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平辻哲也 発信する!映画館 ~シネコン・SNSの時代に~

復活シネクイントが仕掛ける2周年企画―「ミニシアターブームよ、もう一度」

隔週連載

第43回

20/8/16(日)

渋谷シネパレス跡地に復活オープンした「シネクイント」が7月6日、2周年を迎え、「シネクイント2周年記念特集上映」(9月24日まで、特別鑑賞料金1200円均一)を開催中だ。注目は、渋谷のミニシアター・ブームをけん引した珠玉の全32作品。その中でも人気を集めているものは?

シネクイントは1981年に渋谷PARCOパート3内にオープンした多目的ホール「スペースパート3」が前身。1999年7月にパルコが経営する常設映画館として誕生し、オープニング作品『バッファロー’66』(ヴィンセント・ギャロ監督、主演)は34週に及ぶロングランとなった。「世界中の喜怒哀楽(エンタテインメント)をお届けします」をコンセプトに、邦洋のエッジの効いた作品を上映してきたが、2016年8月、渋谷PARCOの建て替えに伴い、一時休館した。

162席と115席の2スクリーンからなる2代目シネクイントは渋谷駅ハチ公口から徒歩約5分、渋谷ロフト横の渋谷シネパレス(2018年5月27日閉館)の跡地。2018年7月6日に『最強のふたり』の監督コンビによる仏コメディー『セラヴィ!』とエマ・ストーン&スティーブ・カレル共演のテニス映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』のこけら落としで復活。スクリーン1の2階席には渋谷で唯一のペアシートがあり、カップルに人気。コロナ禍の今はソーシャル・ディスタンスを取っており、かなりゆったりと観ることができるので、一人客にもオススメだ。

スクリーン1
2階席のペアシート

復活2周年記念上映は「ミニシアターブームよ、もう一度」と題して、『トレインスポッティング』(96年)、『アメリ』(01年)、『アフタースクール』(08年)、『ジョゼと虎と魚たち』(03年)など90〜00年の渋谷のミニシアター・ブームをけん引した傑作を集めた。「もともと周年記念をやろうという話があったのですが、そんな中、コロナ禍となってしまいました。本当に良かった時代、一番盛り上がっていた時の作品群を集め、当時のお客様やスクリーンでは見たことがない若い人を呼び戻せたら、と考えたんです」。

編成担当の松岡宏起さん

こう話すのは、株式会社パルコ エンタテインメント事業部で番組編成を担当する松岡宏起さん。大学在学中から映画学校「ニューシネマワークショップ」とのダブルスクールで映画業界を目指した。以降、映画館での運営、番組編成を経て2019年10月パルコに入社し、今年3月から編成を任されている。

特集上映は7月31日から始まっているが、特に反響が大きいのは、ミニシアターブーム特集とウォン・カーウァイ監督特集。ウォン監督による初期の傑作『恋する惑星』(94年)は週末、満席(コロナ対策のため、通常の半分の81席が定員)になる回も出ている。「2年前、ル・シネマさんで『欲望の翼』のデジタルリマスター版公開を記念した特集上映があったので、動員は厳しいかとは思ったんですけど、若い方も多く、予想以上に根強い人気がありますね」と松岡さん。期間中はほかに『ブエノスアイレス』(1997年)、『天使の涙』(95年)、『花様年華』(00年)、『欲望の翼 デジタル・リマスター版』(90年)を上映する。

また、シネクイント初のオリジナルグッズも2周年を記念して、物販カウンター、パルコオンラインストアで限定販売。デザインはアーティストnorahiさんによるもので、劇場の外観やシネクイントの過去上映作品をイメージしたTシャツ、トートバッグ、ステッカーなどの全10種のグッズが用意されている。

2周年記念グッズ

復活リニューアル時には在籍していなかった松岡さんだが、これまでの復活シネクイントはどう見ているのか。「初代のシネクイントだったら、『バッファロー’66』のような映画館イコール作品というものがありました。『カメラを止めるな!』も公開の早い段階から上映したり、『ウィーアーリトルゾンビーズ』のようにロングランとなって、毎日のようにイベントを開催したものもありますが、まだ劇場のカラーを構築するまでの作品は出てきていない」と振り返る。

復活シネクイントの“らしさ”を見せられそうなのが「2周年特集上映」で展開する新進気鋭の映画スタジオA24 の14 作品を集めた「A24セレクション」(8月14日〜)だろう。シネクイントでは『mid90s ミッドナインティーズ』(9月4日)、姉妹館のホワイトシネクイントでは『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』(10月9日)の公開を控えていることから、シネクイントのヒット作『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』(17年)を始め、米アカデミー受賞作の『エクス・マキナ』(16年)や『ムーンライト』(17年)などをラインナップした。

初代シネクイントからの上映作品チラシ(縮小版)を集めたコーナー

今後について、松岡さんは「特集上映は不定期で取り組んでいきたいと思います。コロナ禍で、映画館だけではなく、渋谷自体にも人が減っている状況で、新作の上映もなかなか見通せないところはありますが、社会的なテーマを持っている作品、トピックになるような作品を生み出していくことが必要。一番大事なのは、『シネクイントと言えば、これ!』といった新しい代名詞になる作品を生み出すことだと思っています」と語る。目指すはミニシアター・ブーム復活だ。

映画館データ

シネクイント CINE QUINTO

住所:東京都渋谷区宇田川町20-11 渋谷三葉ビル7階
電話:03-3477-5905
公式サイト:シネクイント CINE QUINTO

プロフィール

平辻哲也(ひらつじ・てつや)

1968年、東京生まれ、千葉育ち。映画ジャーナリスト。法政大学卒業後、報知新聞社に入社。映画記者として活躍、10年以上芸能デスクをつとめ、2015年に退社。以降はフリーで活動。趣味はサッカー観戦と自転車。

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