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『ONE PIECE』フランキーの一味における役割とは? 作者の遊び心が詰め込まれた“飛び道具”の魅力

リアルサウンド

20/8/27(木) 15:00

 麦わらの一味において、最大級に“なんでもあり”を体現した船大工のフランキー。彼は、「そんなのありか!?」と私たち読者が思わずツッコミを入れざるを得ない、一味のなかでも度を超えた存在である。作者である尾田栄一郎先生の遊び心が満載のキャラクターが、このフランキーなのだ。

 船長のルフィに次いで天然な性格のゾロ、お金に目がないナミ、口からでまかせのウソップ、女好きのサンジ……と、それぞれにアクが強く、ムードメーカーだらけの麦わらの一味。しかしフランキーこそが、(ルフィを含めた)8人目のメンバーにして、ついにやってきた“真のムードメーカー”ではないだろうか。

 フランキーといえば、情が深く、すぐに涙を流し、それでいて豪快な男気あふれる存在。だが彼は当初、ニコ・ロビンと同じように“敵”として麦わらの一味の前に姿を現した。その見た目はリーゼントにサングラス、それにアロハシャツに海パン……。いかにも不良然とした、絵に描いたような“ワル”の出で立ちである。

 しかし、情に流されやすく、見た目もトリッキーという点は、子どもたちから支持される要素でもあるだろう。彼の分かりやすい感情的な性格は、物語展開への読者の反応を代弁するようなものであるし、見た目の派手さは作品世界に愉快な活気を与えるものだ。

 そのうえ彼は、サイボーグ(改造人間)でもある。身体のあちこちから武器を出したり変形したりするというのは、ルフィ、ウソップ、チョッパーのような子どもっぽい面々がはしゃぐのと同じように、読者から見ても思わず楽しくなるものだろう。さらには、やたらとキメポーズを取りたがったり、「スーパー」が口癖であったり、コーラが燃料であったり……こう書いていると、フランキーがあまりにもアソビが過ぎるキャラクターであることを改めて認識させられる。まさに“なんでもあり”だ。

 不良キャラや、サイボーグであることなど、初登場時は“人間トナカイ”のチョッパー以上に読者を戸惑わせたフランキー。これまで述べてきた点が一部の読者にとっては、彼へのとっつきにくさでもあったと思う。「エニエス・ロビー編」での、ロビン救出のための麦わらの一味との共闘後、彼が仲間に加わることが判明した際に驚きの声が上がったことも想像に難くない。筆者も例に漏れず、「マジか……」という言葉を漏らしたものである。それはやはり、彼が“なんでもあり”過ぎるからだ。

 しかしストーリーが展開するにつれて、フランキーが厚い支持を集めてきたこともまた事実だろう。そもそも彼には、“自分の造った船に乗り、その船が海の果てに辿り着くのを見届ける”という夢があった。麦わらの一味の誰もが抱く、「ロマン」の一つだ。これの第一歩としてカタチになったのが、サウザンドサニー号の誕生である。そして仲間たちと荒波を超えるごとに、この夢は現実のものとなりつつあるのだ。

 それに、繰り返すように“なんでもあり”のフランキーは、例えば物語の展開が停滞しても、その言動や発想、隠し技などによって、一時的にV字回復できる存在でもある。まさに『ONE PIECE』における“飛び道具”だ。ときに彼は、大きな切り札ともなるわけである。一味が絶体絶命のピンチに陥った際など、トリックスター的な役回りのフランキーに期待をかける方も多いのではないだろうか。あらゆる意味で自由度の高い彼にこそ、作者である尾田先生の作家性や本音が、意外にもみられるのかもしれない。

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

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