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ジャスティン・ビーバーと信仰の関係性(2) 最愛のパートナー、ヘイリー・ビーバーとの出会い

リアルサウンド

20/12/15(火) 12:00

ジャスティン・ビーバーと信仰の関係性(1) 福音を授かり、新たな時代迎えたポップスター より続く)

「Holy」で歌われる生まれ変わる瞬間、そして妻・ヘイリーへの高ぶる想い

 そのようなヒルソング教会のサポートを受け、信仰を取り戻し、生まれ変わって新たな人生を迎えた自分自身の姿、そして最愛のパートナーであるヘイリー・ビーバーへの愛情を表現したのが、彼の「新たな時代」を告げる「Holy」である。

 冒頭のヴァースでは、罪を重ねた自分自身の姿と、洗礼によって生まれ変わろうとする姿が描かれる。

「罪を抱えた人たちの話を沢山聞いている。自分が聖人になれるだなんて思っていないよ。でも僕は川へ下りても良いのかもしれない。だって、僕たちが触れれば天が開けて、そう、こう言いたくなるんだ。(〈I hear a lot about sinners. Don’t think that I’ll be a saint. But I might go down to the river. ‘Cause the way that the sky opens up when we touch. Yeah, it’s making me say.〉)」

 ここで言う「川へ下りる」とは、キリスト教における洗礼の儀式を意味しており、川の中で”罪を告白し、罪を抱えた自分が死に、新たな命へと生まれ変わる”というプロセスを指している(参照)。また、「僕たちが触れれば天が開けて」という部分についても、新約聖書中の一書である「ルカによる福音書」3章21節及び3章22節における洗礼と関わる内容からの引用を確認することが出来る。(ちなみに最近ではレディー・ガガとアリアナ・グランデの「Rain On Me」などでも近い現が見受けられる)

 洗礼を経て生まれ変わったジャスティンは、ヘイリーと出会ったことの喜び、そして大きく高ぶっていく感情をコーラスで強く歌い上げる。彼は、ヘイリーに抱きしめられた時の感情をタイトルにもある”Holy=神聖”と表現する。彼にとって、ヘイリーこそが神からの贈り物である、そのような想いを見て取ることが出来る。

「君にそうやって抱きしめてもらえると、すごく神聖な気持ちになるんだ。陸上競技のスター選手のように、祭壇へと走っている。もうこれ以上待つことなんて出来ないんだ。(〈That the way you hold me, hold me, hold me, hold me, hold me, feels so holy, holy, holy, holy, holy on God. Runnin’ to the altar like a track star. Can’t wait another second.〉」

 ここでいう「祭壇」は結婚式の場所である教会の祭壇を指している。ヘイリーと過ごす日々の中で、強烈な結婚願望を抱き、全速力でチャペルへと向かっていくジャスティンの姿を想像すると非常に微笑ましい。そして、これは二人の恋愛関係において実際に起きた出来事でもある。

超スピード婚を実現したジャスティンとヘイリーの恋愛の在り方

 ジャスティンとヘイリーは、2018年に交際をスタートし、僅か約1カ月で婚約、その2カ月後には結婚という、非常に早いスピードで関係を深めていった。まさに「Holy」の歌詞の通り、全速力でチャペルへと向かっていたのである。しかし、元々、ジャスティンは「Lonely」で「全てを手にしても、頼れる人が一人もいない(〈What if you had it all, but nobody to call.〉)」と歌っている通り、幼くして業界に入り、悪い経験を多く重ねてしまったことで、人を信頼することに困難を抱え、自分に対する自信も揺らいでいる。それは、ヘイリーを信頼することすらも難しいと語るほどだ。そんな彼が何故このスピードで関係を深めることが出来たのだろうか。その背景には、やはりヒルソング教会、そして信仰心が大きく影響している。

 二人の出会いは、なんとジャスティンがまだ15歳だった2009年に遡る。前述のエピソードでも登場した彼の母親パティ・マレットと、ヘイリーの父親スティーブンが共に福音派のクリスチャンであり、両者が親交を深めていたこと、そして、2009年に米国のテレビ番組の舞台裏にて、ヘイリーの父親であるスティーブン・ボールドウィンがヘイリーをジャスティンに紹介したことが二人の出会いのきっかけである。その後、実際に親交を深めたのは、数年後に二人がヒルソング教会の礼拝に出席するようになってからのことだ。偶然同じ教会で再開した二人は、親友としてその仲を深めていく。

 2015年頃、二人はデートするようになるが、何か決定的な出来事があったらしく、別れ、しばらくの間連絡を断つことになる。だが、2018年、ヒルソング教会と同様にペンテコステ派のメガチャーチである「Vous教会」で行われたリッチ・ウィルカーソン・ジュニア牧師の集会で、二人は偶然再会する。

 この時まで、実はジャスティンは禁欲生活を続けていた。その背景には、ジャスティンのセックスに対する信仰に基づいた考えがある。彼は自身の過去の悪癖に基づき、「自尊心が低くなっているが故に、自分の価値や魅力を確認するためにセックスをする人もいる。結果としてセックスはさまざまな痛みをもたらしてしまう」という考えがあった。結果として、「神様は自分を痛みや苦しみから守ってくれる。だから、セックスをしない方が神を身近に感じられる、自分の魂の状態を良くすることが出来る」と考え、それを実践していたのである。

 彼が結婚を決意したのは、2018年の再会を通して、いかにヘイリーが重要で、自分の人生にポジティブな影響を与えてくれる存在であるかを理解したことが理由である。また、同時に「この人となら愛し合いたい」という感情が遂に芽生えたことも併せて語っている。その結果、信仰に基づいて婚前交渉を禁じていたジャスティンは、猛スピードで結婚へと向かっていったのだ。彼は禁欲生活について「神様がヘイリーの存在を通して、僕を祝福してくださったと思っている。良い行いは報いられるんだ」と振り返っている(参照)。

 「Holy」にはジャスティンとヘイリーが愛し合う場面を描いた次のようなフレーズがある。ここで彼はその時の感情を何故か仏教の「涅槃」に例えている。

「僕は涅槃を信じていない。だけど、僕たちが夜に愛し合うことは、僕に生きている実感を与えてくれる。ベイビー、説明することは出来ない。(〈I don’t believe in nirvana. But the way that we love in the night gave me life. Baby, I can’t explain.〉」

 現世における人生は一度きりのものであり、死後は天国か地獄へと送られるという前提のキリスト教に対し、「輪廻」を前提とする仏教では「輪廻」から脱して、真に穏やかで平和な、悟りを抱いた状態である「涅槃」へと辿り着くのが理想となる。ここで、ジャスティンはヘイリーと愛し合う瞬間を「穏やかで平和な状態」と位置付け、涅槃に近いものであると表現しているのだ。ようやく二人で愛し合うことが出来るようになった喜びを表現した、非常にロマンティックなフレーズと言えるだろう(とはいえ、ここまでハッキリ信じていないと言われると、モヤモヤする人も少なくはないかもしれないが……)。

 一方で、結婚直後のヘイリーは、「ジャスティン・ビーバーとの結婚」が与える世間のインパクトと、自身への評価について強い不安を抱えていた。そして、彼女もまた、「私は決断について安心を感じられるように祈った、それが私の着地点だった。私は彼をとても愛しているし、とても長い間愛してきたんだ」と、相手への愛情、そして信仰に救いを求めていたと語っている。二人は今では非常に良好な関係性を築いており、著名なセレブリティ夫妻の仲間入りを果たした。そして、今でも積極的に礼拝に通い、牧師の話に熱心に耳を傾けている。

ジャスティン・ビーバーと信仰の関係性(3)に続く(12月16日掲載予定)

■ノイ村
海外のポップ/ダンスミュージックを中心に愛聴。普段は一般企業に勤めているが、SNSやブログにおけるシーン全体を俯瞰する視点などが評価され、2019年よりライターとしての活動を開始。
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