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名古屋の歴史・文化遺産をリアルタイムに再生する「ストリーミング・ヘリテージ」 今年3月に続いて2度目の開催

ぴあ

観音に見立てたpepperと、作者でメディアアーティストの市原えつこ

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名古屋の歴史や文化遺産に着目し、堀川沿いで繰り広げられるイベント「ストリーミング・ヘリテージ|台地と海のあいだ」が11月12〜28日の金・土・日曜、祝日に開催されている。野外も舞台となる都市型のアートイベントで、今年3月に続いて2度目の開催となる。

名古屋中心部を南北に流れる堀川は、名古屋築城に合わせて開削された人工の河川だ。この川の周辺には、古くから残る歴史的な住宅や、観光スポットなどが非常に多く残っている。本イベントはこれらに着目し、美術作品の展示や、シンポジウム、トークイベントなど多様なプログラムを開催するものだ。

会場のひとつ、熱田・宮の渡しエリアの「丹羽家住宅」

かつて海運の拠点として栄えていた熱田・宮の渡しエリアの「丹羽家住宅」に展示されているのは、堀尾寛太《自動ドア》だ。

堀尾寛太《自動ドア》

鑑賞者は滑車に吊るされたつり革を引きながら歩くことで、その後、さまざまな装置が動き出す様を見ることができる。

堀尾寛太《自動ドア》

本作品は、江戸時代に建てられた家屋から、器具を設置できるわずかなスペースを探し出し、工夫の上に作り出されたもの。わずかな人の力が、予想だにしなかった動きを作り出す様は、年齢を問わず楽しめるはずだ。

また、丹羽家住宅の目の前に広がる「宮の渡し公園」では、篠田千明がパフォーマンス『黄昏』を披露。かつて滞在した台湾での体験を語り、そして当地でゲリラ的に開催した野外カラオケ記録映像に合わせて、篠田が歌う。

篠田千明のパフォーマンス《黄昏》
篠田千明のパフォーマンス《黄昏》 日が沈むとライトアップされた

映像のなかの篠田、そして現在の篠田が歌い合うテレサ・テン『時の流れに身をまかせ』と夕暮れが相まって、非常に神秘的な空間が作り出されていた。このパフォーマンスの模様は録画され、11月19日以降、丹羽家住宅で公開される予定だ。

中山晃子《泡沫の形》

納屋橋は、堀川が開鑿された時に架けられ、以来周囲は人通りが絶えることがない。この納屋橋エリアでは中山晃子が《泡沫の形》をビルの壁に投影する。本作品は、中山のライブパフォーマンスの記録のなかから、絵の中で生まれた泡が、なにかに見えるようになった瞬間を選び取り、編集したもの。ときには目玉や生物のように見える、泡が生まれ続けている川のそばゆえ、よりいっそう強い意味を持つ作品だ。

名古屋城エリアの会場となる伊藤家住宅は、愛知県指定文化財の住宅。かつての家主は尾張藩の御用商人を務めており、非常に豪奢な建物となっている。

Softpad《unicode》

この建物内には市原えつこ、softpadがそれぞれ複数の作品を展示し、その荘厳な建物と作品がなんとも言えない調和を作り出している。

京都を中心に活動するアート/デザインユニットのsoftpadは紙や音を使用したインスタレーションを複数発表。《unicode》はこの住宅で聞こえるであろう音をコップ内で増幅させ、聴かせる作品だ。

市原えつこ《デジタルシャーマン・プロジェクトー現代の観音プロトタイプ》

市原えつこの《デジタルシャーマン・プロジェクトー現代の観音プロトタイプ》は、故人の顔を3Dプリントした仮面をつけたロボット上に、故人が死後49日間のみ出現するというプログラム。故人が憑依したロボットとしばらくの間触れ合うという新しい弔いの仕方を提案する作品。ロボットPepperが、死後から経過した日数に応じて、さまざまな言葉や動きを繰り出し、残された人々の悲しみを昇華させていく。

伊藤家住宅の展示風景
市原えつこ《都市のナマハゲ》

同じく、市原えつこ《都市のナマハゲ》は、ドローンやVRゴーグルなど、秋葉原で手に入るものを組み合わせた現代版ナマハゲ。現代のもので作られていながら、床の間に佇むと、昔からそこにあるかのようにも見える。

本イベントは展示のほかにトークセッションやパフォーマンスも11月19日から27日にかけて開催される。名古屋に流れる歴史に美術を通して触れ、楽しむことができる貴重な機会。
古い歴史を振り返りつつ、最先端の美術作品も楽しんでみよう。

構成・文:浦島茂世

【開催情報】
「ストリーミング・ヘリテージ|台地と海のあいだ」
11月12〜28日の金〜日曜日・祝日、名古屋城エリア(能楽堂・四間道)、納屋橋エリア、宮の渡しエリアにて開催
https://streamingheritage.jp/index.html

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