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BTS(防弾少年団)ツアードキュメンタリー映画が映し出した、グループにおけるステージの重要性

リアルサウンド

18/11/26(月) 8:00

 BTS(防弾少年団)のツアードキュメンタリー『Burn The Stage:the Movie』が11月15日から3週間限定で全国公開されている。

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 『Burn The Stage:the Movie』は2017年2月ソウルからスタートし、南米~北米~東南アジア~日本ツアー・台北・マカオ・大阪 京セラドームを経て12月のソウルでのアンコールコンサートまで10カ月に渡って行われた『2017 BTS LIVE TRILOGY EPISODE III THE WINGS TOUR』に密着したドキュメンタリーだ。YouTubeプレミアムにて全8回が有料公開されているシリーズだが、映画版はそれを2時間に再編集し直している。同じツアーでの密着ドキュメンタリーであることは変わりないが、使われているカットも含めてほぼ別物として見ることが出来る仕上がりになっている。

 YouTubeバージョンはツアー時系列順のそのままのドキュメンタリーになっており、初回のソウルでの緊張感、南米でのジョングクの体調不良、北米でのジンとVの衝突、マカオでのジミンのアクシデントなど、ツアー中に起こった各種の問題についてもありのままの内情をより詳しく描写していた。さらに各メンバーへの個別インタビューを各地で収録して挟むなど、映像部分以外の演出はあまりない“ドキュメンタリー”番組という構成になっていた。

 一方の『the Movie』はほぼ全編に渡り、ポエティックなナレーションと共に進行していく。この内容はYouTube版におけるメンバーインタビューの内容を反映していると同時に、今までBTSが『花様年華』シリーズ以降ライブツアーのVTRなどで演出してきた“BTSというグループ”のイメージとも通じるところがあるようだった。自らの人気の拡大と共に求められるままに世界各地を興行して回る姿を、水を求めて砂漠を旅するキャラバンや陸を求めて海を彷徨う船、あるいは終わりなく回遊し続ける魚に例え、栄華と孤独の中で7人のメンバーが個人として苦しみながらも、7人でいることの喜びを語るナレーションは、『WINGS』のコンサートツアーで繰り返し強調されてきた“一つの心臓を分け合う7人の少年たち”というコンセプトとリアルの彼らを結びつけるような役割を果たしている。

 YouTubeバージョンが“ドキュメンタリー番組”そのものだとするならば、映画版は事務所のコンセプトというフィルターを通したクリエイションとしての“BTS像”と“リアルな彼らの姿”が混ざり合った、ある意味での“もう一つのBTSとしての創作物”であるとも言えるかもしれない。つまりはYouTubeバージョンと映画バージョンを合わせて観ることによって“大衆向けの姿”と“ファン向けの姿”の両方の視点で同じツアーを振り返ることが出来るのだろう。映画版の終盤で入るシュガの過去を振り返るかのようなナレーションなどは、YouTubeバージョンの冒頭でシュガ本人が言っていた「数十年後にこれを見たら泣くと思う」という言葉を反映させた演出ではないだろうか。

 ツアーの最中には、『2017 ビルボード・ミュージック・アワード(BBMA)』のトップ・ソーシャル・アーティスト賞の授賞式なども挟まれる。そこでの彼ら自身の反応も戸惑いからの喜び、一瞬高慢になりながらもすぐに地に足をつける、という人間らしい姿は垣間見えるが、ドキュメンタリーの主役はあくまでコンサートツアーだ。メンバー側の視点から撮っているものがメインであるので、外部からの視点のドキュメンタリーでは強調されがちな世界的な人気や、アメリカでの人気・受賞に偏らず、彼らにとってはコンサートやステージが最も重要であり、どの国のどのステージも全て特別だ、ということが印象に残る。海外でのステージの際にメンバーが繰り返していた「次いつ会えるかわからないから」というセリフが象徴的だった。

 このドキュメンタリーの一つの山場が『BBMA』の受賞であることは間違いないが、もう一つの山場は日本ツアーと京セラドーム公演でもあるだろう。海外公演の合間の休息でもメンバーが特に日本語を勉強している(あるいは勉強しようとしている)様子は垣間見えるが、日本ツアー初日でメンバーとスタッフが語っていた、「これはコンサートだから真剣にやるべき。同じことを何回も日本で言ってると思う」「日本ツアーの前までは観客の注意を惹くために、よく笑ってじゃれている姿を見せることがいいというスタンスだったけど、(パフォーマンス自体をよりきちんと鑑賞してくれる観客が多い)日本では変えるべきだ」という言葉に集約されているだろう。日本での公演キャリアが長いグループらしく、その国ならではの観客特有のニーズについて真剣に考え、その都度パフォーマンスの傾向を変える、“公演ごとに全力投球”という彼らのやり方がもっともよく現れたパートのひとつだと言えよう。

 時にアクシデントや疲労、衝突、個々の考え方の違いなどに遭遇しながらも、その芯はブレずに全員が共有していることがよく伝わってくるドキュメンタリーである。そしてそれがファンにも伝わっているからこそ、彼らは国境や人種を超えて愛される理想郷のような存在になっているのではないだろうか。YouTubeバージョンの終盤ではメンバー達それぞれのこれからの目標が語られ、映画版ではプロデューサーのパン・シヒョク氏が「これからは皆それぞれ自分の幸せも見つけて欲しい」と語る。グループが自分たちの予想を超えた人気を得て周囲の環境が急速に変わっていく中でも、“これからも7人で一緒に、出来るだけ長く音楽をやっていきたい”という気持ちがひとつであることは間違いないようだ。(DJ泡沫)

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