ジョーカー
19/9/30(月)
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「面白かった」なんて言っちゃいけない! けれどこれは作るべき映画で観るべき映画なのよ! アメコミの映画で、こんなアプローチの仕方をするハリウッドの映画作りへの本気度合いに拍手を贈りたいっ!
DC映画では『ダークナイト』とか、アメコミヒーロー映画にしては、カタルシスと重厚感ある映像世界で度肝を抜かれたし、あのときのヒース・レジャーのジョーカーは、映画史に残るキャラクターだったので、彼以外のジョーカーなんて、ジャレッド・レトも頑張っていたけれど、もはやジャック・ニコルソンくらいの名優しか頭には残っていなかったのよ。
そ、れ、が、覆ろうとしている! 私の頭の中で!
ホアキン・フェニックスの演技力に気づいたのは、泣きながら残虐なことをする『グラディエーター』の若き皇帝役のときでありました。以来、何を演じても「上手い!」のひと言で、ホアキンの演技力の幅は分かったつもりでおりました。
しかし、今回の『ジョーカー』は間違いなくその上の上の上をいく演技アプローチで、もうスクリーンに釘づけどころか、瞬きさえしたくなかった!
確かに劇中、色んな人にジョーカーことアーサーが言われる「気持ち悪い」という言葉が、申し訳ないけれど似合う。お友達にもなりたくないなと思ってしまう自分は、やっぱり偏見の持ち主なのか?と、映画の中でアーサーに対して白い目を向ける人々と自分を投影しては反省。
彼は決して悪くはない。あまりに境遇が不幸だっただけ。そして心の状態を顔に映し出す神経回路が、もしかしたら少し絡まっているのかもしれない。そうなってしまった理由も彼を取り巻く大人たちのせい。アーサーが心の奥底に潜めていたジョーカーというヒールを表に出したのは、貧困からの負の連鎖による人々の怒りからかもしれない。
こんなにも悲しく、こんなにも虚しく、こんなにも力強く、こんなにも恐ろしい道化師は、果たしてヒールなのか? それとも貧困層にとっての代弁者であり、ヒーローなのか?
ホアキン演じるジョーカーとロバート・デ・ニーロ演じる人気コメディアンが対峙するシーンには、ある意味、『タクシードライバー』でカメレオン俳優と称されたデ・ニーロが、ホアキンを認めた結果にさえ思え、感慨深くなったのでありました。
アカデミー賞主演男優賞は確実ですね、ホアキン・フェニックス。
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