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川本三郎の『映画のメリーゴーラウンド』

『七年目の浮気』の話から…ディマジオ、『さらば愛しき女よ』…『刑事コロンボ』シリーズにつながりました。

隔週連載

第20回

19/3/19(火)

 『七年目の浮気』(1955年)で誰もが知っている場面は、マリリン・モンローの白いドレスが地下鉄の風によって巻き上げられ、下着が見えてしまうというセクシーな場面だが、監督のビリー・ワイルダーは、この場面をニューヨークのレキシントン街で撮影した。
 当然、大勢の見物人が集まった。なかには野卑な野次を飛ばす見物人もいただろう。その場に、マリリン・モンローの当時の夫、ニューヨーク・ヤンキースの強打者、ジョー・ディマジオがいた。
 新婚早々のディマジオは、妻がいくら女優とはいえ、町なかで無神経で下品な男たちの目にさらされるのが耐えられなかった。グラマー女優と結婚した宿命とはいえ、ディマジオは、この光景に屈辱を覚えた。無理もない。

 そして、結婚後、九ヶ月にして離婚してしまった。言うまでもなくジョー・ディマジオは、1940年代に活躍したヤンキースの強打者。その背番号5は、ベーブ・ルースの3、ルー・ゲーリックの4、ミッチー・マントルの7と共にヤンキースの永久欠番になっている。
 そのディマジオのファンだったのは、御存知、レイモンド・チャンドラー原作、ディック・リチャード監督『さらば愛しき女よ』(1975年)の私立探偵、ロバート・ミッチャム演じるフィリップ・マーロウ。
 原作にはないが、映画のなかでミッチャム=マーロウは、1941年5月15日から始まったディマジオの連続ヒットがいつまで続くか、それを気にしている。
 当時、ディマジオの連続ヒットは全米の関心事で、ディマジオがヒットを打つと野球中継以外のラジオ番組でも、それを報じたという。『さらば愛しき女よ』の最後で、ミッチャム=マーロウが語るように、ディマジオの連続ヒットは1941年、クリーブランド・インディアンズ戦のナイトゲーム、57試合目で終わった。
 ディマジオは、1951年に引退後、56年にモンローと結婚し、華やかな話題になったが、前述したようにわずか九ヶ月後に離婚した。
 ただ、ディマジオはモンローのことを愛し続けたようで、1962年にモンローが死去したあと、ロサンゼルスのモンローの墓に毎日、花を供え続けたという。

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