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Tinashe、Free Nationals、Kaytranada……早くも2020年R&Bシーンの鍵となりそうな話題作5作をピックアップ

リアルサウンド

20/1/13(月) 19:00

・Tinashe『Songs for You』
・Free Nationals『Free Nationals』
・Kaytranada『BUBBA』
・Usher feat. Ella Mai 「Don’t Waste My Time」
・The Weeknd「Blinding Lights」「Heartless」

 R&Bの世界は、ヒップホップはもちろん、周りを取り巻く音楽ジャンルと呼応しながら進化し続ける一方で、周期的に過去のサウンドのリバイバルもトレンド化する傾向にある。今月末に開催される『第62回グラミー賞』ではリゾが最多8部門にノミネート、H.E.R.が昨年に引き続き最優秀アルバム賞に名を連ねるなど、R&Bアーティストのクロスオーバーな活躍も目立っている。2020年は果たしてR&Bにとってどんな年になるだろうか。そのヒントが隠されていそうな最近の話題作をまとめてピックアップする。

自身のレーベルより再出発!歌姫ティナーシェの大変身作
Tinashe『Songs for You』

Tinashe『Songs for You』

 全米シングルチャート“Billboard Hot 100”で21週にわたりロングランヒットした「2 On」で華々しいソロデビューを飾った歌姫ティナーシェ。しかし、その勢いのままリリースされる予定だった次作『Joyride』は度重なる延期を繰り返し、結果3年越しの発売に。力作だったがプロモーション不足でセールスは思うように振るわず、ファンの間では所属レーベル<RCA>への不満が募っていた。そんな彼女がレーベルを離脱し、自身が立ち上げた<Tinashe Music>より1年半ぶりの新作『Songs For You』を完成させた。

 「長年同じチームでやってきたけど、リスクを冒してでも軌道を変える必要があったの」と本人が明かしたように、少しアイドルチックな面もあった以前のお嬢様イメージから、妖艶な大人の女性へと変身。サウスロンドン出身の女性ラッパー、ミス・バンクスを客演に迎えた先行シングル「Die a Little Bit(feat.Ms Banks)」ではFKAツイッグスを思わせる官能的な一面を見せ、G・イージーとの緊張感ある共演「So Much Better」もお見事。方向転換の結果は大成功である。アルバムにはヒットメイカやOZらといった売れっ子プロデューサーが名を連ね、来日時に撮影されたと思われるビジュアルを用いた「Save Room for Us (Tokyo Visual)」や「Die A Little Bit」などのMV群からは自身のクリエイティビティを解放させたティナーシェの音楽に対する姿勢がしっかりとうかがえる。(そして全作品ダンスが素晴らしい!)また、アルバム発表直前には<Roc Nation>とのマネージメント契約を発表。第2章を歩み始めた彼女の今後がますます楽しみだ。

Tinashe – Die A Little Bit ft. Ms Banks
Tinashe — SAVE ROOM FOR US (Tokyo Visual)

アンダーソン・パークが絶大な信頼を寄せるバンドの初リーダー作!
Free Nationals 『Free Nationals』

Free Nationals 『S/T』

 アンダーソン・パークのライブバンドとしても知られるFree Nationalsが、単独名義でのフルアルバムを発表。ホセ・リオス(Gt)、ロン・アヴァント(Key/talkbox)、ケルシー・ゴンザレス(Ba)、カラム・コナー(Dr)の4人は、パークとLAの音楽学校時代(まだ彼がBreezy LoveJoyとしてラッパー活動していた頃)からの仲間であり、先コロンブス期の歴史文化から名付けられたバンド名は、パークの後見人でもあるSa-Ra Creative Partnersのシャフィークによる教えから得たものだという。「生まれながらのファンク」と自称するサウンドの通り、ダニエル・シーザーがリードを取ったスウィートソウルな「Beauty & Essex」や、故マック・ミラーとカリ・ウチスを迎えた「Time」など、どれだけメロウな楽曲でもリズム隊の骨太さは損なわれない。

 メンバーが「すべてジャムセッションから生まれたレコードなんだ。その自然さこそが、アルバムにエナジーを与えていると思う」と語る通り、ロンのトークボックスが冴えるアンダーソン・パークとのブギーな1曲「Gidget」や、唯一のインストとなるAOR調の「Lester Diamond」など、ひたすらに耳馴染みの良い楽曲が並んでいる。ほかにもゲスト陣はレゲエ界からクロニクス、ニュージランド出身のサイケポップバンド、Unknown Mortal Orchestraまで幅広く参加しているが、それによってバンドとしての音楽性がより浮き彫りになった快心作だ。

Free Nationals – Beauty & Essex (feat. Daniel Caesar & Unknown Mortal Orchestra) (Official Video)

人気R&Bアクトが大集結したケイトラナダ渾身のダンス・アルバム!
Kaytranada『BUBBA』

Kaytranada『BUBBA』

 多方面から高評価を受けたデビュー作『99.9%』のリリース後、『Coachella Valley Music and Arts Festival』や『FUJI ROCK FESTIVAL』などのビッグフェスに出演しながらも、コンスタントに楽曲も発表してきたケイトラナダ。<RCA>からのリリースとなった3年半ぶりのフルアルバムは、幅広い音楽性を提示した前作に対し、彼の主戦場でもあるダンスフロアーに直結したトラック尽くしの17曲50分となった。とはいえ、いわゆるクラブバンガー的な爆発力は控えめで、冒頭の「Do It」から心地の良いミドルテンポの四つ打ちグルーヴが、彼のDJプレイのごとく絶え間なく続く。

 R&B的な側面での注目は、もちろん華を添えるゲストボーカルたち。マセーゴ、ティナーシェ、カリ・ウチス、Vanjess、サー、エステル、ドゥランド・バーナーなど、名前だけでも卒倒モノだ。また、数あるケイトラナダのリミックスワークの中でも随一の人気を誇る「Be Your Girl (KAYTRANADA Edition)」のオリジナルシンガー、ティードラ ・モーゼスは本作中一番のヘビー級トラック「Culture」にて待望の客演を果たしている。ゴールドリンクらが軽快に乗っかるアフロ調の「Vex Oh」や、直接セッションを行ったというファレルとの「Midsection」など、アクセントの効いた楽曲も抜群。踊れてリラックスできる至福のクラブタイム盤だ。なお、今回のアルバムに収まりきらなかった多くの未発表曲が、数カ月以内に発表される予定もあるらしい。おそるべし創作意欲のスーパープロデューサー、弱冠27歳であるというから驚きだ。

Kaytranada – Scared To Death (Music Video)
PUFF LAH

皆が求めていた「アノ時」のアッシャー再び。今シーズン屈指の大注目曲
Usher feat. Ella Mai「Don’t Waste My Time」

Usher feat. Ella Mai「Don’t Waste My Time」

 自身のヒット曲をサマー・ウォーカーと共にリメイクした「Come Thru」も話題のアッシャーが、今度はエラ・メイを迎えた新曲を発表。Hi-Fiveのクラシック「I Like The Way (Kissing Game)」を想起させるTR-808を用いたトラックは、R&Bファンなら誰しもが心躍らせるのではないだろうか。プロデュースはアッシャーの代名詞的楽曲のひとつである「Burn」を手がけた名コンビ、ジャーメイン・デュプリ&ブライアン・マイケル・コックス(ブライアンはエラ・メイのアルバムにも参加)とあって、多くのリスナーが待ち望んでいた『Confessions』期のアッシャーを彷彿させる出来映えに仕上がっている。2000年代初期の楽曲をサンプリングする手法がトレンドな今、まさにその時代のトップを駆け抜けた真打ちが登場。その説得力たるや流石である。昨年から制作が進んでいる新作『Confessions 2』(同名曲も存在するのでややこしい)がリリースされれば、現行R&Bの金字塔的作品になること請け合いだろう。

Usher – Don’t Waste My Time ft. Ella Mai

異なる2つのサウンドで攻める最新曲!
The Weeknd 「Blinding Lights」「Heartless」

The Weeknd 「Blinding Lights」

 上記のアッシャーの楽曲が、オールドスクールマナーに沿った2000年代初頭の空気感へのオマージュだとすれば、よりド直球な80’sサウンドへと向き合ったのがザ・ウィークエンドの新曲「Blinding Lights」だ。一聴したときはa-haの新曲かと疑ったが(同じことを思った人がいたようで、すでに「Take On Me」とのマッシュアップ動画もYouTube上にアップされていた)、それでもきっちり現代のムードがあるのが彼らしい。追って発表された「Heartless」は一転、メトロ・ブーミンがプロデュースを手がけたスリリングなヒップホップトラック。曲中では名声とお金で心を失った主人公が愛に再び触れるまでを描いており、復縁したベラ・ハディットのことを歌っているのでは? とも噂されているが、真相はいかに。ゴシップにも事欠かさないウィークエンドだが、同曲は迫真の演技が光るMVも話題となり、自身4曲目となる全米チャート1位をきっちり獲得。活動初期から、数年先のトレンドを示唆するようなサウンドを提示してきた彼が、きたる新作で何を提示してくれるのか。今後のR&B界にとっても実に興味深いところだ。

The Weeknd – Blinding Lights (Live on The Late Show with Stephen Colbert / 2019)
The Weeknd – Heartless (Official Video)

 

RealSound_ReleaseCuration@Yacheemi

◾️Yacheemi
読み方はヤチーミ。ダンサーとして国内~ジャマイカでバトル・コンテストでの入賞を経験し、ひょんなことからヒップホップ・グループ「餓鬼レンジャー」の正式メンバー兼マスコット「タコ神様」(要検索)として加入した異例のフリースタイラー。ナイトクラブを主戦場にしながら、DJ・ライターとしても駆け出しで活動し、バンド「G. RINA & MIDNIGHT SUN」ではダンス&コーラスも担当するなど、各所で擬態を続けている。

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