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トラックメイカー/シンガー yonkeyが語る、他者とのコラボで音楽を作る喜び 愛用機材の紹介も

リアルサウンド

20/2/27(木) 18:00

 現在、日本のインディペンデントシーンにおける最重要人物の1人であるAAAMYYYをフィーチャーし、<LINE RECORDS>から、シングル曲「ダウナーラブ」でデビューを果たした22歳のトラックメイカー/シンガーのyonkeyが、早くも2ndシングル「Haunter」をリリースする。

 サンダーキャットや向井太一、ケロ・ワンなど多彩なゲストミュージシャンを迎えたデビューアルバム『Play.Make.Believe.』が話題となっている、大の日本好きアーティスト、Ace Hashimotoをフィーチャーした本作は、メロウでほんのりダークな色合いが特徴だった「ダウナーラブ」から一転、ポップでカラフルなメロディと、あたたかいグルーヴが心に染み入る楽曲に仕上がっている。昭和の歌謡曲をこよなく愛し、トラディショナルなソングライティングをベースに最先端のエレクトロ~ヒップホップを織り交ぜたyonkeyの楽曲は、今後ますます注目を集めること必至だ。

 ソロ名義での活動と並行し、高校時代の友人と結成したロックバンド・Klang Rulerでも精力的に作品を作り続けているyonkey。今回リアルサウンドでは、彼がトラックメイキング~ソングライティング時に愛用している機材類を紹介してもらいつつ、音楽に目覚めたきっかけやコラボレーションの楽しさ、歌謡曲への思いなどをたっぷりと語ってもらった。(黒田隆憲)

“核”はちゃんと持っていたい


ーー2歳の頃からクラシックピアノをやっていたそうですね。

yonkey:物心がついたときにはスクールに通ってピアノを弾いていました。始めた当時は、周りの幼なじみの子たちもやっていたんですけど、みんな辞めてしまって最終的に残ったのは僕だけでしたね。続けていくうちにどんどん楽しくなっていって、そのうちコンクールにも出るようになって。

ーースクリレックスを聴いてトラックメイキングに目覚めたそうですが、それまではずっとクラシックをやっていたのですか?

yonkey:途中からポップスに移行して、歌謡曲のジャズアレンジなどを弾いていました。基本的に楽譜を見て演奏しているだけで、曲作りみたいなことは全くやっていなかったんですけど、スクリレックスとかダブステップとか、その辺りの音楽を聴いた時にとにかく衝撃を受けたんです。最初、あまりの情報量に頭が追いつかなかったんですよ。それまで聴いていた、いわゆるJ-POPとは全く違う種類の音楽じゃないですか。「これは一体、どうなっているんだろう?」「この音はどうやって鳴らしているんだ?」と。それを、パソコンの音楽ソフトで解明しようと思ったのが18歳の頃でした。

ーー「作りたい」と思うより、「仕組みを知りたい」の方が先だったんですね。

yonkey:実はスクリレックスに出会う前に、海外のヒップホップにハマって毎日YouTubeでディグっていた時期もありました。エミネムやリル・ウェインなど、当時最先端のラッパーに夢中になっていたんです。言葉が理解できないのに「この曲、なぜか感動するな」とか、「この曲は情熱的だ」とか、言語以外で伝わってくることに感銘を受けたんです。邦楽はまず歌詞が先に来るから、どんな歌を歌っているのか、どんな感情を表しているのかがすぐ入ってきますよね。洋楽はそれがないぶん、音の響きや曲の展開などからドラマを想像できるのが面白いなって。

ーー映像にも興味があって、自分で動画撮影もしていたそうですね。

yonkey:小さい頃から映画が好きで、『レオン』とかリアルタイムではない作品を、お父さんに勧めてもらって観ていました。「暗殺者とかカッコいいな」みたいな気持ちって、中学生くらいだとあるじゃないですか(笑)。それで、中学生の頃に初めて買ってもらったスマホで映画を撮ってみよう、と。クラスのカッコいい人をキャスティングして、駐車場とかで撮影していましたね。

ーーバンドを組んだのはいつ頃ですか?

yonkey:音楽を作り始めた18歳の頃、スクリレックスと同じくらいロックバンドも好きになってOasisやThe Beatlesをよく聴いていました。ビートルズはもちろん、オアシスも僕が聴き始めた頃には解散していたのですが、何かの機会に「Don’t Look Back In Anger」を聴いてめっちゃ感動して。「俺もバンドやりたい!」と思って近所の幼なじみを集めて結成したのがKlang Rulerでした。同じ時期にUVERworldの武道館ライブを観にいったのも大きかったですね。

ーーKlang Rulerでは、どんな音楽をやりたいと思っていたのですか?

yonkey:今もそうなんですけど、僕はあまりジャンルとかにこだわりがなくて。ロックバンドだけ聴いてきたわけでもないし、クラシックもヒップホップも聴いてきたからこそ、あまりジャンルの壁とか意識せず、「カッコよければそれでいいじゃん」というマインドでいられたのかもしれないですね。

ーーバンドをやりつつ、一人でトラックメイキングにも勤しんでいたと。

yonkey:18歳でスクリレックスに衝撃を受けて以来、音楽を作りたいという衝動が止まらなくて。一人でいる時はとにかくトラックメイキングを勉強して、みんなといるときはバンドでギターやキーボードを演奏するという、まさに音楽漬けの日々でしたね。高校では先生も応援してくれて、「ノートPCを学校に持ってきていいよ」って言ってくれたので、みんなが受験勉強している中一人ヘッドホンして教室でも曲作りをやらせてもらえたんですよ。

ーー素晴らしい環境ですね(笑)。

yonkey:大学受験は途中まで勉強していて一応合格圏内にいたんですけど、音楽を勉強したい気持ちが強すぎて専門学校へ行くことにしたんです。親は最初反対していたんですけど、頭を下げて頼み込んでなんとか了承を得ました。今はすごく応援してくれていますね。他のメンバーも同じように、それぞれの親を説得してみんなで専門学校へ通うことになりました。若かったのもあるけど、迷いとか葛藤は全然なくて。「今やらなきゃ一生後悔するでしょ!」と思って突っ走りましたね。

ーートラックメイカーとしての活動とKlang Rulerとしての活動の両立について、どんなふうに考えていますか?

yonkey:最初の頃は全く考えてなかったというか、「トラックも好きだしバンドも好きなので両方やっちゃえ」みたいに、全く別物だと思って続けていたんですが、結構共通点があることに気がついたんです。バンドの方にも僕のトラックメイキングの感覚が反映されるようになってきたし、トラックメイキングの方にもバンドっぽい要素が増えてきて。いつの間にか境界線もなくなっていましたね。例えばトラックメイキングでもリリックにこだわったり、バンドでソングライティングしている部分を活かしたりすることで、バンドもやっている必然性も出てくるなと。

Klang Ruler – The Way You Are (Official Music Video)

ーーなるほど。

yonkey:ただ、そうなってくるとKlang Rulerがロックバンドのイベントになかなかブッキングしてもらえないし、呼ばれたとしても「このラインナップの中で、自分たちはどんな位置づけなのか、どんな風に見せていくべきか」を今まで以上に考えるようになって。そこは悩ましい部分であり、今後の課題だとも思っていますね。ジャンルにとらわれず、カテゴライズされない音楽をやっていくにしても“核”はちゃんと持っていたいというか。サウンドコンセプトを統一して、「yonkeyっぽいな」と思わせるようにしたいです。

ーー今の段階では、自分の楽曲のどのあたりに「yonkeyっぽさ」を感じていますか?

yonkey:トラックメイキングの部分でいうと、音色も豊富で、例えばオルゴールとかそういう可愛くてキラキラした音が鳴っているところですかね。バンドでは、サウンドは海外っぽくても日本語の歌詞が響くようなメロディをチョイスしているところなのかなと思います。

yonkeyが愛用している機材について

ーー普段、曲作りはどんなふうに行なっているのですか?

yonkey:以前はひたすらパソコンをいじっていたんですけど、今はなるべくそういう時間を減らして頭の中である程度構築してからパソコンにアウトプットするようにしています。とにかくアウトプットすることよりも、インプットに時間をかけていますね。Netflixを観たり、いろんな音楽を聴いたりして、どういうふうに仕上げるかを頭の中でスケッチしています。

ーーアイデアが固まる前からパソコンに打ち込んでしまうと、それ以上アイデアが広がりにくいというか。

yonkey:そうなんですよ。パソコンはあくまでもアウトプットのツールであって、そこで0から1を生み出すよりも、自分が何をやりたいかをちゃんと固めてから使った方がいいんじゃないかと今は思っています。なので、シンセやドラムの音色、メロディの動き方まで細かくシミュレーションしていますね。

 あと、メロディは楽譜に書き起こしてみることもあります。そうするとメロディの動きを視覚で判断できる。たまに、ヒット曲のメロディを譜面に起こしてみることもありますね。「なんで、ここで切なく聞こえるんだろう?」とか視覚的に分析してみたり。

ーーそれは面白いですね。ところで今日は、作曲で使用している機材を持ってきてくれたんですよね?

yonkey:はい。ノートPCとROLI/BLOCKSと、AbletonのMIDIコントローラーを持ってきました。これらは普段、移動中に使っている機材です。荷物がかさばる時は、スマホとROLI/BLOCKSだけで曲を作ることもありますね。ROLI/BLOCKSは見た目も好きですし、音色も面白くて。これをそのまま本チャンで使うことはないんですけど、結構直感的に動かせるところも気に入っています。パッドに指を置いて、押す力を加えてみたり、上下左右にドラッグしてみたり。普段とは違う指の動かし方によって、普通の鍵盤では思いつかないアイデアがパッと出てくるんです。インスピレーションを得るためのツールの一つとして、ちょっとしたガジェット感覚で使えるところも重宝していますね。

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yonkey私物:ノートPC
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ーーAbletonのMIDIコントローラーは、もう少し細かい編集もできる機材ですね。

yonkey:ソフトもAbleton Liveがメインで、apple Logic Proもたまに使っています。そこでループを作ったり、さらにEQをかけたり。数値の細かい調整などは、コントローラーと連動させたツマミを回したりすると、あまり数値に捉われずアナログ感覚で操作できるのが気に入っています。普段は88鍵のキーボードを使っていますが、あえて小さい鍵盤を使ってみるとアイデアが湧いてくるんですよ。

 ちょっと前に読んだスティーブ・レイシー(The Internet)のインタビューで、彼が昨年リリースしたアルバム『Apollo XXI』を「ほとんどGarageBandで作った」と話していて。ドラムに至っては、スマホのGarageBandで打ち込んだらしいんです。制限された中で、あんないいアルバムが作れるんだと驚きました。自分も、どんな環境でもいいものを作れるように心がけています。

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ROLI/BLOCKS実演
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ーーそれこそ、前回「ダウナーラブ」でコラボしたAAAMYYYさんも携帯の作曲アプリで曲を作っていますしね。

yonkey:AAAMYYYさんとコラボしてから「やっぱり機材だけじゃないんだな」って強く思いました。頭の中で考えてからインプットするようになったのも、制限の多い機材でトラックメイキングをするようになったのも、実はAAAMYYYさんの影響なんですよ。

Ace Hashimoto、AAAMYYY……コラボから受ける刺激

yonkey – Haunter (feat. Ace Hashimoto) [Official Lyric Video]

ーーでは、Ace Hashimotoさんをフィーチャーした今回の新作「Haunter」について、どのようなプロセスで制作していったのか教えてください。

yonkey:トラックメイカーのMoe ShopからAce Hashimotoのことを教えてもらい、実際トラックを聴いてみたらめちゃめちゃ良くて。日本のカルチャーにも造詣が深いし、僕がやっている音楽とも相性がいいかなと思ってお願いしました。

 まずは、彼をイメージしつつ作ったラフなデモを3曲くらい本人に渡して。そしたら「どれもすごくいいけど」と言いながら選んでくれたのがこの曲でした。Ace Hashimotoが作る音楽はちょっとローファイっぽいというか。そういうサウンドでラップしていることが多いので、そこをエッセンスとして取り入れたり、でもローファイすぎないところも欲しくてフックの部分で盛り上げたり。トラックとしてもカッコよく、メロディもちゃんと聞いてもらえるような仕上がりを目指しましたね。

ーー実際のやり取りはどんなふうに行われたのですか?

yonkey:最初、いきなりAceからリリックとメロディの両方が一気に送られてきて。僕はあまり英語が得意じゃないので、マネージャーに助けてもらいながら「ここはこういうメロディがいいんだけど」と返したら、それに対してAceがボイスメッセージで「じゃあ、こういうトップラインはどうかな」みたいな、そんなやりとりを何度かさせてもらいながら仕上げていきました。なので、メロディ部分は僕がバースを、彼はコーラスを考えるみたいな感じで割とガッツリ共作という形になりましたね。

ーー歌詞はAceさんが考えたのですか?

yonkey:そうです。僕のサウンドからイメージした歌詞を、Aceが考えてくれました。ちょっと恋愛っぽい内容にしたいと思っていたら、まさにそういう歌詞を送ってくれたので「さすがAce、分かってくれてるな」と思いましたね(笑)。

ーーAAAMYYYさんをフィーチャーした「ダウナーラブ」とは、かなり趣の違う楽曲になりましたよね。

yonkey – ダウナーラブ (feat. AAAMYYY) [Official Lyric Video]

yonkey;「ダウナーラブ」はトップラインを僕が一人で書いて、それをAAAMYYYさんに歌ってもらう感じだったけど、「Haunter」はメロディラインやトラックなど様々なところに「Aceらしさ」が滲み出た作品になったと思います。

ーーAAAMYYYさんやAceさんなど、他者とコラボすることはyonkeyさん自身にどんな効果をもたらしていますか?

yonkey:これまでトラックメイキングに関しては、ずっと一人で家に篭って1年くらいやってきたんです。楽曲作りに関しては完全に独学だったから、次のステップでは「これまで培ってきたスキルを使って他のアーティストといかに協力し合えるか」をテーマに考えたくて。そういう意味では、AAAMYYYさんともAceとも、すごく刺激的なやりとりをさせてもらえました。僕にとっての「作る喜び」みたいなものは今、ここにあるんじゃないかなと思っていますね。自分一人で完結するのではなく、ちゃんと“核”を持つアーティストとがっつり組んで、一つの作品を作ることに喜びというか、幸せを感じています。

ーー今後やってみたいコラボや楽曲提供などありますか?

yonkey:今回、海外のアーティストと曲を作って、今までにない刺激をもらったんです。最初に話した「言語は分からなくても、メロディやサウンドで感情が伝わってくる感じ」を自分の作品に取り込めたのが嬉しくて、今後もまた海外アーティストと一緒に作れる機会があったらいいなと思っていますね。例えばトラックメイカーのマデオンが、昨年リリースしたアルバム『Good Faith』は、音像の作り方とか楽曲のクオリティが頭ひとつ抜けているなと。彼といつか一緒にコラボするのは夢ですね。

ーー同世代のクリエイターで気になる人、共感する人はいますか?

yonkey:ムラ・マサは歳が一つ上なんですけど、デビューした時からずっとチェックしています。彼が今年リリースしたアルバム『R.Y.C』は、今までの路線を一新してUKロックやパンクの要素、チルじゃないある意味暴力的な部分を出してきて、今の若者のフラストレーションを代弁している感じにすごく感銘を受けました。同世代の中では一番共感を覚えるというか、それ以前に純粋なファンでもありますね。

 国内のアーティストは、Klang Ruler主催のイベント『Midnight Session』で繋がることが結構多いかもしれない。そこでは同世代のかっこいいアーティストをフィーチャーして、日本の歌謡曲を全く新しい解釈でカバーし、映像も全部僕らが担当するということをやってるんですよ。

ーーそれは面白そうですね。

yonkey:最近だと新しい学校のリーダーズと、山本リンダさんの「どうにもとまらない」を一緒にカバーしました。他にも竹内まりやさんの「プラスティック・ラブ」や和田アキ子さんの「笑って許して」、山下達郎さんの「SPARKLE」をカバーしたこともあります。僕の周りのかっこいい人たちを、今後もフックアップしていけたらいいなと思っているのでチェックしてもらえたら嬉しいですね。

山下達郎 / SPARKLE ( Klang Ruler & Foods )

ーーちなみに昭和の歌謡曲って、yonkeyさんの世代にはどんなふうに聴こえるのでしょうか。

yonkey:小さい頃は「お茶の間のBGM」程度の認識だったんですが、最近色んな音楽に触れた後に歌謡曲を聴くと「なんていい曲なんだ」と思います。音楽的にも完成度がすごく高いし、特にメロディとコードの関係については本当に学ぶことが多いです。カバーすることで、そのエッセンスも自分の中に取り込めるし一石二鳥なんですよね。

 最近の僕の作る曲は、コードワークやメロディには歌謡曲からのインスピレーションがめちゃくちゃ大きいです。最近はループミュージックが全盛だけど、歌謡曲ならではのしっかりとした構成やホーンセクションなどをうまく取り入れたら、他にはない音楽をもう一度作れるんじゃないかと思っています。そこは今後も研究していきたいですね。

あわせて聴きたい

How to make the new songs of yonkey

■配信情報
「Haunter (feat. Ace Hashimoto)」
2020年2月19日(水) LINE MUSIC 先行配信リリース
LINE MUSIC
2020年2月26日(水)音楽配信サイトリリース
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OFFICIAL WEBSITE
OFFICIAL Twitter
LINE RECORDS yonkey

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