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×ジャパリ団、有観客と生配信で作り上げた熱気ある景色 初の単独ライブレポート

リアルサウンド

20/9/28(月) 16:00

 セガのアプリ&アーケードゲーム『けものフレンズ3』から生まれた×ジャパリ団(ばってんじゃぱりだん)が、初の単独ライブ『×ジャパリ団 LIVE ~ヘドバンの準備はできているか!?~』を9月22日に品川インターシティホールにて開催した。昨年の誕生以来、イベントなどを通じて楽曲パフォーマンスを披露してきた×ジャパリ団だが、今年7月8日に初のオリジナルアルバム『×・×・×』をリリースしたことを機に、『けものフレンズ』派生ユニットとしては異例の単独ライブを開催。しかし、アルバムとはいいながらも『×・×・×』の収録曲は5曲とあって、一体どんな内容でライブが進行するのか……ファンならずとも、その動向に注目が集まった。

 会場の品川インターシティホールには、昨今の情勢を反映して収容人数を50%に抑え、さらに会場に足を運ぶことができない団員(=×ジャパリ団ファンの総称)のために各配信サイトを通じての有料生配信も並行して行われた。品川インターシティホールのフロアには、開演前から真紅に染まったペンライトを掲げた団員の姿が多数見受けられ、彼らのこのライブへの期待感が伝わってきた。

 定刻になり、場内が暗転すると、ステージ後方のスクリーンにカウントダウンの数字が映し出される。続いて、〈WELCOME TO JAPARIPARK〉〈WE ARE BATTEN JAPARIDAN〉のメッセージにあわせて聞き覚えのあるシンセのリフが響き始めた……なんと、ライブのオープニングを飾るのはスウェーデンのハードロックバンドEuropeが80年代に大ヒットさせた代表曲「The Final Countdown」のカバー! Europeと×ジャパリ団は同じレーベル所属という事実を考えると、このつながりは不思議と納得してしまうものがある……なんて感じるのは、『けものフレンズ』ファンが大半を占める会場内では筆者だけかもしれない(苦笑)。

 原曲のイメージを忠実に再現したバックトラックに乗せて、×ジャパリ団の歌声が聴こえてくるのだが……その姿はステージ上に確認できない。しばらくすると、ステージ後方から歌いながら3人が登場(この理由については、ライブ後半で本人の口から明かされることになるので、ここでは触れないでおく)。未来みき(ブラックバック役)、小泉萌香(タスマニアデビル役)、船戸ゆり絵(オーストラリアデビル役)の3人は拳を振りながら煽り続け、歓声を挙げたり一緒に歌ったりなどできない状況ながらも団員はジャンプしたりペンライトを力強く振ったりして、その思いに応えていく。

 華々しいオープニングを飾ると、早くもこの日最初のMCへ。未来は「今日は(客席側は)声を出せないので、ボディランゲージで示してほしいの。お互い汗かいていこう!」と団員にアピールする。すると、小泉が「オレたち、5曲しかないよ?」と早くも筆者が気になっていたポイントを指摘。すると未来は「むしろ5曲もある!」と返し、船戸も「気持ちで乗り越えよう!」と続ける。さて、この先どう進行していくのか……まさに神のみぞ知るといったところだろうか。

 和やかなMCを終えると、ライブは「どきどき黙示録」から再開。3人の掛け声にあわせて団員がジャンプしたり、サビでは3人の振り付けを初見で団員が真似るなど、早くも息の合ったコンビネーションを見せる。続く「×レゾンデートル」では冒頭、フットスタンプで一体感を見せつけ、未来のパワフルな歌声やメタリックな楽曲、サウンドと相まって、場内の熱気もどんどん高まっていった。その真骨頂と言えるのが、MVも制作された「確固不×論」だろう。日本のヘヴィメタルバンドOUTRAGEが手がけたこの曲の、中盤の四字熟語をシンガロングするパートでは(団員のシンガロングこそないものの)この日最初のクライマックスを迎えた。

 客席からの声援は皆無ながらも、会場で体感するライブの熱気はコロナ禍以前となんら変わらない。もちろん、MCでのユルさも相変わらずだ。3人の微笑ましいやりとりに、客席から思わず笑い声が溢れるのは仕方ないだろう。ライブ中盤ではグッズ紹介コーナーが用意されたが、なんとそのグッズをステージに運ぶのが同じ『けものフレンズ3』から生まれたユニット・はなまるアニマルの3人。このうれしいサプライズに、団員が手にしていたペンライトの色が赤からはなまるアニマルのメンバーカラーへと変わり、×ジャパリ団の3人が団員にツッコミを入れる一幕もあった。

 ライブ中盤では×ジャパリ団、はなまるアニマルの6人で勝負企画をすることに。伝言ゲーム、4曲同時当てゲーム(異なる4曲を同時に流し、各曲名を当てるもの)の2勝負が実施されたが、なぜか主役の×ジャパリ団が負ける結果に。罰ゲームとして「今だから言える謝りたいこと」を告白することになるのだが、船戸が「可愛くてごめんなさい!」、小泉が「何にでもマヨネーズをかかけすぎてごめんなさい!」と微笑ましい謝罪をする中、未来は「今日のライブ、(オープニングで)出遅れてごめんなさい!」と1曲目「The Final Countdown」で出遅れた理由を暴露。どこまでもワルになりきれない、×ジャパリ団らしいエピソードだった。

 その後、はなまるアニマルが「はなまるアドベンチャー」「いつだってはなまる」の2曲を披露して場をさらに和ませると、ここからライブ後半戦に突入。×ジャパリ団の原点でもある「ジャパリ狂詩曲〜×ジャパリ団のテーマ〜」で場内の熱気を再びヒートアップしたかと思うと、続く「絆ふぉーえばー」ではシャボン玉が宙を舞う中、3人が気持ちのこもった歌声を会場中、そして配信ライブを観ている視聴者のもとまで響かせた。さらに、この日のために用意されたガイコツマイクを使って、『けものフレンズ』にはおなじみの1曲「ようこそジャパリパークへ」のメタルアレンジバージョンを初披露。ヘヴィなギターサウンドと低音の効いたアレンジが施されたこの曲を前に、団員たちも全力のジャンプで喜びを表現した。

 このあと、小泉がペンライトを使った振り付けレクチャーを経て、この日2回目の「どきどき黙示録」へ。1回目よりも息の合った振り付けを楽しむことができ、ラストには紙吹雪が舞う演出でメンバー、団員の一体感に華を添えた。そして本編ラストは、やはりこの日2回目の「確固不×論」。ステージ上の至るところからCO2が吹き上げる中、メンバーのみならず団員までもが激しいヘドバンを繰り広げ、この日一番の盛り上がりでライブは幕を下ろした。

 アンコールでは、『けものフレンズ3』に関する最新情報が告げられ、11月25日発売のキャラクターソングアルバム『MIRACLE DIALIES』にこの日のライブで初披露された×ジャパリ団の「ようこそジャパリパークへ メタルver.」も収録することもアナウンス。団員たちがこの情報に喜ぶ中、×ジャパリ団の3人が最後の曲の準備に入ろうとすると、スクリーンには予定外の映像が流れ始める。ライブのオープニングと似た流れに動揺を隠せないメンバーをよそに、映像では2021年4月25日に×ジャパリ団の単独ライブ開催をアナウンス。メンバーにも知らされていなかったサプライズに、団員からは祝福の拍手が送られた。

 未来へとつながる次のステップを前に、この日のライブを振り返る3人。船戸が「私、(夕べは)眠れなかったんだよね。楽しみなんだけど、不安もあって。一生懸命練習したのが伝わらなかったらどうしようって。でも、みんなの(ペンライトで作る)×を見て安心しました」と本音を吐露すると、小泉も「私たちがずっと観たかった景色を観られたのも、皆さんのおかげ。次も決まっているので、ここで足を止めることができません。このまま3人で成長していきたい!」と続け、涙混じりの未来が「声が出せないライブは初めてで、みんなも不安だったと思うんです。でも、ジャンプしたり×したり、みんな楽しんでくれていることを肌で感じた1日でした」と団員に感謝の気持ちを伝えた。そして、「また再会する日まで」の一言とともに「ジャパリ狂詩曲〜×ジャパリ団のテーマ〜」にて2時間以上にわたる初の単独ライブを締めくくった。

 彼女たちらしいカバー曲や盟友たちのゲスト参加、メタリックな楽曲と真逆のユルユルなトーク&ゲームなど、首尾一貫して×ジャパリ団らしい内容だった初の単独ライブを終え、3人は7カ月後に控えた次の単独ライブに向けて再び歩み始める。その時にはどんなエンタメ色の強いステージを提供してくれるのか、そして一緒にシンガロングすることができるのか。正直なところ、今は不安も抱えているが、いつかこの不安が完全に払拭され、お互い完全な状態で“かの地で相まみえ”たいところだ。

■西廣智一(にしびろともかず)Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

■セットリスト
01. The Final Countdown(Europeカバー)
02. どきどき黙示録
03. ×レゾンデートル
04. 確固不×論
05. はなまるアドベンチャー(はなまるアニマル)
06. いつだってはなまる(はなまるアニマル)
07. ジャパリ狂詩曲〜×ジャパリ団のテーマ〜
08. 絆ふぉーえばー
09. ようこそジャパリパークへ メタルver.
10. どきどき黙示録
11. 確固不×論
<アンコール>
12. ジャパリ狂詩曲〜×ジャパリ団のテーマ〜

×ジャパリ団 オフィシャルサイト

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