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『エール』“愉快な太鼓持ちキャラ”の望月歩 『ソロモンの偽証』から『3年A組』を経て注目株に

リアルサウンド

 放送中の『エール』(NHK総合)において、朝ドラ初出演を果たした望月歩。着実にキャリアを積み上げつつある有望株の彼だが、本作がさらなる飛躍のきっかけとなりそうである。

 望月といえば、まだ19歳の若手俳優。彼が『エール』で演じているのは、窪田正孝演じる主人公・裕一が働く、川俣銀行の若手行員・松坂寛太で、この銀行のメンバーの中では最年少だ。川俣銀行の頭取である権藤茂兵衛(風間杜夫)や、やがて権藤家の跡を継ぎ、頭取になるであろう裕一にこびを売ったりもする人物だが、かといって憎らしいキャラクターというものではない。コテコテの方言やオーバー気味なリアクションで、いまの日本の朝を盛り上げるのに、一役買っているように思えるのだ。

【写真】『3年A組』の教室にいた望月歩

 そんな彼を囲むのは、膨大な数の作品に出演してきた先輩俳優たち。彼らは最若手の望月とは違い、朝ドラ俳優の先輩でもある。支店長役の相島一之は『春よ、来い』(1994年~1995年)、『純情きらり』(2006年)、『花子とアン』(2014年)に出演し、三谷幸喜作品常連の大ベテランだ。先輩行員役の松尾諭は『てっぱん』(2010年~2011年)、『ひよっこ』(2017年)に出演してきたほか、『わろてんか』(2017年~2018年)での広瀬アリスとのコンビ感も痛快であった、アコーディオンを奏でる漫才師役も記憶に新しい。先の相島もそうだが、彼を“バイプレーヤー”として認識している方も多いことだろう。事務員役の堀内敬子は『ゲゲゲの女房』(2010年)、『マッサン』(2014年~2015年)に出演してきた。劇団四季出身者とあって、伸びやかな声は聞き心地が良く、今作での快活なキャラクターはどうにも癖になる。

 この並びの中で存在感を示す望月の姿は、“奮闘”と言えるものだ。比較的キャリアの浅い望月が、彼らについていくのは容易なことではないはずである。この“チーム”が持つグルーブ感は、そう簡単に得られるものではないだろう。しかし、“愉快な太鼓持ち”である松坂寛太というキャラクターを全身で表現し、チームに溶け込むさまからは、望月の柔軟性の高さがうかがえる。頼りない裕一のことだけでなく、つい彼のことも応援したくなる姿が実に愛らしい。

 とはいえ望月も若手ながら、冒頭で触れたように着実にキャリアを積み上げつつある。『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』(2015年)で俳優デビューを果たし、『真田十勇士』(2016年)といったスペクタクル大作のキャストに名を連ねる一方で、2019年に公開された映画『五億円のじんせい』と『向こうの家』では主人公を演じている。ここから読み取れるのは、メジャー作品から良質なインディペンデント作品にまでうまく適応できる素養が彼にあるのはもちろんのこと、先輩たちの中で揉まれ、自身の主演作では作品を背負うことができる存在なのかどうかを知ることができるということだ。そこで得られる“手応え”は、いち表現者として非常に大切なものだろう。人気ドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(2019年/日本テレビ系)では望月の演じる人物がフォーカスされる回もあり、彼の葛藤している姿が強く印象に残っている方も多いのではないか。こうして簡単に振り返ってみただけでも、やはり彼が有望株であることは間違いない。

 『エール』においての望月の出番や見せ場というものは、決して多いわけではない。しかし、朝ドラ出演が俳優にとっていかに“大きなこと”であるのかは、よく耳にする話である。歴史ある朝ドラで、先輩たちの背中を見て育つーーこれが望月歩にとっての、一つのターニングポイントともなりそうだ。

(折田侑駿)

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