおいてもギリギリ良かったと思います。

ーー当たり前ですけど、作品がタイムレスなものかどうかは、時間が経たないとわからないですからね。

SKY-HI:そうですね、そればっかりは。その当時の評価は置いておいて、自分の手ごたえとして、「これは残りそうだな」という判断は正しかったと証明できたと思います。それもやっぱり、メジャーとディールして活動を大きくさせるために必要だったし、そのことを明確に見据えながら作ったのが『FLOATIN’LAB』だったのかなと。

『FLOATIN’LAB』

ーー音楽シーンの在り方、日高さん自身の状況も今とはまったく違うわけで、まずは結果を出さないと前に進めなかった。

SKY-HI:はい。しかもメジャーレーベルは今よりも偉かったし、アーティストは今よりも偉くなかったので(笑)。そういう状況は今も残っているし、それはそれで由々しき問題なんですけど、まずは「契約してやってもいいよ」という数字を残さないと。他所のレーベルで「やりたい」と言ってくれる人がいくらいても(追加)、AAAをやる以上avexとの(追加)契約形態上、他のレーベルからリリースするのは難しくて。 であれば、エイベックスから出せる状況を作るしかないですから。つまりレーベルからの信頼を得るための数字が必要だったんですけど、目標にしていたハードルは初週でクリアして。その後もジワジワとバックオーダーがあったし、契約自体はわりとすんなり出来たんですけどね。

ーー最初の勝負に勝った、と。

SKY-HI:それもあるけど、当時は「ボールに触ったらゴールに入る」という状態だったから。人生かかってる感じはあったけど、失敗する予感はまったくなかったです。

『TRICKSTER』〜『カタルシス』で湧き出た歌詞への葛藤

ーーそして2014年3月にメジャー第1弾アルバム『TRICKSTER』をリリース。1stシングル『愛ブルーム』を含め、J-POPユーザーに対するアプローチは意識していました?

SKY-HI:それは明確にありました。いろいろ迷いながら制作していたアルバムだし、そのぶん、散らかった印象になったのは反省点ですね(笑)。そうなった理由は、ポップスとしてのキャッチーな部分、音楽的な精度を高めることのバランスですね。それが上手くできてる曲、できてない曲があるっていう。あと、アルバム全体を構築できていない。ガムシャラに単曲を作っていく作業だったし、全体像を作り上げるところまでは届かなかったので。もう一つのポイントはJ-POPとの距離感なんですけど、『愛ブルーム』が出来るちょっと前の段階で、シングルの候補としてストイックなラップチューンを作っていたんです。(1stシングルの収録曲)「RULE」なんですが、その後、「Blanket」みたいなポップスとしての強度を孕んだ曲を作るなかで、「こっちのほうが楽曲としては面白いな」という感覚があって。「RULE」を最初のシングルとして出すことに微妙な危機感もあったし、もっとポップに寄った曲がいいと思って、急遽作ったのが「愛ブルーム」で。そうやって融通が効く状態でメジャー1stを制作できたのは、当時のスタッフといい関係を築けていたんだと思います。

『TRICKSTER』

ーー「愛ブルーム」に対する手ごたえもあった?

SKY-HI:ありましたね。「これは自分にしか作れないポップスだし、ちょっと面白いぞと思って」。しっかりとポップスを作ることに向き合うことが、いちばん豊かな気がしたんですよ、そのときは。それをやっておかないと、今後、その部分がずっと伸びなくなる恐れもあったし。あと、2010年代前半は曲を届けるルートが決まっていた時代ですからね。FMのパワープレイとか、雑誌に出させてもらうことで少しずつ注目度を高めて、テレビに扱ってもらうっていう。ルートが決まってるのはいいことばかりではないけど、「愛ブルーム」を出したことで、挑戦する切符が手に入ったのかなと。AKLOやSALUが自分と同じタイミングで1stアルバムを出したことも意識してましたね。二人と近いことをやりたくなかったし、比較されないことをやらないと幸せな未来がないだろうなって。

ーーいろいろなバランスの上で成り立っていたアルバムなんですね。楽曲のクオリティに関しては、どう感じてますか?

SKY-HI:初めてアレンジャーを入れて制作したんですけど、ぶっちゃけ、あれくらいのクオリティだったら自分で作らなくちゃダメですね(笑)。そのときのアレンジャーの方々は素晴らしかったんですけど、自分で作ったデモのクオリティの低さはわかってるし、もうちょっと高めないと。ただ、意外と今回のベストに入ってる曲も多いんですよ。「Diary」「Blanket」「愛ブルーム」「TOKYO SPOTLIGHT」「Tyrant Island」とか。なので、片鱗くらいはあったんだと思います(笑)。制作の決定権がこっちにあり過ぎたのかもしれないですね、もしかしたら。同じ感覚でディスカッションできる人がまわりにいなかったというか、「このシングルは届くかどうか」とか「ロックフェスに出るために、これをやろう」みたいなことを話せる人もいたし、導いてくれるメンターもいたんだけど、制作のクオリティに関して、きっちり話せる人が少なかったから。ビートメイクとかアレンジとか、ちょっとイジったら名盤になった気がしますね、『TRICKSTER』は。惜しいアルバムです(笑)。ただ、「トリックスター」という曲を聴いてラップをはじめた“さなり”が、いい感じに活動しているのを見てると、結果としては良かったんじゃないかとも思う。

ーー『TRICKSTER』のリリース後、日高さんは「歌詞の力を上げたい」というコメントを残していて。

SKY-HI:ああ、はい。

ーーその試行錯誤が2ndシングル曲「スマイルドロップ」に結実し、代表曲の一つである「カミツレベルベット」につながり、さらに2ndアルバム『カタルシス』(2016年1月)に至ったということも言えると思うのですが。

SKY-HI:確かに。それはまったくその通りだと思います。『TRICKSTER』のときに感じた「もうちょっと」というクリエイティビティを本気で身につけようとして、もがいていた時期だったんだろうなと。その中心にあったのがおそらく、歌詞の力を上げることだったんだと思います。1stアルバムでも、(歌詞のなかで)いいことを言おうとしてるんだけど、言い得ているかというと微妙で。源泉はあるのに、それを伝えるスキルがなかったんですよね。たとえば「愛ブルーム」にしても、“ギスギスした世の中で、それでも君は美しい”と伝えるのに〈アスファルトされた街中で君だけが柔らかくて〉という歌詞を書いたのはいいなって思うし、才能はありそうだなって感じです(笑)。

「フリージア」は自分自身を象徴する曲

ーー具体的にはどういう方法で歌詞をレベルアップさせたんですか?

SKY-HI:具体的には覚えてないですけど、「スマイルドロップ」をメチャクチャ書き直したのは確かで。「スマイルドロップ」は今聴いても、「いい歌詞が書けたな」と思うし、歌い方もなかなか良くて。よくがんばった(笑)。歌詞だけじゃなくて、メロディ、トップライン、フロウ、曲全体のクリエイションが上がったんだと思います。「愛ブルーム」もあったものが、「スマイルドロップ」に明確に生きてるのも良かったなと。

ーーつながっているわけですね、そこは。日高さんとしては当然、自分自身の価値観や生き方、社会に対するメッセージを込めたいという思いもあっただろうし。

SKY-HI:ポップでキャッチ―で中身がなければ、「なんだよそれ」じゃないですか(笑)。ポップなものをやるのであれば、中身の強さがないと続けられないし、自分で自分のことを嫌いになってしまうので。まったく中身のないパーティーソングなんて無理すぎるし、当時は特に日本人に日本語で刺すことを絶対にしなくてはならないと思っていたので、当時は特に日本人に日本語で刺すことを絶対にしなくてはならないと思っていたので、サビで英語を使わないことにもこだわってましたね。「カミツレベルベット」の頭の部分もそうだし。

『カタルシス』

ーー〈単純な事ほど難解だ/正解があれば苦労しないさ〉ですね。ベストアルバムにも『カタルシス』の楽曲が多く選ばれていて。「POPS BEST」の1曲目「カミツレベルベット 2020」、「RAP BEST」の1曲目「フリージア ~Original~」がどちらも『カタルシス』の収録曲っていう。

SKY-HI:あ、ホントだ。ベストアルバムを「POPS BEST」「RAP BEST」に分けることーー結局「COLLABORATION BEST」を含む3枚組になりましたけどーー「RAP BEST」の1曲目を「フリージア」のオリジナルバージョンにすることは4、5年前から決めていたんです。

ーー「フリージア」が特別な曲であるポイントって、どこにあるんですか?

SKY-HI:「フリージア」がなぜ特別か、ですか? 自分自身を象徴する曲だと思うし、一文字一文字、全てのフロウが特別というか、狙いとか計算が一切ない曲なんですよ。逆に「カミツレベルベット」は、狙いや計算の果てに出来た曲なんです。自分史上、いちばんポップなものを作ろうと思ったので。

ーーなるほど。

SKY-HI:「スマイルドロップ」もポップに振り切っていて。「自分はこういう曲を作れる人間にならないといけない」という天啓があったというか。「スマイルドロップ」を作り上げたことで体が出来て、それを活かしたのが「カミツレベルベット」だったんです。逆に言うと「これよりもポップになることはない」というラインでもあるんですよ、「カミツレベルベット」は。これ以上ポップになると、自分の作品ではなくなる気がして。そういう意味では、「フリージア」と「カミツレベルベット」は両極端だし、だからこそベストアルバムでも両方1曲目になったんでしょうね。

渇望や悩みもかなりあった『OLIVE』〜『JAPRISON』期

ーー『カタルシス』はオリコンチャート5位を記録。2016年の夏には大型ロックフェスに出演するなど、SKY-HIの存在感が幅広く浸透しました。そういう意味でもターニングポイントになった作品ですよね。

SKY-HI:ある程度の評価を得られたのは良かったと思います。ただ、クリエイションに関しても力を付けられたと思うけど、今度はボーカルの甘さが気になって。「カミツレベルベット 2020」「アイリスライト 2020」「Seaside Bound」もそうですけど、ベストに入れた曲はほとんどボーカルを録り直してるんですよ。「ここのラップが気になるな」という箇所も多いし。それ以外はいいアルバムだと思います(笑)。こういう構築性のあるアルバムをもう一度作る必要があると思ってるんですけど、なかなか難しいですね。

ーーそして2017年1月に3rdアルバム『OLIVE』を発表。ベストアルバムには「ナナイロホリデー」「Double Down」「十七歳」「Walking on Water」「クロノグラフ」などが入っていますが、全体を通し、ポジティブなメッセージが感じられる作品です。

SKY-HI:良いメンタルですよね、アルバム自体は。「スマイルドロップ」以降、“がんばったら何とかなる”ということが身に染みていて。「このクオリティでは物足りない。もっと先にいける、もっと良くなる」と繰り返してきたし、その成果は出ていると思います。そのぶん、ちょっと善性が強すぎる気がしますけどね。「Walking on Water」のようなエッジのある曲をもう少し膨らませたほうが良かったし、あとはボーカルプロダクションですね。喉の手術をした直後のアルバムなんですけど、それにしてももうちょっと上手く歌ってほしい(笑)。

『OLIVE』

ーー本当に満足しないですね(笑)。「Double Down」に代表される、“おまえら、手のひら返しやがって”という気分の曲もいいですよね。

SKY-HI:ボースティングというか、「Double Down」みたいな歌詞が書けたのもいいことですね、確かに。世の中の違和感みたいなものに対して、ちょっと強気に出てるというか。「Walking on Water」もそうだし、言行一致になってきてますね、このあたり。ただねぇ、やっぱり脇が甘い(笑)。惜しいんだよなあ。

ーークオリティと知名度が上がったことで、活動はやりやすくなった?

SKY-HI:それもあるけど、根っこは変わらないんですよ。ずっと渇望はついて回るし、それなりにイライラしてるし、悩みもあるので。『OLIVE』の善性の強さ、さらにポップスとしての強度を高めようする意思と同時に、渇望や悩みもかなりあったと思います。最初の武道館ライブ(2017年5月)のタイミングでもあったんですけど、「ちょっと待てよ」と心のなかのキムタクが(笑)。

ーー(笑)。当時の悩みの根本はどこだったんですか?

SKY-HI:うーん……。日本の芸能システムがこのまま変わらず、それに適応した楽曲を作る力が付いたとして、自分はその一部になるのかなと。ずっとモヤモヤしたものを感じていたし、目立つようになればなるほど、いろんなところから石が飛んできて。精神的には地獄でしたね。

ーーそこから抜ける方法やきっかけはなかった?

SKY-HI:ないです。だって、どうしようもないから。身近なスタッフや友達、THE SUPER FLYERS以外、信頼できる人はいなかったので。

ーーそのシリアスな思いは、2018年2月のアルバム『JAPRISON』にも反映されている?

SKY-HI:『OLIVE』から『JAPRISON』の流れを言語化すれば、そういうことになるでしょうね。

ーーなるほど。サウンドメイク、プロデュースワークについてはどうですか? 斎藤宏介さん(UNISON SQUARE GARDEN)、starRoさん、UTAさん、SUNNY BOYさんから亀田誠治さん、蔦谷好位置さんまで、幅広いジャンルのクリエイターが参加しながらも、これまでのキャリアのなかでも、もっとも海外のヒップホップと親和性の高い作品だと思いますが。

SKY-HI:うん、そうですね。クリエイションについては、何も言うことがないと思います。あるとすれば、アルバムの構築性かな。伝えたいことと、伝え方のバランスみたいなものが、『カタルシス』ほどのレベルには達してない気がするので。『JAPRISON』の制作の時期は、どうしても自分の主観がブレざるを得なかったし、そこは惜しいところですね。ただ、『JAPRISON』のツアーはすごく良くて。ライブショーとして完璧だったというか、満足してますね。振り返ってみると、ツアーは全部、納得できてるかな。アルバムにはずっとダメ出ししてますけど(笑)、ツアーの映像は見直してみても「最高だな」と思えるので。

『JAPRISON』

ーーライブが唯一の救いの場所だった?

SKY-HI:そうですね。まあ、すべては繋がっているから、いいツアーをやった後は「ライブパフォーマンスの良さを制作に表し切れてない」と思っちゃうんだけど(笑)。それはたぶん、これまでのインタビューでも言ってたんじゃないかな。

ーーいい曲が多いですけどね、『JAPRISON』も。ベストアルバムに入っている曲だと「New Verse」「Marble」「Persona」とか。

SKY-HI:確かに(笑)。最近の曲もみんな好きなんですよ。「そこにいた」も「Sky’s The Limit」も「#Homesession」も「Sexual Healing」も。そう考えると、早くアルバムを出したほうがいいのかも。でも、ベストアルバムに入れちゃいましたからね。まとめました、これまでの活動をすべて。

マネージメント&レーベル会社設立の背景

ーーベストアルバムでキャリアを総括したことで、何か気づいたことはありますか?

SKY-HI:ずっと冷静になれる状況ではなかったな、と思いましたね。心身ともにあまりにも忙しすぎた。本当は心身のどっちかに余裕を持って、クリエイションに身を投じる必要があったんじゃないかなと。

ーー楽曲自体はどうですか? リマスタリングを施して、サウンドメイクも更新したことで、満足度は増したと思うのですが。

SKY-HI:うん、それはすごくあります。この前、YouTubeでベストの収録曲を流しながらホームパーティー(8月21日に配信された「SKY-HI’s THE BEST 全曲試聴ホームパーティー!」)をやったんですよ。しゃべりながら聴いて、曲は途中で切ってたんですけど、それでも「いいな」って思って。いままでは昔の曲を聴くのが恥ずかしかったんですけど、リマスタリングしたことで、それもなくなったし。

ーー自身の成長も感じたり?

SKY-HI:それもあるんですけど、成長が見えるのって微妙ですよね。早い段階で完成されてるアーティストだったら、昔の曲を聴いてもそんなに恥ずかしくないと思うんですよ。自分の場合はそうじゃなくて、成長曲線がしっかりあるので、だいぶ恥ずかしい(笑)。そのぶん、得たものはいろいろありますけど。傾向と対策というか、自分が抱えている問題点がすごく見えたり。若いアーティストに相談されたときも、たいていのことは「あーなるほど」と共感できるというか、当事者にしかわからない葛藤があるということも含めて想像することは出来るから、どんなことで悩んでても小さい悩みだと思わないしちゃんと話を聞きたいと思えます。完璧な人のコンプレックスもそうだし、不完全だと自覚してしまっている人の弱さもそうだし。それがわかるのは、自分自身があがきながらやってきたからだと思います。「よくがんばってきたな」と思うし、客観的に見ても好きなアーティストですね。

ーーヒップホップを軸にしながら、メジャーシーンでこれだけリリースを続けているアーティストもいないのでは?

SKY-HI:そんなことないですよ。クレさん(KREVA)とか、ずっとやってるわけだし。まあ、確かに特殊かもしれないですね、自分は。ここまで帰属する場所がないアーティストは滅多にいないと思うし、ただ、もうそういう人が出てきてほしくないなって。この孤独感はなかなか辛いものがあるので。

ーーシーンに属さず、基本的に個人で戦ってきたというか。

SKY-HI:そうかも。圧倒的な個人主義は、ものすごく優しい力になり得ることもわかりましたね。集団でいると、必ず周りの意見に影響されると思うんだけど、自分はそうじゃないから物事や人に対してシンプルに向き合える。それは信じてるものがないとも言えるし、同時にいろんなものを信じていることと同義な気もして。そういう体験を重ねると、人に優しくなれるんですよ、ブルーハーツばりに(笑)。

ーー(笑)。今回のベストアルバムが一つのピリオドだとしたら、その先の展開はどうなりそうですか?

SKY-HI:まず9月26日に千葉の実家から『実家ワンマン』をやります。その後は、3年以上前から考えていたことがあって、引き続きそこに向けて動く感じですね。マネージメントとレーベルを設立するんですよ。エイベックスとも非常に前向きな関係でして、どっちかっていうと、HIROさんがLDHを作ったことに近いかもしれない。将来有望な若手も「一緒にやりたい」と言ってくれてるので、そのことも一緒に発表しようと思ってます。あと、ボーイズグループを作ろうと思っていて、2021年からオーディションをはじめようかなと。いろいろあるんですけど、何が困るって、マジで銀行が渋いんですよ、いま。

ーー起業家の話ですね、それ(笑)。レーベルを立ち上げた、一番大きい理由は?

SKY-HI:価値観の創生ですね。今日の日本の音楽業界の課題もあるんですけど、いま状況というのは、韓国はおろか、東アジアの様々な国に後れを取りつつあって。Awichとかが風向きを変えつつありますけど、東アジアの音楽にこれだけ世界的な注目が集まっているなか、日本だけが駆逐されるんじゃないかという危機感があって。言葉を選ばずに言えば、今、日本のアーティストの音楽を聴くメリットということは、日本語が聴けること以外、何もないような気がして……そこまで行くと極端すぎる言説だけど(笑)。

ーーなるほど。

SKY-HI:従来のやり方を否定しているわけではなくて、理解している部分もあるんだけど、20年くらい前から続いているものを塗り替えるのは無理だなと。であれば、まったく新しいものを作るしかないし、そのほうが可能性が高いと思うんですよね。そのための身体と心の準備が出来たので、やるしかないなと。カテゴライズやジャンルでマーケットを決めるのはナンセンスだし、さっきも言ったように、自分が苦しんでいたことを若い世代のアーティストに味わってほしくないので。「居場所がないなら、作っちゃえばいいじゃない」っていう、マリー・アントワネットばりのスタンスですね(笑)。

ーー素晴らしい。もちろんSKY-HIも継続なんですよね?

SKY-HI:継続どころか、秋口には新曲を出そうと思ってますし、客演のオファーも面白い話しが来ているので。絶好調です。

『SKY-HI’s THE BEST -RAP BEST-』
『SKY-HI’s THE BEST -POPS BEST』
『SKY-HI’s THE BEST -COLLABORATION BEST』

■リリース情報
SKY-HI『SKY-HI’s THE BEST』
9月23日(水)発売
EC STORE購入はこちら

iTunes Pre-Orderはこちら↓(9月22日まで)
※期間限定スペシャルプライス 各¥900(tax in) 
SKY-HI’s THE BEST -POPS BEST-
SKY-HI’s THE BEST -RAP BEST-
SKY-HI’s THE BEST -COLLABORATION BEST-

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